第2話 双子の少女?
ちゅんちゅん、ちゅんちゅん――
はあ、朝日が眩しいぜ。うぅ、さみい……
時刻は午前8時。目覚ましに頼ることなく俺は10時間の睡眠から目を覚ますと、まず日課の神棚への手合わせへと赴く。
「はあ、さみいな。なんで暖房切ってんだ? ってあれ? あれ? なんでだ?」
昨日までは確かにあったはずのガスファンヒーターがない。何故に?
ファンヒーターがモンスター化して逃げ出した? いや、そんな話聞いたことがない。
「ムラマサ、おはよ、ねえ、なんかすんごい寒いんだけど……」
「ムラマサおはよ~! ねえヒーターは? ムラマサもしかしてお金に困ってヒーター売っちゃったの~?」
「んなわけあるか! 俺も今気づいたんだよ! なんだ、お前らも知らねえのか? あ~、それにしてもさみい」
寒さに震えながらふとテーブルの上を見ると、1枚の紙が置かれていた。
恐る恐るそのA4サイズの用紙を手に取る。
そこに書いてあった言葉……
――光熱費節約の為ヒーターは回収させていただきました。私もやりたくてやったんではありません。上司の命令で仕方なく、なのです。恨むなら私の上司を恨んでください。
「く、く、く、くそがああ!! マジか!? マジでこの仕打ちか!? もっと他に削減できることがあんだろがあ! ひでえ、ひどすぎる。こんなのあんまりだあ」
「可哀相なムラマサ。いいわ、私が温めてあげる」
「あ~! おねえズルい!! 僕もムラマサあっためる~!」
「だ~か~ら~! おまえらは離れろっての! お前らみたいなガキンチョに温められてもうれしくねえっつーの!」
「もお~、ムラマサったら照れちゃって! 本当はうれしいくせに!」
「だよね~! こんな美少女と美少年にむぎゅっってされてるんだよ~。うれしくないわけないよね~!」
「はあ、分かったからとりあえず離れろ」
こいつらは俺の同居人竜が崎
双子の姉弟だ。水色に桃色のメッシュを入れた髪の毛のほうが弟の椚で、桃色に水色のメッシュを入れた髪の毛のほうが姉の楓。ふたりともちんちくりんで多分身長は140センチもないくらいだろうか。
楓はツインテール、椚はセミロングに姫カットと、どっちを見ても女にしか見えないが、椚は男だ。これは間違いない。何故なら椚は俺が風呂へ入っているとよく乱入してくる。その時にちゃんとついてるのを確認したからだ。女になくて男にあるアレがついているのを。
「ねえムラマサ~、そんでさ~、昨日言ってたことだけど本当にやるの? ヤバくない? 召喚する魔王と勇者って例のアレでしょ? ムラマサが前に行ってたっていう……」
「ああ、そうだ。俺が5年前まで行ってたあの世界の支配者共をこっちに連れてくる。もちろん安全策も講じるつもりだ。とりあえず一旦あっちに行って話つけてくるからよお、しばらく留守にするから、って言っても2日くらいで帰ってくるつもりだけどな」
「ふ~ん、ムラマサがそう言うんならうちらは反対しないけどさあ。その間うちらのご飯は? 飢え死にしちゃうんですけど」
「あ!? 2日メシ食わねえくらいで死ぬか! あ~、まあ澪にお前らの世話するように頼んどくからよお。あっ! そうだ、忘れてたわ。お前らにもしてもらわなきゃいけねえことがあったんだった」
俺があちらへ行っている間にこのふたりにやってもらいたいこと。こいつらにしか頼めない重要な任務があるのだ。
「え? なになに? うちらにできることならなんでもするわよ。一緒にお風呂入ってほしいとか? 椚ちゃんはいいわよね~、いっつもムラマサとアワアワ体操してるんでしょ?」
「へへ~、そうだよ~ん、男の娘の特権だも~ん! アワアワぬるぬるだよ~」
「おい! 椚! お前は適当なこと抜かしてんじゃねえ! 俺が変態みたいに聞こえるだろうがあ! あと楓! なんで俺がお前に一緒に風呂入ってって頼むんだよ!? そうじゃなくてお前らに頼みたいのはなあ! ダンジョンだ!」
「え? ダンジョン? またダンジョン作るの? そんなのムラマサがいなかったら無理じゃん。うちらだけじゃダンジョンなんて作れないわよ」
「いや、そうじゃなくてだな、お前らにはダンジョンに潜ってきてほしいんだよ。まだ未踏破のダンジョンあるだろ? あれを華々しくクリアして、次に俺が作るダンジョンの客寄せパンダになってほしいんだよ」
「ダンジョンか~! めっちゃ久々じゃない? ねえ、おねえ~」
「だね! なるほどね、いいよ! そんくらいなら。んでどのダンジョンに潜るの?」
現状未踏破のダンジョンは5つある。正直言ってどのダンジョンも出現30年経って未だ未踏破なだけあって、難易度はかなり高い。5つともいまだ最深部までたどり着いた者がいない程度には。
現時点で北海道、群馬、岐阜、東京、奈良の5か所があるのだが――
「んっとだなあ、そうだなあ、こっから一番近いのは、岐阜にある
「オッケー! いつ行くの? お弁当持ってったほうがいい? お菓子はいくらまで?」
「おまえ…… 遠足気分かよ…… とりあえずだな、今日の午後澪がうちに来るからよお、そん時に詳しい話は聞け。分かったな?」
「りょうか~い! はあ、なんかワクワクしてきた! ねえ、椚ちゃん! 駄菓子屋にお菓子買いにいこっ! ムラマサ! 1000円ちょうだい!」
「お、おまえら、マジで遠足気分なんだな……」
財布から1000円を抜き出し楓に渡す。財布の中をふと見ると最後の1枚の紙幣だった。小銭入れを見れば10円玉がいっぱい。金がない。俺には金がないのだ。その上職を失ったらどうなってしまうのか…… 今職を失うわけにはいかねえ! なんとしてもしがみついてやる!
◇
「ごめんくださ~い」
「来たな、乳女め!」
「ムラマサを乳で惑わす悪魔め~!」
「お前ら止めろや!」
午後1時俺の上司である
何故か澪とこの双子は仲が悪い、というか一方的に双子が澪へ敵対心を燃やしている。
特に楓の澪の乳への敵対心がすごい。まるで澪の乳に父を殺されたかのように、なにかにつけて澪の乳を揉みしだいている。
「はあはあ、あの、楓ちゃん、もう、止めてもらってもいいかな。澪おねえさん、死んじゃう……」
「誰がおねえさんだば~か! お前なんて只の行き遅れのババアなんだよ! そんな乳宝の持ち腐れなんだよ! 捨てちゃえ! てか私によこせ、ば~か!」
何故か目に涙を浮かべて毒を吐く楓。ダメージを受けているのは澪のはずなのに、明らかに楓のほうがダメージを喰らっている。不思議な現象もあったもんだ。
「おい! 茶番はそれくらいにしろおまえら!」
「え、いや、私は一方的に揉みしだかれていた側なんですが……」
「ふんっ! 今日はこの辺にしといてやる! お前もやるじゃねえかよ!」
何故か校庭で殴り合ったあと大の字に寝転んで、お互いを認め合うライバルのような体でいる楓。
とりあえずこのバカは放っておいて話を始めることにした。
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