第14話 これだから君は

ある日私は夫に聞いてみた。


その後、体調どうなの?ゴールデンウィーク明けじゃなくて、年末の沖縄の後でも検査に行ってみたらどうかな。どんな状態か検査したほうがいいと思うんだけど。


しばらくの沈黙の後、夫から浴びせられた言葉は反応のしようがなかった。


あのさ。今まで言えなかったんだけど、この際はっきり言うよ。君のそういうところが嫌なんだよ。もう行かないって、決めたって言ったよね。それをなんで何度も蒸し返すの?そうやって自分が気づいた時だけ心配しているような発言、やめてくれないかな。もうほっといてほしいんだよね。大体医者にだって行きたくなかったんだ。最初から。君が予約取っちゃったから仕方なくいっただけで。おかげで知らないほうが幸せだったこと知らなきゃいけなくなったし。迷惑なんだそういうの。


そんなにいやだったの。だったらそう言ってくれればよかったのに、と思ったものの、言葉には出せなかった。何か言ったら、今まで築いてきたものが、今までの10年間がガラガラと崩れそうな気がしたからだ。


そしてやっとのことで言った。


あなたが具合が悪いというから、心配しているだけなのに。そこまで言う必要あるのかな。さすがにひどいと思うけど。言っていいことと悪いことあるよね。


これだから君は。今までだって何度となく言ってたよ。君がちゃんと話聞いてたら、前から言われてるんだから少しは直すそぶりがあってもいいよね。それに心配っていうけど、君が何か僕に、本当に心配して何かしてくれたことがあったっけ。今回の胃カメラの予約ぐらいじゃないか。それだったらミチコだってできるよ。


とうとう恐れていたことが始まった。言葉による攻撃とミチコとの比較。君に比べてミチコは...


私はもう限界に来ていた。このまま話を聞いていられない。わっと泣き出してしまいそうな、または怒りに任せて怒鳴り散らしてしまいそうな、どちらかな気がした。


ごめん、買い忘れたものがあるからコンビニに行ってくる。


そういって財布と携帯だけを持つと、コートを着て玄関に向かった。


リビングから夫が、そうやって君は都合が悪くなるとすぐ逃げる。だから僕らは面と向かって話ができたためしがないんだ。こんな時ミチコだったら...。


ミチコだったら何なのか、ということが聞こえないタイミングで玄関から外に出た。


住宅街だというのにどこからかクリスマスソング。そうだ、ここ数年夫とクリスマス過ごしてない。なぜだか理由は覚えていないけど、この間ずっとミチコと過ごしてたんじゃないかな。


そう気づいたとき、私はふっと思った。


死ねばいいのに。


そして次の瞬間、考えたのだった。私は、やっぱり冷たいのだろうか。






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