解1-2-4:高次元空間の紐付け
早速、俺は自分が思い浮かべた推論をティナさんにぶつけてみる。
「内部と外部は同じ空間にはない――つまり分離されたような形になっているけど紐付けのようなものはあって、それに関連付けられた全てがひとつの『ラプラスター』という存在になっているのですね?」
「細かい部分は違いますが、イメージとしてはヤスタケの認識で問題ないと思われます。三次元世界の皆さんに高次元世界の詳細を説明をしても、理解は難しいでしょうから」
「ヤス、どういう話だ?」
キョトンとしているカナ兄に対して、俺は自分の推論の説明を続ける。
「例えば、紙の上に描かれている世界地図を考えてみて。その二次元世界で暮らしているのが俺たちだとする。でも実はその紙の裏にも別の世界地図が描かれていて、そちらにも独立した世界が存在するってこと。それならそれぞれの世界は別々だけど、三次元世界から見ればひとつの世界とも捉えることが出来るでしょ?」
「……あ、そういうことか! もしその紙が濡れたり燃えたりしたら両方の世界が同時にダメになるように、そのふたつの世界は運命を共有しているとも言えるってことだな」
「うん、そんな感じ。本来、そのふたつの世界は二次元では行き来も認識も出来ないんだけど、三次元世界に置かれればそれが可能になる。現時点での俺たちの場合は『三次元』と『それ以上の高次元』ということになるけど、理屈としてはそういう状況にいるっているってわけだね」
「なるほど……。確かに二次元世界の人間に『世界の裏側には別の世界が存在している』って説明しても、理解は出来ないだろうな」
「俺もそう思う。でも二次元世界の人たちにしてみればそうした概念が根本的にないわけだから、それも無理はないよ」
その言葉を聞くと、カナ兄も大きく頷いていた。どうやら一連の俺の説明で、少しは現状の理解を深めてくれたらしい。
もちろん、俺自身も正確に物事を捉えているわけではないんだけど。
ただ、これでティナさんやラプラスターが俺たちよりも高次元世界の存在であることは、ほぼ確定したと考えていいだろう。
つまり今後、俺たちが遭遇するであろう出来事に三次元世界での常識はあまり意味を成さないということになる。俺たちは現在進行形でとんでもない事態に遭っているのだと、あらためて強く感じる。
「――で、ティナ。オレの起動キーは読み込みが出来たのか?」
「はい、正常に処理が行われました。なお、
「誰が
「この場にいる誰でも可能ですが、カナウは
「つまり候補となり得るのは、ヤス、チャイ、ショーの3人ってことになるわけか」
カナ兄とティナさんはほぼ同じタイミングでこちらに顔を向けた。
するとその直後、チャイとショーマはかすかに息を呑み、瞳には怯えの色が浮かぶ。
その原因はおそらく急に水を向けられた戸惑いと背負う役割の深刻さ――。
なにより、もし
もちろん、そんな危険なことをふたりにさせるわけにはいかないから、ここは俺が
だからこそ、そうさせないためにも俺は一計を案じることにする。
(つづく……)
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