第24話 城塞都市

 5勇者のグループと随行部隊、輜重しちょう部隊は10日程をかけて城塞都市に到着した。

 森を直線的に伐採して作られた街道を抜けると拓けた平地があり、森を背にして城塞都市が建てられている。

 その城壁は、王都のものよりも遥かに高く頑丈に作られており監視塔が等間隔に設置してある。

 魔王国に対する防衛の要のため、戦闘部隊を中心として後方支援部隊や工作部隊そして兵隊の家族などが居住する戦闘に特化した都市であり、構造になっている。

 あくまで、常駐する軍の効率良い動きを考慮して作られた街の造りで、広く直線的に整備された道路や無駄なく配置された倉庫群がそれを物語る。

「命令通りに来たのはいいが、王都に比べて娯楽が無さすぎだろう」

 すでに、城塞都市の質実剛健さに飽きてきた5勇者のリーダーである赤の勇者グレンが愚痴る。

「我々は、遊びに来たんではないんだぞグレン」

 槍の型で鍛練しつつ、青の勇者セルリアンが諌める。

「ミーはグレンに同意する。食事のバリエーションが少なすぎ、特に甘味がないのが我慢出来ない」

 うら若い少女である緑の勇者モスは、若いだけに食欲も旺盛だが偏食も酷い。

「兵糧なんぞ食えればよいではないか!そんなことより俺は辺境伯と力比べがしたい。さすがは歴戦の猛者だ、あのガタイは本物だ」

 脳筋な黄の勇者オウドは、到着時に挨拶を交わした城塞都市の最高司令官である辺境伯と闘ってみたくてウズウズしている。

おとこ臭い!武骨なのばっかりでイケメン濃度が薄すぎるわ。メン欠になりそう」

 相も変わらず、ブレない下ネタ系女子である白の勇者ソープが文句を言うと、

「メン欠ってなんだよ?…ハハ~ン、ザーメン欠乏症の事か!好きそうだもんな濃いヤツ」

 天敵のモスがまぜっ返した。

「モス!あんたホントに処女なの?言うことがどぎついわよ」

「耳年増なの…ちなみにソープは単なる年増ね」

「いつか浄化してやる!」

 相変わらずの仲の悪さと、下ネタ全開の罵り合いに男性メンバーが辟易としている。

 

