もういやだ。やめたい。
僕はボスの事務室から出て、廊下を歩いていた。
長い廊下を。
ここの組織、暗殺組織は地下に作られている。
表にバレないためだ。
そして、規模はというとそれはもうめちゃくちゃ広い。
まるでアリの巣がデカくなったような感じだ。
設備はもちろん、技術だって表より数歩先を進んでいる。
そしてこの組織の人員は500人を超えている。
暗殺組織にしては多すぎないか、と思うかもしれないがうちの組織は裏では有名で、沢山の依頼が飛んでくる。
その為か、人員を多く持っている。
そんな多くの人員がいるが危険、難しい依頼はできない。
じゃあどうするか。
そこで僕達幹部の出番だ。
といっても僕は幹部の中で一番弱いし、なんで幹部にされたかもわからんしな。
あの幹部に任命された時の絶望感がまだ拭いきれていない。
僕は「はぁ」と重い溜息を吐いた。
その時、
「あら、そんなに重い溜息を吐くと幸せが逃げていっちゃうわよ?」
廊下を歩いていると、眼の前にまたもや美少女がいた。
背は僕より少し低く
紅いルビーのような綺麗なサイドテールの髪に、緑のエメラルドのような瞳。
彼女はセカンドという。
僕はその彼女を見てもう一度溜息をこぼした。
「な、なによ! 私を見てなんで溜息をこぼすのよ!?」
「あ、すみません! ちょっとその、今日は色々疲れまして…」
「ふ、ふーん。まぁ、あなたなら許してあげるわ」
「あ、ありがとうございます?」
「べ、別にあんたの事が好きっていう意味じゃないから勘違いしないでよね!」
彼女はフンッといい、そっぽを向き綺麗な紅い髪が揺れた。
正直、僕は彼女の言動があまり掴めない。
「それで、セカンドさんはどうしてここに?」
「なによ? 私がここにいちゃいけないの?」
「いえ、そういうことではないのですが…」
「じゃあなによ」
「なんで、僕の部屋の前にいるんですか」
「? なにか、ダメだったかしら」
「いやまぁ、部屋の前に立っていたことは百歩譲ったとして―――――その右手に持っているのはなんですか?」
僕の視線先が彼女の右手に移った。
彼女の右手には、銀色の輝く何かを開けるための形をしているものを握っていた。
彼女は僕の疑問に答えるように手を持ち上げ、握っていたものを僕に見せた。
「これ? これはあんたの鍵よ」
「……なんで持ってるんですか」
僕は自分のポケットに手を突っ込むと、そこには彼女と同じ鍵があった。
つまり落として拾ってくれたではなく、僕の鍵の複製となるが……
「持ってちゃいけないかしら」
「いえそういう意味ではなく……なんで僕の鍵を持って、僕の部屋の前に居るんですか」
「それは勿論、あんたの部屋に入るためよ」
「な、なんで?」
「それは―――――まぁ、なんでもいいじゃない」
「良くないですよ! 僕のプライバシーはどうなるんですか!」
僕がそういうと急に彼女、セカンドの様子が変わった。
「――――なによ? あんたまさか、なにか私に隠し事してるわけじゃないでしょうね?」
その緑の瞳に光というものが無かった。
一言で表すなら、闇。
セカンドの瞳が緑色なはずなのに黒く見えた。
僕は彼女が出している威圧に背筋が凍った。
「か、隠し事ですか? なんのことやら――」
僕がそう言うと、なぜか僕の部屋の扉から
[ガチャ]っと開く音がした。
へ? っと素っ頓狂な声を出すとセカンドは僕の部屋に入った。
セカンドはズケズケと僕の部屋に入っていった。
玄関、台所を順番び進んでいき、最後に殺風景な部屋へと入った。
その殺風景な部屋は、なにか片付けていてまるで引っ越すような感じだ。
いや、実際には引っ越すではなくここから出ていくだが。
そして、部屋の真ん中には、荷物がまとめられていた。
静寂のなか、ここまで一言も喋っていなかった彼女が口を開いた。
「ねぇ。新世、これはなにかしら?」
ずっと僕に背中を見せていた彼女はこちらに
振り向いた。
彼女はニコニコしているが、その目は笑っていなかった。
「い、いや、これは…その……」
本当の事を言ったらまずい気がした。
だから僕はあやふやに返してしまった。
それがいけなかったのか、
「ちゃんと本当のこと言って。そうしないと痛い目に合うわよ?」
そう彼女は言うと、どこからかナイフを手に持った。
今日で2回目のナイフだ。
しかもそれが同じ幹部から。
僕はこの瞬間思った。
この組織を辞めたいと―――――
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