は?

「入っていいよ」


そうボスが入室許可をすると、扉からは見知った顔が出できた。


「失礼します、ボス。フィフスです」


この空間に入ってきたのは、肩まで伸びた金髪、そしてダイヤモンドのような瞳をしている少女、いや―――美少女の名はフィフス。

位で言うと僕より圧倒的に高い。

そんな彼女がさっきの言葉から続けて、


「それと、新世くん」

「いえ、フィフスさん。テンスです」

「いや、新世く―――――」

「テ・ン・スです」

「テンス……」


なんでこの人達は、僕の事を本名で呼ぶんだよ……

彼女、フィフスがちゃんと僕の名前を呼ぶと、


「それで、何用かな? フィフス」

「はい、実はですね――――実験室が何者かによって奇襲を受けまして、それで――記憶消去装置が壊されました。と報告をしに来ました」

「は? な、な、なんで…」


実験室が奇襲を受けた?

そんな事あり得ない。

実験室は、組織の中心にある。

そんな所を奇襲なんて100無理だ。

となると、身近の存在だが―――


「ふむふむ、そうか、そうか」


ボスに視線を合わせると、ボスはさっきまでの無表情が崩れ、口角を上げ、ニマニマしている。


「え、じゃあさっきの話は……」

「あらs――テンス、本当に、本当に残念だったね。あの装置が無ければ、やめられないね?」

「もしかして、ボスの仕業ですか!?」

「どうだろうね?」


相変わらず、ボスはずっとニマニマしている。

顔を見ればわかる。ボスの仕業だと。


「できれば、早めに辞めたいのに……」

「それじゃあ、あの装置を使わず辞めるの?」

「それもありかもしれま―――」


その瞬間、背後から僕の首元にナイフを突きつけられた。


「もし、このまま辞めるのであれば、死ぬけどいいの?」


僕は今、フィフスによって身動きができず、ナイフを首元に押し付けられている。


「……それ、脅しじゃないですか」

「そうかな? 情報を持っている、裏切り者をそうやすやすと逃がすと思うかな?」

「…わかりました。ですが装置が直った時には、辞めますから」

「そうか、そうか、装着が直るといいね?」

「なんですか、その含みのある言い方」

「気にしなくていいよ。それとフィフス、もう離しても構わないよ」

「わかりました」


ボスがフィフスに向けてそう言葉を放つとナイフおろした。

やっと離してくれる。

自分よりか弱そうに見えるのに体一つも動かせない。

しかも、何故かわからないが、妙に近い気がする。

胸が……当たってる。


「あの〜フィフスさん? ボスの言った通り離してくれません?」

「なんで? ボスは離してくれても構わないとしか言ってないよ? ってことは離さなくてもいいってことだよね?」

「いや……色々と当たってて―――」

「ん、当たってるじゃなくて、当ててるの」

「どういう意味―――――」

「………フィフス。彼から離れろ」


どす黒い声が響いた。


「………仕方ありませんね、ボスの指示ならば」


ボスの言葉によって、フィフスは僕を離してくれた。


「フィフス? 用が済んだでしょ? もう出てってね。これは命令だからね?」

「………はい。それでは、ボス。失礼しました。それと新世くんも、またね」


そう彼女が言うと、この空間から出ていった。


「はぁ。今日は辞められませんが、あの装置が直ったらまた来ます」

「うん、わかった」


俺もその空間から出た。


これからどうしよう。

今日辞めれると思って荷物まとめたのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る