 暇をもて余していた勇者グループに、衛兵から魔封隊のメンバーが会いに来ていると伝えられた。

「魔封隊?」

「疫病対策の部隊だな。おそらく聖魔法使いのソープに用があるんだろう」

 首を傾げたグレンにセルリアンが説明する。

「え~!あたし、面倒臭いの嫌なんですけど」

「ミーの聖女に対するイメージを誰でもいいから返しておくれ。今やダメ聖女のイメージしか勝たん」

「まあ、いいじゃないか…どうせ暇なんだし、何の用か確認しに行こうや。魔物討伐の要請かも知れんぞ」

「オウドは外に出て暴れたいだけでしょ」

 文句たらたらながら呼びに来た衛兵の後に付いて、魔封隊が待機しているという検問所に勇者グループは向かった。

 検問所には、揃いの外套を身に付けた10人程の魔術師らしき者達が待っていた。

「俺が勇者グループのリーダー、グレンだ。疫病対策が専門の魔封隊が俺達に何の用だ?」

 ちゃっかり、セルリアンの知識を自分の物の様にグレンが問うと、

「私共は魔封隊第3部隊の者です。この地に白の勇者ソープ様がお出でになってると聞き、聖魔法における観点から助言を給りたく参上致しました」

 魔封隊の隊長らしき男が応える。

「ワタクシめが白の勇者ソープです。そなたらの真摯な願い、慈悲深き聖女の名において叶えて差しあげましょう…さあ中へどうぞ」

「こいつ誰?外ヅラ良いのは知ってたけど、ヅラ変わり過ぎじゃね」

 緑の勇者モスのツッコミを華麗にスルーしながら、ソープが魔封隊のメンバーを城壁の中へと誘って行く。

 魔封隊のメンバーの1人が小声で、

「さすがはおかしら。ベルゲン様からの指示、一字一句間違いない再現でしたね」

「牢屋に入れられる様な失態犯したんだぞ。もう失敗は許されねえ…それと何度言ったらわかるんだ!俺はおかしらじゃねえ隊長様だ」

「へいっ、わかりやし…ゴフッ」

「おい、紛らわしいマネはやめろ。罹患していると誤解されるじゃねえか!」

「すいやせん。朝食ったもんが悪かったんでしょうかね?」

「食い意地が張り過ぎなん…ギャボッ」

 おかしらと呼ばれていた男が自分の手のひらを見ると、どす黒い血反吐がベッタリと付いていた。

 そしてその症状を、この男達は嫌と言うほどよく知っている。


 魔封隊のリーダーであるベルゲンは、第3部隊の連中が城壁の中に姿を消すのを確認すると、城壁を取り囲む様に配置された第1部隊に結界を展開するよう指示を出す。

 続いて、第2部隊に地下にある避難路のあぶり出しと、城壁にある出入口の完全閉鎖を命令した。

「第3部隊の連中を宿主とした病原菌は、遅効性と致死性を高めてあるからゆっくりじっくり確実に死に至る。勇者様や辺境伯様も、せいぜい恨悔しつつ死んで下さい。それこそが強力なアンデッドとなる糧となりますので…」

