第7話王都に向けて~人の噂は75日~







 ――結局、あの後、俺の【アイテムボックス】へ入れる家具の準備や王都へ向かう人選をする為に『3日後くらいにまた来て欲しい』と言われて領主邸を後にした俺は、家に戻りその日あった事を家族へ報告していた。



「…って事で、近い内に王都へ出掛けると思うから漁師の仕事は手伝えなくなるかな…それに俺からも伝えるけど商会の方にも暫く休むって伝えておいて欲しい」



「へぇ?この街の領主様がねぇ…わかった。そっちは任せて、安心して行ってきな」



「コナーの【アイテムボックス】がそんなに珍しいタイプだったなんて知らなかったなぁ…馬を貰ったら今度、隣街まで俺も連れてってくれるか?その街の取り扱ってる薬とか調べたい」



 両親は特に問題は無いようで、すぐに『気を付けてね』と了承してくれ、2人の兄も特に心配はしていないのか笑顔でそう言ってくれる。



 モルトは心配どころか、依頼報酬の馬が手に入ったらメルメスの様に隣街まで【アイテムボックス】に入れて連れてってくれと頼む始末だ。



「あはは、わかったよ!必ず連れてくよ」



――ぱたぱた



 食卓にて、両親と兄2人に顔を見合わせていると、背後からなんとも弱弱しい足音が近づいて来て、背中にちょん…と小さい手が触れる感覚を感じ、後ろを振り返る。



「――コナにぃ!わらしもぉー!」



「お?リリンも旅に行きたいの?じゃぁお父さんのベルフ兄さんにお願いして、許可を貰ったら一緒に隣街にお出かけしようか?」



「すうー!」



 背後から近付いてきていたのは、我が兄ベルフの1人娘であるリリン。どうやらお昼寝から起きて来たばかりらしく、寝癖を付けながら満面の笑みでこちらに縋り付いてくる。



「ふぁ…こらリリン?まだ寝癖が直ってないんだからコナー君にだらしないって思われちゃうわよ?」



「ふぇ?いやー!」



 恐らくリリンのお昼寝に付き合って寝ていたであろうベルフの妻で、リリンの母親のマーシャが欠伸を噛みしめながらリビングに現れ、リリンへ注意を促すとリリンは頭を押さえてマーシャの後ろに隠れてしまった。



「ははは。リリンはコナーの事が大好きだな」



「そうね、流石は私達の子ね?こぉんな可愛らしい孫娘を篭絡しちゃうなんて」



「母さん…篭絡はちょっと違うと思うけど……」



 リリンの反応に家族みんなが微笑ましい顔になるが、母さんの少しズレた発言に思わずガクッと身体を滑らせてしまう。



 ……しかし、いざ王都へ旅に行けるのだなと考えると、この幸せの光景が暫く見れなくなるのかと思えば、少々後ろ髪を引かれてしまうが、折角のチャンスだ。必ず依頼を完遂して、自分の夢である商人になる為、頑張ろうと気合を入れる。








◆◇◆◇◆◇◆






 3日後、領主邸にて。



「――お嬢様のドレスはタンスごとこちらに…寝具や家具は中にいるメイドに配置をお伺いくださいませ」


「あら、こちらの使用人用のお部屋もなかなか広い作りなのですね。これならば十分お嬢様のお世話をする人員を――」



「――お嬢様の未来の旦那様になられる方かもしれません。万が一の時に備えて、ベットシーツは出来るだけ沢山ご用意いたしましょう」



 現在、領主邸に着いた俺は出迎えはほどほどに、すぐ中庭に案内されメルメスが使う部屋異空間と使用人用の小部屋分割した異空間の≪ゲート≫を開くように指示をされ、言われるがままに【アイテムボックス】の≪ゲート≫を5つ同時に開いていた。




 ちなみに分割した異空間とは、この間見せたステータスに表示されていた【アイテムボックス】がLv5になった時に追加された機能≪ルーム操作≫による力で生み出した縦横5メートルの小型部屋の事である。



 ≪ルーム操作≫とは、10×10の標準の異空間を分割して小さい部屋を4つに組み替えたり、逆に10×10の部屋を4つ合わせる事によって、20×20の大部屋を作る事の出来る能力だ。(ちなみに、ルーム名を『自室』や『ゴミ箱』と言う名称に変更したのもこの能力の力だ)



 使用人達の部屋を用意すると前回メルメス達と話し合った際に、男女混合ならば大きい部屋で数人で寝泊まりするより小部屋を作って男女別で用意した方がいいと決まり、小部屋を用意させてもらった。





