第3話 星に… 星に出会えて

星が見たい だから 僕は◻︎◻︎◻︎◻︎◻︎

無責任 それが一番楽なんだ  

でもこれは僕のせいじゃない 暗くて暗くて

何処を向いているか分からない 


でも僕は確かに 上を見ている


夜19:30


ベンチを探しにきたのに空を見上げている 「うわぁ〜」

つい口からこぼれてしまった、上を見ていた男の子こちらに気づく

「誰ですか?そこにいる方は」その男の子はこちらを向きそう言った


紗枝「いや、あの邪魔してごめんね。休憩しにベンチ探しにきたんだけどそしたら遊具の上に誰かいるなって。」

「…」男の子は無言だ、暗くて良く見えないけど(目を閉じてる?)


紗枝「それでよく見たら上を見ていて何かあるのかなってみたら綺麗な星空だったからつい声が出て、ごめんね」

「いえ、そうゆう事なら仕方ないです、驚いた時は声が出ても仕方ない」

男の子がゆっくり遊具から降りてきた、遊具に立てかけてあった棒を取り地面を叩いてこちらにくる


「先ほどは荒い口調ですみません僕は小町藤谷と言います」

紗枝「私は鈴美蘭紗枝です、私も大きな声を出してすみません」

藤谷「いえいえ、ところでこんな時間に制服姿とは部活帰りですか?」

紗枝「いやぁ、あのぉ…」

藤谷「ん?」

紗枝「あのですね、学校で寝ていて目が覚めたらこの時間でして…恥ずかしいです」

藤谷「ぷっはははは」大声で笑った

藤谷「フフッ、いや申し訳ないですバカにしているのではく単純に面白くて」

紗枝「も、もう」

藤谷「部活ではないのであれば早めに帰らないと怒られるのでは?」

紗枝「あ!そうだ早く帰らな…いと、」


なんでかは分からない 分からないけどまだ帰りたくなかった

怖い 何が? 家に帰るのが 本当に? 良い子なんでしょ


藤谷「あの大丈夫ですか?ぼーっとして」

紗枝「え、あ 大丈夫ですよ」

家に帰ることは嫌じゃないはずだ、それでも嫌だって思ってしまう

紗枝「あの、良かったらですが星を教えてくれませんか?」

藤谷「星ですか…」

紗枝「あの無理なら無理で構いませんよ、ただの興味本位で聞いた…」

藤谷「構いませんよ、僕でよければですが」

紗枝「本当ですか!?是非お願いします」


正直意外だった 教えてくれる事も 私がこうやって知りたいって言った事も

知ってる これがただの時間稼ぎだって それでも聞きたかった


夜19:40


私たちは近くにあったベンチに座り 夜空を見上げた

(やっぱり 目閉じてる、目が見えない人なのかな?)

そう思っていると


藤谷「さて…実際僕も何がなんだか分からないんですよね」

紗枝「分からない?」

藤谷「僕は星が好きです、星座も好きなんですけど一度も見た事がなくて」

頭をかきながら照れくさそうに言った

藤谷「それでも星が見たくて夜になったらここに来て空を見上げています、昔おじいちゃんが星は綺麗なものだって教えてくれて」

紗枝「おじいさんも星が好きなんですね」

藤谷「一番綺麗で大好きだって言ってました」

紗枝「藤谷さんも好きな星などはあるんですか?」

藤谷「呼び捨てで構いませんよ」

紗枝「…なら と、藤谷も私のこと呼び捨てでいいよ」

生まれて初めて男の人を呼び捨てにした 恥ずかしいと言うかなんと言うか、むず痒い


藤谷「わかりました、それで好きな星があるのかって話でしたね。

星と言うか星座になるんですけど魚座が好きですね、見てみたいです」

紗枝「魚座ですか、形がわかんないからどれが魚座かわかんないや」

藤谷「魚座は秋によく見えると言われていますよ、今6月なのでまだまだ先です」

紗枝「そっか〜」

魚座と聞いた時妙に親近感が湧いた 私の星座は魚座だったから


紗枝「なんで魚座が好きなんですか?」

藤谷「なんででしょうね、自分にもわからないんです。」


手を空に伸ばしてそう言った その姿はまるで

何かを欲している子供のように


藤谷「でも僕は見てみたい、あんなに広い空を泳いでいる魚を 何処までも泳いでいく綺麗な魚を」

紗枝「…いいですね、その考え方」


あぁ この子は一人なんだって気づいてしまった そしてこの子は目が見えないんじゃないだって分かってしまった


この子は探しているんだ 


紗枝「あの」

藤谷「どうかしましたか?」

紗枝「良かったらまたここでお話ししませんか?」

藤谷「いいですよ、僕からも是非お願いしたいです」

紗枝「明日もこの時間帯にいますか?」

藤谷「それはわかりませんね、今も何時か分からないので」

紗枝「そうですか…」

藤谷「なので明日は早めにここにいますね」

笑顔でそう言ってくれた


すこしの間静寂が続いた 優しく頬を撫でる風 僅かながらにも確かに照らしてくれている街灯 空を見上げているだけなのに なぜかとても落ち着く


紗枝「じゃあそろそろ私帰りますね」

藤谷「わかりました、ではまた明日」


少しの時間 それでも満足できた

先程まで小走りで進んでいたが 今は少しゆっくりと歩いて 

空を見ながら家に帰った


しばらく歩いていると家が見えてきた、家の前に誰かいる

(誰だろう?)と思っていた矢先家の前にいる人がこっちを向くなり走ってきた


母親「あんたこんな時間まで何してたの!」

そう言いながら肩を掴んで揺らす

母親「こんな時間までほっつき歩いてあんたは良い子なハズでしょう!」


良い子なんだから 偉い子なんだから    


母親「あんたがそうやって頭の悪いことすれば私が恥ずかしい思いするのよ!周りの事やお母さんのこと考えてよ!」


良い子 偉い子


母親「本当にあんたは自己中で自分勝手なんだから!」


ってなんだっけ


紗枝「…遅く帰って、ごめんなさい」

母親「分かれば良いのよ、謝れて良い子ね 偉いわ」


頭を撫でながらそう言った 本当に

(気持ち悪い)


母親「さぁ家の中に入りましょ、ご飯できてるから」


家に入り リビングに行く 白米 味噌汁 野菜に すき焼き 

(牛乳だ…)


母親「好き嫌いなくいっぱい食べてね」


気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い


紗枝「いただきます」


味はわからなかった でも 嫌いだった


紗枝「ご馳走様、お風呂入ってくるね」

お風呂に入り 上がって髪を乾かして 歯を磨く


スマホを見ながら階段を上がって部屋に戻る いつものことだ

いつもの事なんだ


スマホのアラームをセットしてベットに横になる

いつも寝る前に見ている窓の外


なのに なぜか今日は いつもより 窓から見える夜空が綺麗だった。


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