第59話 ホブゴブリンのルード
ダンジョン、ならびに開拓村の今後について頭を悩ませている俺だったが、その間にも時は過ぎていくわけで……。
ホログラム越しに会話が聞こえてくる。どうやらクラン女男爵と誰かが話しているらしい。
「おや、エルザの姐さん。マスターに報告で?」
「ルード殿か。あぁ、そうだ。そういうルード殿も?」
どうやら会話の主はルードらしい。そういえばあいつもこの一月でだいぶん変わったんだったか。
するり、とクラン女男爵の横から現れるルード。その姿は以前とは比べ物にならないほどがっしりとした――。いや、よそう。はっきり言えば別物となっていた。
以前のルードの背丈は子供――この場合小学校高学年の男子――と同程度しかなく、筋肉質もそれ相応だった。もっとも、だからこそ猿飛のような曲芸もやれたし、コマンドウルフに騎乗出来たんだが。
然るに今のルードはというと。まず身長だがとんでもなく伸びている、目算でも2メートルはあるだろう。次に体格だが、筋骨粒々という言葉が相応しいほどがっしりしている。
以前のルードとファラがともに並ぶとおねショタ、なんて言葉が浮かんだが、いまの二人が並ぶと逆。ファラが童顔ぎみということもあって色々と犯罪臭がすごい。
実際のところ、二人は愛妻家のゴブリン。マクス夫婦に並ぶおしどり夫婦と評判だ。本当、ルードとマクス。彼ら二組の夫婦がいるから開拓村でモンスター、ゴブリンが受け入れられていると言って良い。それほどに彼らのおしどり夫婦ぶりの影響力は大きいのだ。
そんなルードからも報告があるらしいが……。
「それでルード、報告とはなんだ? ……あぁ、惚気話は間に合ってるからな?」
「ちょっ、マスター?!」
俺の軽口に焦るルード。後ろではクラン女男爵がぷっ、と吹き出している。
そう、この野郎。最初はセラを娶ることを渋ってた癖に、いざ、そうなるとずいぶんお楽しみだったらしい。と、言うよりもルードが成長――正確には進化――した後の夜の生活でファラが
ちなみに、同じ苦悩――ルードの絶倫ぶり――を分かち合ったことで、何気にファラとセラは急速に仲良くなっていた。同じ釜の飯、訳ではないだろうがそういうこともあるんだろう、たぶん。
なお、ルードが仕込んだ子供はあくまで普通のゴブリンとして産まれている。それと、俺はルード
そう、たちだ。現状、ホブゴブリンに進化したのはルードたちゴブリンライダー隊の3人だったりする。
いまだゴブリンからホブゴブリンに進化する条件は分かっていない。が、いま進化している個体がすべてネームド、と言うこともありもしかしたらそれも関係するかもしれない。まぁ、予想でしかないのだが。
それよりも、だ。ルードたちが進化した、という点で見れば嬉しいのだが、問題も一応ある。それは彼らの体格がたくましくなったことでコマンドウルフに乗れなくなった、という点だ。
まぁ、そちらの方は実際のところ解決策はある。というより、ある意味解決済みだ。
体格によってコマンドウルフに乗れなくなったのなら、乗れる騎乗獣を用意すれば良い。そう、リィナ、ルゥ姉妹に贈った馬型モンスター、トロイホース。それを宛がえば良いだけの話、ということだ。もちろん、そのことはルードたちも了承済みで、相棒だったコマンドウルフも、不承不承ながら納得している。
コマンドウルフたちもルードたちを乗せて走れなくなった、と分かった時。くぅん、と寂しそうに鳴いていたのが印象的だった。あいつらには悪いことをした、と思わなくもないが、こればかりは仕方ない。
それにルードたちを乗せるだけが仕事じゃない。今はルードとともに行動するときは斥候役として周囲の偵察を、平時には通常のゴブリンに騎乗を教える教官役として八面六臂の活躍を見せている。それだけではなく、新しい相棒役のトロイホースには先輩風を吹かせて、トロイホースもまたそんなコマンドウルフに粛々と従っている姿を見た時は、吹きそうになるのを我慢するので大変だったな、うん。
それはともかく、今はルードからの報告が重要、かな。また頭が痛くなるような問題じゃなければ良いんだがなぁ……。
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