 ベルゲンは、自らの研究成果を披露するかの様に呟くと城壁を仰ぎ見る。


 そのベルゲンを、少し離れた場所から見つめている瞳があった。

 辺境伯の1人娘であり、辺境騎士団長のエルヴィーンである。

 エルヴィーンは勇者グループが城塞都市に到着する前から、父親の命令により木々の生い茂った小高い丘の中腹にある砦に潜んでいた。

 砦といっても元は狩猟小屋であった建物を、工作部隊が訓練兼暇潰しに増強を繰り返した結果、監視塔を備えた石造りの建造物へとレベルアップさせてしまったものである。

 カモフラージュにつたを絡ませたりと、やたら凝った造りのため下の平地からでは絶対に見つけられない要所となった。

「いったい何が起きている?」

 遠視の付与が施されたレンズから眼を離すと、エルヴィーンは隣に並ぶ従者に問う。

「城塞都市が、完全に結界にて覆われましたな。魔王軍の攻撃に備えるためのものですかな?」

「じい様、質問に質問で返すな!だいたい、そんな便利な結界があればとっくに実戦配備されてるだろう」

 騎士団長を拝命しているとはいえ、赤ん坊の頃から相手をしてもらっている間柄からか、子供の様な反応になってしまう。

「んん?あの男の服装は…防護服か。だとすると魔封隊…まさか城塞都市内で疫病が発生したというのか!」

 レンズを覗き直したエルヴィーンが叫んだ。

「じい様、大変だ!すぐに救出に向かわなくてはならない。馬の仕度を急ごう」

「エル様…それはなりませんぞ。父上の命をお忘れか?」

「いや、しかし…それはそれ、これはこれじゃないのか」

「そんな適当な命令がありますか!いかなる状況であろうとも冷静に情報を精査し、敵と味方をしっかりと見定めた上で迅速かつ的確に動けと命令されたのでしょう」

 軽率に動くなと辺境伯の娘であるエルヴィーンに言いながら、騎士団長の従者として付いて行ってくれと頼んできた弟子の姿を思い出す。


 エルヴィーンにじい様と呼ばれるこの老人はフロイデといい、黎明期のストラ王国において鬼神とまで言われた将軍であった。

 エルヴィーンの父、辺境伯の師匠でもあり2人で王国軍を率いて他国の侵略から王国を守った英雄でもあった。

 兜を被ると蒸れるという理由から頭頂部はすべて剃髪してしまい、代わりに口と顎に豪快な髭を蓄えている。

 師匠を敬うエルヴィーンの父は、この丸坊主と髭の部分も真似してしまったので戦場では将軍が2人いると敵軍によく誤解されていた。

 イタズラ好きな2人が、それすらも戦術に組み入れて敵を翻弄しまくった自慢話を幼かったエルヴィーンは、お酒の入った父の膝でよく聞かされた。

 だが黎明期を過ぎて、王国の地盤が固まると民に人気のある将軍は王にとって目の上のたんこぶとなった。

 故に王は将軍を辺境伯として、魔王国との最前線を任せるという名目で城塞都市の建設を指示し、今に至っている。

 それならばなぜフロイデが辺境伯でないのか、その理由はエルヴィーンが生まれた事にある。

 妻をめとらなかったフロイデは、弟子に娘が生まれるとその教育係を買って出て、辺境伯の地位をあっさりとその弟子に譲位(丸投げ)したのであった。

 それからフロイデは、エルヴィーンの教育係に専念して騎士団長を務めるまでに育て上げたのである。


 戦場を一緒に駆け抜けた親友ともから1人娘の命を預けられた。

 辺境伯として律儀に責務を果たしている弟子からフロイデは先日呼び出しを受けると、王都から勇者一行がこの城塞都市に来る旨を知らされた。

 以前の暴走した勇者は城塞都市に立ち寄りもせず、行方不明になってしまったので参考にならないが、異例続きであることに違いはなかった。

「師匠、どうも嫌な予感がします」

 辺境伯である弟子から、戦場にいた頃によく聞かされた不吉なセリフを久々に言われた。

「お主の勘は昔から鋭いからのう。魔王のオーラも消滅しておるし、何かよからぬ事が起こるのかもしれんな」

「ええ、そしてこれが今生の別れとなるかもしれません」

「そこまで逼迫ひっぱくしておるのか?」

「おそらく…王都が絡んでいるかと」

「ぬぬ、魔王が何も仕掛けて来んから儂も平和ボケしておったのかもしれんな」

「師匠は隠居された身なので、それでよろしいかと…」

「おま…おまえは儂をボケじじい扱いする気か!」

「ボケたふりして、辺境伯の地位を譲位された恨みは忘れませんよ」

「あぐっ、それを言われると儂の立つ瀬が失くなるではないか」

「そこで…隠居する気など毛頭ない師匠にお願いがあります」

「なんじゃ、あらたまって…」

「エルヴィーンを逃がして頂きたい。弟子ではなく、娘を思う父親として親友ともに頼みたいのです」

「……それはおまえが目の前で死のうと、手を出してはならんと言う事か?」

「そうです」

「それはキッツいの~、エルヴィーンに恨まれる役ではないか」

「だからこそ、娘のじい様である貴方にお願いしたい」

「その役、将軍時代の様に交換出来ないか?」

「今さら、辺境伯の役職を返せと言うのですか。都合が良すぎますよ…師匠」

「師匠より弟子が先に死ぬのはいかんだろう」

「師匠にはまだエルヴィーンという弟子がいます。大事な弟子を死なせないで下さい…どんな手を使ってもですよ」

