第4話 祭りの準備、そして新たな絆

桃源郷の夏は、村全体が年に一度の大祭りに向けてわくわくしている季節だった。収穫を祝い、神々に感謝を捧げるこの祭りは、村人たちにとって最も大切な行事の一つ。そして今年、小袖君もその準備に参加することになった。


「小袖君、祭りの準備、手伝ってくれる?」恋歌が彼に頼み込む。彼女の目は期待で輝いていた。


「もちろんだよ。何をすればいい?」


まずは、祭りで使う提灯と飾りつけの準備から始めることになった。小袖君と恋歌、そして他の村人たちは、手分けして作業を進めた。小袖君は魔術を使って提灯を空中に浮かせ、高い場所にも簡単に飾りつけをする。最初はその魔術に驚いた村人たちも、彼の力がいかに便利かを知り、次第に彼の技を頼りにするようになった。


作業を通じて、小袖君と村人たちの間には新たな絆が生まれつつあった。恋歌はそんな彼を誇らしげに見つめ、彼もまた、この村の一員になれた喜びを深く感じていた。


祭りの準備が一段落したある夜、床屋の主人が小袖君を呼び止めた。「君、この村で何か披露できるものはないかな?」


小袖君は少し考えた後、ある提案をする。「魔術を使った小さなショーはどうですか?ただし、誰もが楽しめる、驚きと笑いがあるものにします。」


提案は村人たちに大好評で、祭りの夜、小袖君の魔術ショーが行われることになった。


祭りの日、夜空に提灯が灯り、村は賑やかな笑い声と音楽で満たされた。小袖君の番が来ると、彼は緊張しながらも前に出た。そして、彼の手から生まれる色とりどりの光の魔術が、夜空を美しく彩った。花火のような魔術の光に、子どもたちも大人たちも目を輝かせて喜んだ。


ショーが終わると、村人たちは熱烈な拍手で小袖君を称えた。彼が恋歌の方を見ると、彼女は嬉しそうに微笑み、彼に向かって手を振っていた。


祭りが終わり、小袖君はひとり、満天の星空を見上げた。「これが僕の新しい家だ」と心から感じた瞬間だった。彼はこの村での生活を本当に楽しんでおり、村人たちとの絆は、これからもずっと大切にしていくものだと確信していた。

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