 一応ステータス上はこのように表示される。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


★アイテムボックス★


≪自室≫    10×10:【簡易ベッド】【木製テーブル】【その他▼】


≪メルメス≫ 10×10:【メイド♀】【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【メイド♀】【メイド♀】【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【執事♂】【作業員♂】【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【作業員♂】【その他▼】


≪シングル≫  5×5:【メイド♀】【作業員♂】【その他▼】


≪ダブル≫  10×10:空


≪ダブル≫  10×10:空


≪ダブル≫  10×10:空


≪ダブル≫  10×10:空


≪ゴミ箱≫  10×10:【角材】×32【その他▼】




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 こんな感じだ。



 何となくわかるかもしれないが、人の名称に関しては“俺自身”が知りうる情報を元に反映されているので、【メイド♀】などと書かれているが、その人物の名前を教えてもらえば自動で名前が変更されるし、メルメスの様な以前から名前を知っている人物が【アイテムボックス】に入れば『メルメス♀』と記載される。


 【その他▼】の文字は、それ以外の家具や小物を一まとめにしているだけなので、きちんと意識をすれば他に何が収納されているのかはきちんとわかる様にはなっている仕様だ。



 ……ちなみに、≪シングル≫や≪ダブル≫という名称は前世のホテルをイメージして名前を付けているだけなのでベットのサイズがシングルサイズやダブルサイズという訳ではないし、寧ろベットは全てメルメスが用意しているので使用人用のベットでもダブルサイズ以上?はありそうな立派なベットだ。(王都に着いたら一個俺の≪自室≫に貰えないだろうか?)






 とまぁそんな訳でメイドや執事、そして引っ越し業者の様な作業員達が入れ替わり立ち代わりで俺の【アイテムボックス】の大改装を行っているという訳である。



「来て早々にコナー様の【アイテムボックス】を使わせていただいて申し訳ありません。うちのメイド達が張り切っていて止める事が出来なかったのですわ」



「いや、元々家具や寝具はそちらが用意するって話でしたし、困る訳でもないんで俺は大丈夫ですよ……まぁ色々と言いたい所はありますが…」



 なんだ『未来の旦那様』や『万が一』って、そもそもこちとらただの小市民ぞ?君らはどちらかと言えば『どこの馬の骨だぁ』って俺を警戒する立場だろ…。


 前世もこの世も女性は恋愛系の話が好物なのか、メイド達が【アイテムボックス】内のお部屋を整えながらもキャーキャー言いながら俺とメルメスの禁断の恋を語り合っている状況にため息を漏らしてしまう。



「ふふふ……あら、私のお部屋はどうやら整ったようですわね?」



 隣で話していたメルメスの言葉に釣られて、メルメス用の部屋にしている異空間へ繋がる≪ゲート≫の前でこちらに『お部屋の準備が終了しました』と言わんばかりに頭を下げるメイド達。



「中がどうなったのか気になりますし、一度中を確認いたしましょうか」



「俺が見てもいいんですか?普通女性の部屋は男性に見られたくないものだと思いますけど」



「まだ寝食もしていない部屋を見られた所で特に思う所などありませんわよ。さ、行きましょう」



 本来なら、ここで俺が一緒にメルメス専用に用意された部屋に入れば、余計に根も葉もない噂が飛び交うのは理解していたが、ぶっちゃけ、この世界の富裕層である貴族がどんな部屋で過ごすのかという純粋な興味心があり、どうせすでに噂になっているならこれ以上何を言われても実質被害はゼロ。


 メルメス自身に問題無いのなら、割り切って貴族のお部屋を拝見させてもらおう。








「おぉぉ……ザ・お姫様のお部屋……」



「あら、お姫様だなんて……本物のお姫様であればもっとすごいと思いますわよ?金貨数千枚の絵画を幾つも飾ったりするんじゃないかしら?」



 メルメス用に設えられた部屋は、キングなのかクイーンなのか、人が6人くらい寝れるのではないかと言えるほどの大きな天蓋付きベットに、誰が使うのかも不明な装飾が施された大き目のソファーが3つ。恐らく長旅の間に暇を潰す用に本棚がずらっと並び、同じく暇つぶし用のチェスや俺の知らないボードゲームが用意されている。



 タンスなどは置いていないので、恐らく着替え用の服などは使用人に宛がえた≪シングル≫の部屋のどこかに仕舞っているのだろう。



「数千枚……住む世界が違い過ぎて眩暈が…」



「その内コナー様も慣れますよ」



 何故俺が慣れるという事になる?慣れないし、慣れたくないんだけど!?