「嫌じゃのう。エルヴィーンに恨まれるのは死ぬより辛いぞ」

 丸坊主の頭をペチペチと叩きつつ兄弟の様に見える師匠と弟子は、愚痴を言い合いながら別れの酒を酌み交わした。


 弟子とのやり取りをフロイデが回想していると、

「じい様、やはり城塞都市の様子を確認しに行くべきです」

 エルヴィーンが現状待機に異を唱えて来た。

「ならん」

「なぜです?今なら間に合うかも知れないじゃないですか」

「疫病が発生して、魔封隊が結界を張ったならもう誰も中には入れん」

「それでも!」

「魔封隊が敵か味方か、現状では判断できん」

「話をしてみれば、わかることがあるかも知れません」

「もし魔封隊が敵だったらどうする?エル様と儂の2人では、殺して下さいと言いに行くようなものだぞ」

「じい様は何かご存知なのですか?おかしいと思ったのです…私とじい様だけで砦に向かうと聞いたときから」

 エルヴィーンが、何かを察したのか必死の形相で食い下がる。

「辺境伯からエル様を逃がすよう頼まれた」

「それじゃあ、お父様やお母様はどうなるのです?こんな近くにいて見捨てるのですか」

「すでに手遅れだ」

「私は絶対に嫌です!」

 エルヴィーンが取り乱して大声を上げる。

 フロイデは静かに正面に立ち、エルヴィーンの顔を覗き込むと頭と首に手刀を同時に叩き込んで昏倒させた。

 崩れ落ちるエルヴィーンの身体を受け止めて、床に寝かせると遠視のレンズで周辺の確認をする。

 城塞都市とは距離があるため、幸いにも大声に気付いて砦に向かう動きはなかった。

「エルヴィーンに手を上げるのは、思ってた以上に老体に堪えるわい。恨むぞ辺境伯」

 フロイデは独り言を呟くと、レンズを取り出し周囲の監視を続行し始めた。


「う…う~ん?」

 しばらくして気絶していたエルヴィーンが目を覚ますと、いつになく真剣な顔をしたフロイデが遠視のレンズを覗いている。

「じい様、私は寝てしまっていたのでしょうか?」

「ああ、半日ほどな。それよりアレを見ろ」

 エルヴィーンはフロイデの隣に立つと、レンズを取り出して城塞都市の方向を覗く。

 そこには、騎馬兵が主体となった軍隊の姿が見てとれた。

 装飾は抑えられているが、大きさは普通の馬車を遥かに凌ぐ装甲馬車も数台連なっている。

 それらに掲げられた旗竿に舞う旗を見て、

「ストラ王国旗、なぜパニエルテ王がこんな辺境に!」

と、エルヴィーンが驚きの声を上げた。

「エル様…王国旗だけではなく、第1から第3王子まで王位継承者も勢揃いですぞ」

「それとあの騎馬兵は王国近衛騎士団!王都をスッカラカンにして何をしに来たのかしら?」

「パニエルテ王が、この地で自分の威を誇示するチャンスを掴んだのであろうな。でなければ、あの臆病者が魔王国の近くに来るハズがないわ」

「じい様…城壁から何か濃い靄の様なものが溢れ出ています。もしかすると、魔王国側に充満してる高濃度の魔素ではありませんか?」

 城塞都市の監視塔から嫌と言うほど見てきた気体が、よりによって城塞都市の内側から溢れ出し始めたのである。

 それは、人間族にとって死を意味する光景だ。

 

 城壁を取り囲んで結界を張っていた魔封隊のメンバーにも、その知識はあるようで次第に腰が退けて来ている。

 結界に紫色の気体が触れ始めると、結界を張るのを止めて後方に控えている軍隊の元へと走って行く。

「結界は、高濃度の魔素を制御するためのものではなかったのですね」

 冷静さを取り戻したエルヴィーンが言うと、

「魔封隊の結界は元々、病原体とそれに侵された疫病患者を隔離するためのものじゃ。奴ら、城塞都市に疫病を持ち込んで意図的に殺戮したのか」

 真っ青な顔をしたフロイデが呟く。

「でも、あの紫色の気体は病原体じゃないですよね」

「ああ、そうじゃ。あれは魔王国の方から流れて来て、アゴラカート大峡谷に墜ちている高濃度の魔素と同じものじゃな」

「それが、なぜ城塞都市の内部にあるのです?」

「大峡谷には、昔から幾つもの横穴が存在すると言われておるのだよ。魔王国側にも人間族側にもな」

「魔王国側に循環しているとは聞いていましたけど、こちら側にも来ているのですか?」

「地層の裂け目を通っておるらしいぞ。魔素が溜まりやすい地形だと、ダンジョンが出来たりしとるな」

「それじゃあ、地中から引っ張って城塞都市の内部へと繋げたのですか?」

「それくらいなら、土魔法使いや土木工学師でなんとかなるじゃろな」

「じい様…今の話ですと城塞都市内の人達を疫病で殺し、その後に高濃度の魔素にさらすという工程で間違いないですか?」

「そうなるの…何か思いあたる事があるのか」

「はい、と言っても学院で学んでいるときに死霊魔術マニアだった知り合いにちょっと聞いただけなんですけど」

「死霊魔術…禁忌の魔術じゃな」

「ええ…なので少し眉唾な話なんですが、人は苦しみや恨みが強ければ強いほどアンデッドになりやすいと…」

「ほう、それで…」

「人がアンデッドになったとしても、それはスケルトンやゾンビといった弱いモンスターにしかなりません。ですがアンデッドではあるので、高濃度の魔素にさらしても死なないのではと研究者の間では囁かれているそうです…眉唾ですよ」

