第3話 魔術での初めての助け、そして小さな誤解

銭湯でのひとときから数日後、小袖君は村の中で少しずつ自分の居場所を見つけつつあった。彼の心にも、この村の日々が新しい色を加えていく。そんなある朝、小袖君のもとに床屋の主人から一つの依頼が舞い込んだ。


「実は、村の外れの畑で水不足に悩んでいるんだ。君の魔術で何とかならないかな?」


初めての真剣な依頼に、小袖君は緊張しながらも承諾。村のために役立つチャンスかもしれないと、畑へと向かった。目的地に着くと、彼は集中し、かつて戦いのためだけに使っていた黒魔術を、今度は人々を助けるために使うことにした。


小袖君は両手を地面に向け、深く集中する。しばらくすると、空から小さな雲が集まり始め、やがて恵みの雨が畑に降り始めた。水不足に悩む作物たちは、その雨を心から喜ぶかのように見えた。


しかし、その光景を見た一部の村人は、小袖君の魔術を不安と恐れの目で見ていた。彼らにとって、突然の雨は自然の理に反する恐ろしい魔術の力の現れに他ならなかったのだ。


恋歌はこの小さな誤解を解決しようと、小袖君とともに村人たちを訪ね歩くことにした。一緒に畑を回り、雨が作物にどれだけ役立っているかを説明し、小袖君の真意を伝えた。


「小袖君はただ、みんなを助けたいだけなんです。彼の魔術は私たちのためにあるんですよ。」


恋歌の言葉と、畑が蘇る様子を目の当たりにし、村人たちの心は徐々に変わっていった。初めて見る魔術に対する恐れは、感謝と信頼へと変わっていく。


夕方、畑の水やりが終わりに近づくと、小袖君は恋歌と一緒に、今日一日を振り返った。「恋歌、今日は本当にありがとう。君がいなければ、きっとうまくいかなかったよ。」


恋歌はにっこり笑って、「小袖君が村のみんなのために頑張ってるんだもの。私も手伝わなきゃでしょ?」


その夜、小袖君は再び自分の部屋の窓から外を見た。今日一日の出来事が、彼にとっても、村にとっても大きな一歩だったことを感じながら、彼は静かに微笑んだ。自分の力が、こうして人々の役に立つことができるのなら、それ以上の喜びはない。

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