第4話 星は 星に期待する

私には欲しい物がある なんだったけ 思い出せない

簡単なはずなんだ とっても簡単 誰にでもできる 

皆している事 単純だ 単純で難しい

否定することが正しさなら 肯定は優しさだ


だから私は自分自身を 否定する


???


時間が過ぎて行く 何分、何時間ここにいただろう。

「また明日ここでお話ししませんか」

その言葉がずっと頭の中で渦巻く 何なのだろうこれは

嫌じゃないはず 嫌じゃなかった それでも頭の中に残る


藤谷「またここでか、こんな僕とまた話したいだなんて」

自分の目を触り考える


(楽しみだなんて思っても良いのだろうか)


鈴美蘭紗枝は小町藤谷の秘密に気づいた、それはずっと良い子で居るからこそ気づけた事に他ならない。

だが逆もまた然り


小町藤谷もまた気づいていた

(あの人は求めているんだ 自分が自分であることを 優しすぎるから…)


誰もが思うことだ、自分はこうしたい自分はああしたい。

でも誰も自分からはしない、誰かにやってもらうほうが楽だから


藤谷「良いなぁ」

その呟きは広い空に霧散するように消えていった


コツコツ コツコツ 誰かが近づいてきた 


祖父「藤谷ちゃんバァさんがご飯冷めるからって言っておったぞ、帰ろう」

藤谷「もうそんなに時間が経ってたんだ」

ベンチから立ち上がりおじいちゃんの元に歩く


祖父「藤谷ちゃんや、なんかええことでもあったか?」

表情に出てたのだろうか、おじいちゃんに言われて気づいた


藤谷「ん〜良い事なのかな、わかんないけど明日が少し楽しみなのは確かだよ」

祖父「それは良かった、明日が楽しみって藤谷ちゃんから聞けて嬉しいわい」


そのまま何事もなくおじいちゃん家に帰りご飯を食べた 

そのまま部屋に戻り布団に入って 明かりをつけたまま眠った


綺麗って何なんだろう、ずっと見てきたはずなのに綺麗と思えなかった

それでもおじいちゃんは星は綺麗だって言っていた


皆んなには見えているらしい 僕にはずっと綺麗な星は見えない

何が違うんだろう 僕と皆んなは 

小さい頃から僕は汚い場所にいた 周りは暴言暴力 周りは誰も助けないし見もしない知らんぷり

汚いところに居すぎて何が綺麗か分かんなくなった でも


祖父「暗いところで星はよく光る、とっても綺麗に」


その言葉通りに僕は目を閉じた 星を見たくて でも実際は揶揄われて 

虐められた 何も知らない奴らに


親はさらに僕に暴力を振るった 僕が何をしたんだろう 何度も考える

でも答えなんてあるわけない だって大人は…



私は何をして欲しかったんだろう 褒めて欲しかった? 構って欲しかった?

違う気がする だって私は加害者だから 当然のことができなかったから

皆んなはずっと求めてる 助けを 手を貸してくれるのを

それが人が困ってる証拠だって教えられて 頑張った


母親「良い子でいて、偉い子でいて、お母さんを困らせないで」


なんて自分勝手で自己中なんだろう でも言えない 言ったら怒られるかも

嫌われるかも…じゃあ私は自分自身を否定している意味は? 

周りを肯定していて 自分は押し殺しているのに 何で皆はそんなに

自分自身を肯定できるの? 簡単で単純 でも 無い事にされる


周りの言葉で 私を否定する 自分が正当だってそれを振りかざす

でも私はやっぱり言えない だって周りの人は…


 無責任だから

(矛盾しているから)

 正しいから


助けなんて来るわけない だから僕は探す

私は正しい事をしている だから求め望む


綺麗な光を



祖母「藤谷ちゃん、朝ご飯そろそろ出来るから居間においでね」

藤谷「ん、ん〜ワカたー」

祖母「寝癖ちゃんと直しておいでね」

布団を思い切り剥がれ畳の上に転がされた


重い腰をあげ立ち上がる、頭を掻きながらゆっくり洗面台に向かった。

蛇口を探しハンドルを捻って水を手に流す

(つんめった)

少し跳ねた髪に水をつけタオルで拭く…タオルが無い


藤谷「おばあちゃーんタオルってどこー?」

少し待っても返事が返ってこない

藤谷「おじいちゃーんタオル持てないー?」

ドタドタドタ 少し大きな足音が近づく

ガラガラッ! 勢いよく扉が開いた


「お前こんなとこにいたのか」

何度も聞いた声 後ろからおばあちゃんとおじいちゃんの声がする


祖父「お前今更何しにきたんだ!勝手にズカズカ入ってきおって!」

祖母「あなた落ち着いて!」


そいつは 僕を見て 笑いながら


「お前は俺の子だろ?勝手にいなくなるなよ」


やっぱり大人は矛盾している 俺の子なんて言って 


「ほら、早く帰るぞ」


藤谷「…はい」

そいつはおじいちゃんとおばあちゃんが居ないかのように僕を連れて帰った


藤谷「何でわざわざ僕を連れて帰るんだよ、父さん」

父親「言っただろお前は俺の子だ、なら親である俺の元にいるのが当然だろ」

藤谷「僕を家から出したくせに」

父親「誰がどっかに行って良いって言った?」

紫煙を撒き散らしながら 僕に近づく


父親「なに突っ立ってるんだ?早く飯作れよ」

藤谷「…はい」

台所に立ち料理を始める

父親「お前何で目閉じているんだ?気持ち悪い」

あんたに教えるわけないだろう


父親「お前もクソ親父もほんっと無駄なことするよな」

お前もクソだ、おじいちゃんの方が何億倍も…いやこんな奴と比べるだけ無駄か


ジュウウウ コトコト 焼く音 鍋が煮立つ音 jojcbefwekxmdcsdvbw 雑音


一つだけ訳の分からない音が僕の耳を汚す


今何時ぐらいだろうか 恐らく昼ぐらいだろうけど時間がわからない

(目を開けて良いのかな、誰かを見て良いのかな)

星を見たくて閉じた目 だけど僕が他の人を見ると 気持ち悪い 見ないで

何だその目は舐めてるのか? 

そんなこと言われたら見たくなくなる 目を開きたくなくなる


藤谷「できたよ、ご飯」

父親「おっせぇよ、さっさと作ってもってこい」

藤谷「ごめん」

父親「てかいつまでそこに居んの?邪魔だから消えろ」

藤谷「…はい」

部屋の角に行き座る ここなら全体を見渡せる ここなら見てもバレない

あいつはテレビを見ている テレビ画面に時間が映っていた


昼13;47


父親「おい、布団もってこい」

藤谷「はい」

布団の場所はあいつの方が近いけど僕に取りに行かせる

布団を渡してまた部屋の角に座る


あいつはいつも酒を飲んでいる だからご飯を食べた後は決まって眠る

(こいつって何でこんなに馬鹿んだろう)

酒を飲んで寝た後大体僕は家を出る なのにこいつは一向に辞めない

………

ほら もう寝る


時間は早すぎるけどこんな汚いとこに居たくない 家を出て そこらへんに落ちていた長めの棒を持ち 僕は急いで公園に向かった。









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