第4話未踏の領域

答えに詰まって加茂川手前の横断歩道を歩きながらベージュのダウンベストの肩を抱いた。

 以前なら・・・、頭を擡げて来たのに。

右肩が強張っている・・・。

「暑いのに・・・。」左横の僕に振り向き咽かえる初夏の空気が二人の仲を裂いているかの様に装う明花・・・。

「加茂川まで下りようか?」

何とか付き合い初めの二人に戻りたかった。



「あのねタクトくん。」


明花のキッパリ感が漂う表情に何かあるなと、思っていたが・・・。


「昨日、高校の部活で1年後輩の生牡蠣くんに出逢ったの。雨降りのバス停でね・・・。」


 山科行きのバスを待っていた明花にそっと、傘を差し出した優男(やさおとこ)は、元高校で明花の1年後輩になる生牡蠣加津夫(なまがきかつお)だった。

 生牡蠣の肩に明花の頭が着くくらいの身長差が圧巻なのに胸が分厚い。


 聞くところによると元ラガーマン。



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