「その眉唾話を国が主導して行ったと言うのか…もしそうなら、王国は滅ぶべき時期を迎えたのかも知れんな」

 かつて、親友と共に守り抜いた王国の迷走を悟るとフロイデは寂しげに囁いた。


 轟音と共に城塞都市の正門が弾け飛ぶ。

 中から、3メートルはあろうかという真っ黒な巨躯が躍り出る。

 禍々しい全身鎧を身に纏い、巨躯に見合った大剣を肩に担いでいる。

 肩から足元までの漆黒のマントを羽織り、すべてが黒に染まる中で鎧の目の部分だけが赤く輝く。

 続いて4体の漆黒のモンスターが続き、それぞれの瞳の部分が青、緑、黄、白の色で輝いている。

 鎧で覆われた腕には漆黒の大槍、大弓、大盾、錫杖が握られ、全てが禍々しいオーラを発していた。

 それら5体のモンスターが、王国旗を掲げた一際重厚な装甲馬車の前に跪く。

 馬車からパニエルテ王が出て来ると、アゴラカート大峡谷を指差して命を下す。

 5体のモンスターは指差された大峡谷へと向けて疾走すると、巨大な漆黒のマントを翻して死の谷とダイブして行った。

 

「このために、5勇者を城塞都市に派遣して来たのか…」

 パニエルテ王と、漆黒のモンスターとのやり取りを見ていたフロイデが呟く。

「勇者グループ以外の者達はどうなったのでしょう?」

「おそらく…奴らの強化のために、生け贄として喰われたんじゃろう」

「そんな…」

「おまえの父と母は、此度の企みを察しておったのじゃろうな。利用されるくらいなら自害して果てると言っておった」

「お父様…お母様…無念でありましょう。このかたきは必ずや私が討ちます」

 決意を表したエルヴィーンの瞳には、もう涙は流れていなかった。

「さてと…パニエルテ王が、5勇者をアンデッドにして利用しようとしているようじゃが、儂らはどう動くかの」

「大峡谷へダイブさせたのは、更なる強化のためでしょうか?」

「それもあるじゃろうが、魔王国への侵攻を開始する気かも知れんな」

「ですが、魔王国との国境にはアゴラカート大峡谷・死の谷があるのですよ」

「それを越えるためのアンデッドモンスターであろう」

「あっ!」

 エルヴィーンが驚きの声を上げる。

「それと魔王城の遥か地下深くには、大峡谷を造った大地竜が眠っているという逸話もあるのう」

「それってお伽噺とぎばなしの類いではないのですか?」

「エル様…お伽噺には、はるか昔の出来事を語り継いでるものもあるのじゃよ」

「なるほど」

「しかし、パニエルテ王が絡んでいるとしたら、王都に知らせたとしても味方なんぞおらんだろう。どうしたもんかの?」

「じい様、アンデッドに対抗出来るのは聖魔法使いだけでしたよね」

「ああ…その最たる存在が聖女様だが、そう呼ばれていた白の勇者もアンデッドモンスターになってしまったぞ」

「馴染みの商人に聞いたんですけど、東の地にあるインス村で祈りの聖少女が顕現したとの事でした」

 フロイデは自慢の顎髭を撫でながら思案する。

「小さな村なら、王都の眼も行き届いていないかも知れんな。会いに行くとするかその聖少女様に!」

「はい!」

 エルヴィーンとフロイデは山腹の砦に繋ぎ止めておいた馬に乗ると、城塞都市とは逆側の山道を下って東のインス村へと向かった。








 


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