第79話 再臨
あたくしはジャネット。ジャネット・デイ・シュルツ。魔界に住む由緒正しい吸血貴族、その令嬢よ。……まぁ、そろそろ御父様もいい歳だし、あたくしが領地と爵位を継ぐことになるだろうけど。
ちなみに主さま。ヒデヨシさまにはデイライトウォーカーって種族だと説明したけど、それは正確じゃないわ。
正確に言うならあたくしの種族はノーブル・ヴァンパイア。デイライトウォーカーと言うのは称号に近いわ。
そもそも、ミドルネームであるデイ。これもあたくしがデイライトウォーカーだからこそ名乗れる称号だから、正確なあたくしの名はジャネット・シュルツとなるかしら。
そんなあたくしがなんで主さまの召喚に応じたか。それは一言で言えば、人界へ
そもそもあたくし、順調にいけば既に家督を相続していたはずなのよ。それをあの女に邪魔されてしまった。本当、忌々しきはあの女、アンネローゼ・フォン・ハミルトン。
一時期あたくしは今の人間が言うところの諸部族連合? その地域でダンジョンマスターをしていたの。
なんと言ってもあたくし、貴族の令嬢。さらに言えば世嗣ぎですし、配下をうまく使うことを覚えることも重要。ということで、そのために人界へ派遣されていたのだけど。
ある程度は上手く行ってたのよ? ダンジョンの支配は盤石だったし、運用も上手く行ってた。侵入者なんかも毎日血祭りにあげてたもの。
でも、ある日。忌々しいあの娘が手勢を率いて攻め込んできたの。もちろん、あたくしも抵抗したわ。でも、次第に部下を、最終的には側近まで討ち取られ、あたくしは命からがら魔界へ落ち延びたのよ。
それから先は惨めなものだったわ。本来、家督相続の試験という意味合いの強いダンジョン経営に失敗したことで、当然ながら相続の話は立ち消え。御父様が当主を続けることになって、あたくしは1から学び直し。
失敗する前は家での扱いも優れた世嗣ぎ、という立場だったのに逃げ帰ってからは腫れ物を扱うようによそよそしいこと。唯一の救いは家の評判が落ちなかったことね。
それもこれも、アンネローゼ・フォン・ハミルトン。あの娘が
……あぁ、
ともかく、そういった連中は人界の人間とは隔絶した力を、人智どころか我ら魔なる者よりも優れた智慧や身体能力を持つわ。
実際、あの娘。アンネローゼが現れてから人界は急速に発展したし、直接刃を交えたあれは無類の強さだった。……まぁ、あれの妹を名乗っていたクロエなる娘よりは常識的だったけど。
そんなあたくしが人界に再度降り立つのを望んだのはもちろん復讐。今度こそ、あの憎きアンネローゼへ一泡ふかせてやること、だったのだけど……。
当のアンネローゼが既に死んでたのは想定外だったわ。いくら
まぁ、敵対するつもりなんて端からないから良いんですけど。
……それはともかくとして。最初はまさか、あたくしを喚び出したダンジョンマスターが人間の変異体だなんて驚いたし、絶望したわ。
この高貴な、吸血貴族たるあたくしが変異したとはいえ、強制的に好意を植え付けられた上に、定命の者である人間へ
でも、それがすぐに間違いだと気付けて良かったわ。
なんてったって、主さま。ヒデヨシさまもアンネローゼと同じように
なにせ
それなのに、今回はこちら側であるダンジョンマスターとして現れただけでなく、
いままで辛酸をなめさせられていた者が味方に付き、なおかつ男だからこそ血を、子種を取り込んで後世に伝えられるかもしれない。それだけで拍手喝采ものよ?
もし、本当に子を成すことが出来て、なおかつ
それだけの功績を成せたなら家督相続は元より、領地の加増。もしかしたら爵位だって上げられるかもしれない。
まさしく、我が世の春が来た。というやつね。本当に笑いが止まらないわ。
まぁ、あたくしと主さま。ヒデヨシさまの間で子を成せない可能性は十分あるとは思うけど、その場合は配下の者が成せればなにも問題はない。
さすがに直ぐ様、手勢を魔界から連れてくるのは無理だけど、それならそれで遣り様はある。
元ダンジョンマスターとして支配の力がまだ多少残ってるから、かつてのダンジョンの生き残りたち。
うふふ、本当に楽しみだわ。
かつて、人界の人間どもに『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます