第6話 星は 星に恋をする

人はみんな何かを求める それは私もだ 何を?

それを探すのが人生 それを守るのが人生 etc

人によっては簡単なもので 難しいことかもしれない

じゃあずっと動かす求めている私は生きていると言えるだろうか


    正解は 否であり 愚問である


夜18:30


少しの間 少しの沈黙 少しの疑問


紗枝「良いよ、でも私の話も聞くことが条件だよ」

藤谷「もちろん、僕は無責任じゃないからね」

紗枝「藤谷の昔の話にはその目のこともあるの?」

藤谷「…気づいてたんだね」

この人は本当に優しいんだな こんな僕のことにも気づいているなんて


藤谷「あるよ、僕から聞いてほしいって言った手前言いにくいけどあまり綺麗な過去じゃないけど大丈夫?」

紗枝「大丈夫、話てみて」

優しい声色で言ってくれた 


藤谷「…君は気づいてると思うけど僕の目は見えていないわけじゃ無いんだ、僕はずっと目が見えてる」

紗枝「うん、最初会った時藤谷は正座を知らないって言ってたけど魚座のことも今日蟹座を教えてくれたことも含めて気づいてたよ」

やっぱりかと苦笑の表情を浮かべた


藤谷「僕は綺麗なものが昔から何なのか分からなかった、周りが汚くて何が綺麗で何が普通なのか今でも区別ができない」

綺麗なものは人それぞれにあるだろう 人はそれを価値観と言う言葉をつけたことも、知ってるはずなんだ


藤谷「それでたまたまおじいちゃんに会いに行った時おじいちゃんに星は暗い場所で綺麗に光るって教えてくれた」

紗枝「だから目を?」

藤谷「正解、でも極端に目を瞑っただけで見える物は変わらなかった」

藤谷「周りは僕を揶揄っていずれイジメに、父親はさらに僕を殴った」

紗枝「そう…なんだね」

探しているものが明確に分からない でも見つけたい それが探すって事なんだろう


藤谷「僕のお母さんは事故で亡くなったんだ、僕を迎えに来る途中で」

今思えば父親が僕に手を出したのはお母さんが亡くなってからだった


藤谷「だから僕は見てみたい、お母さんの星座である魚座を」

紗枝「見れなかったの?」

藤谷「…見れたよ、でも綺麗だって思えなかった」

紗枝「そ…っか」

藤谷「紗枝はさ、ここにきた時星空を見て感動してたけど何でなの?」

紗枝「何でか〜難しいな〜」

綺麗なものは綺麗と言える ただそれだけ 誰もがそうだろう


紗枝「何でかはわからないけど私は綺麗だったから驚いたんだよ、藤谷も本当は知ってると思うよ?」

藤谷?「?」

紗枝「だって藤谷初めて私と会った時言ってたじゃん、綺麗なものを見た時は仕方ないって。あれってさ藤谷も綺麗なものを一回見たことあるから共感できたんじゃないのかな」

藤谷「…」

紗枝「考えるにお祖父さんの言ってた星は暗いところで綺麗に光るって言うのは誰か特別な人って意味じゃないかな」

藤谷「特別な人…」

心が荒んで 暗くなって 何もない場所に 誰かたった一人でも寄り添う人がいるならば どれだけ綺麗に輝くだろうか


紗枝「でも周りは気づきにくいと思う、だって綺麗って言葉は綺麗と思える物に言うから」

紗枝「でもお祖父さんは違ったみたいだね、藤谷には寄り添ってくれる人がいるのか。それを知って欲しかったんじゃないかな」

きっと一人じゃないって伝えたかったんだろう、でも藤谷自身も気づけなかった

だからずっと探してたんだ 


藤谷「何でそのまま伝えてくれなかったんだよ…」

それはそうだ、気づかせてくれようとしてくれるのは嬉しいだけど 

じゃあなんでそのまま伝えないんだって 文句を言いたくなる

自ら気づかないといけない時はあるのだろう それでも簡単に教えて欲しい

私たちはまだ 人生のほとんどを知らない子供だから


紗枝「伝えれないよ、伝えれるわけがない」

藤谷「何で紗枝そんな簡単に気づけたの?」

紗枝「じゃあ今度は私の話を聞いてね」

心の準備はできてる、大丈夫


紗枝「私ね、ずっと人のために生きろって言われて育ってきたの」

藤谷「人のため?」

紗枝「そ、困っている人がいたら助けないといけないって。それが良い子で偉い子だから」

藤谷「だから紗枝は僕のことに気づけたんだね」

紗枝「でも私はそれが…」

言いたい誰もが言えて、でも誰もが人のために言い難い言葉


藤谷「いやだって?」

紗枝「…え?」

藤谷「あれ違った?」

何で簡単に言えるの? 何で簡単に伝えれるの?

私が今まで言えなかった言葉を何でそんな簡単に


藤谷「紗枝が優しいのは知ってる、だから嫌だって断るのが苦手なのかなって」

紗枝「…苦手、断ったら嫌われるんじゃないかって。でも私は良い子じゃないといけない、私がしてることは正しい事だから断っちゃいけないの」

私がしてることは正しいことだ でも感情を持つ者としては正しくない

だから私は正しくないのだ


藤谷「じゃあ真っ当に生きたら良いんじゃないかな?」

紗枝「真っ当?」

藤谷「そう、正しいことはいい事だと思う。でもそれは紗枝だけが正しくても駄目だと思う」

正しさとは周りが一緒に正しくないとただのお人好しになってしまう

だから誠実に、真っ当に そうやって生きるだけで人は何も言い返せなくなる


藤谷「真っ当に生きたら正しい事をするだけじゃなくて、正しい事を伝えれる人間になるってことだろ?」

正しさは振りかざすだけじゃただの独裁、なら周りも正しいことを知ればそれは

普通の事になる


藤谷「紗枝が僕のことにもおじいちゃんのこともわかったのって今までずっと人のために頑張ってきたから気づけたんだね、それなら納得できるよ」

紗枝の言葉が聞こえてこない でもその理由はすぐにわかった 振り向いた時

彼女は泣いていたのだ


紗枝「何で、な 何でそんな言葉を言えるの」

嗚咽混じりの言葉を ぶつけるように でもどこか受け止めて欲しそうに


紗枝「わ、私ずっと頑張ってきたのに 皆、それが当然って言って。断ったり しようとしたら、じ 自己中って。自分勝手だってずっと言われてきた」

優しさを向ける それは時には相手を堕落させる行為だ


紗枝「一回だけわ、私人が困ってるのをみす。見捨てたことがあって そしたら今まで仲良くしてたひ 人たちがみんな私が悪いって」

他の人に否定されたくなかった 理由は周りが正しいだなんておかしいから

もし周りが正しいなら私が私自身を否定している意味がなくなるから

でも自分自身が正しくあるために自分を否定していたら 周りに断れなくなった

だから私は一番の 加害者なんだ 自分自身の加害者だ


藤谷「今までよく頑張ったね」

紗枝「ん、うん 私いっぱい頑張ってた」

ずっと欲しかった ずっと求めていた 私だけに向けられた肯定

藤谷「僕達ってきっと似た者同士なんだね」

紗枝「え?」

藤谷「だって僕はずっと探して、紗枝は求めて」

藤谷「だから僕たちはこんなにも魅せ合える」

互いに互いの目を奪い 互いに互いの気持ちを掴み合う


藤谷「初めて会った昨日、僕を見る 君を見つける」

紗枝が僕に言ったことが正しいなら 僕たちはきっと星だ


藤谷「そして」

紗枝「貴方を見る 私が見つかる」

意図してか 言葉を続けた


藤谷「僕は君に… 君に出会えて」

あの時何を思ったんだろう 楽しみだったのだ 紗枝と話すことが


藤谷「僕は 君に期待する」

僕の欲しかった物かは分からないけど 君が綺麗な星だったらどれだけ嬉しいだろう、今はそう思える


紗枝「昨日藤谷と会った その夜いつもより空が綺麗だった…

私は 貴方を想って」


私は 貴方に 恋をする


藤谷「ん?最後なんか言った?」

紗枝「なーいしょ♪」


星は自分自身で輝き続ける だから周りの星のことなんて本来知る由も無いのだろう でも互いが互いに魅せられた時 それは一つの星座となる


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