 と、貴族の金銭感覚に驚愕しつつも部屋に問題は無かったようで、お部屋の見学はすぐに終わり、他の使用人達用の部屋の準備も順次終了し、これでいつでも王都に向かえる状況になった。



 メルメスが言うには、もし何か問題が発生してもいいように少し早く王都に出発する予定らしいので、出発は王都で開催されるパーティーのちょうど3か月前に出るとの事。



 日付的には今日から2週間後という事になったので、それまでにその他の準備を終わらせておくように言われた。



 お世話になっている商会にはすでに領主のメルメスとの事は伝えたし、職場で良くしてくれた上司のおっさんには報酬で馬をもらえる事を伝えたら『よかったな坊主』と祝福もしてもらった。



 一応、まだ馬を貰ってはいないので見習い商人として今お世話になっている商会を辞めてはいないが、俺も商会側も独り立ちする予定で考えているので、お世話になっている商人さんには『頑張りなさいよ』と温かく送り出してもらったので、メルメスを送ってブルスに帰ってきたらきちんとお礼をしてから商会を辞めるつもりだ。






――――――――――

――――――――

――――――






 そんなこんなをしていれば2週間などあっという間に過ぎ去り、今日はメルメスと王都へ出発する約束の日、当日。


 俺はまだ日が昇り切っていない早朝に領主邸へ赴き、すでに出発の準備を開始していた使用人達に挨拶をしてから準備が終わるのを待つ為に応接室にて待機する。



――――コンコン



「はい?」


「―――失礼する」



 恐らく俺を呼びに応接室の扉をノックして中に入ってきたのは、バルトファルトと見覚えのない人が数人。メルメスはどうやら居ないらしく、俺は唯一顔見知りのバルトファルトに目を向ける。



「コナー殿、出立の準備が整い呼びに来たのだが……実は今回の旅の同行に1パーティーだけ冒険者の護衛を依頼する事になった」



「あ、そうなんですね?」



「あぁ、そしてこの方々が今回護衛についてくれる『ホワイトタイガー』方々だ」



 バルトファルトの説明を受け、視線を『ホワイトタイガー』と呼ばれた人達の方に目を向ければ、冒険者パーティーのリーダーらしきが一歩前に踏み出し口を開く。



「君がコナー殿……ごほん…ご紹介に預かった『ホワイトタイガー』のリーダーをしている戦士の“ミント”だ。こいつらは右から魔法使いの“ヘーニア”、回復役の“アイリス”、そして索敵の“メメ”だ」



「「よろしくお願いします」」「よろー」




 ミント達は何やらコナーの顔を見て、ふむふむと頷いてから話始めたが、もしかしたら事前に俺の事を知っていたりしたのだろうか?



 ミントのパーティーは殆どが女性のパーティーらしく、偶に聞く“ハーレムパーティー”という奴のようで、恐らく顔立ちの良いミントに釣られて出来たパーティーなのだろう。



 個人的にそういう恋愛観を否定するつもりは無いので別に構わないし、問題は無いけど、どうしていきなり冒険者パーティーを護衛に付けるという話になったのだろう?



 元々、俺の【アイテムボックス】は逃げ隠れる事に関しては絶大の自信はあるし、奇襲でもされなければ俺含め、【アイテムボックス】の中にいる人間に危害が加わる事など無いと話していて、メルメスも『なら護衛はいらないですわね』と言っていた。



 恐らく俺がそういった疑問を表情に出していたのか補足情報としてバルトファルトが再び説明をし始める。



「何も貴様が嘘をついていると疑っている訳では無い。しかし、少し厄介な事に王都へ向かう街道に魔物の群れが発見されたらしくてな。領主として魔物を放置して行く訳にも行かず、魔物の討伐を王都に向かうついでに行う事になったのだ。…安心しろ、貴様を魔物と戦わせるつもりはない。メルメス様と一緒に【アイテムボックス】の中で避難していてもらう予定だ」



「魔物の群れですか…」



 個人的には、領主が危険に晒される可能性が高まりそうだし、そういうのは寧ろ避けるべき問題かと思ったが、どうやらこの世界のお貴族様は積極的に問題解決に動く人達らしい。



 ……多分、魔物を放置でもしたら他の貴族や領民に『責任から逃げた臆病者』とか『守られるだけで税を取っていくダメ領主』などと噂されたりするから問題解決に乗り出しているのかもしれないが、ぶっちゃけ【アイテムボックス】で隠れてていいのであれば俺にとっては問題は無いし、寧ろ“魔物”を見る経験を出来るなら儲け物だ。




「オレ達も名ばかりの護衛料と魔物討伐の報酬金を貰うから問題はないし、“聞けば”野営の時は周囲を警戒しなくてもよくなる人の入れる【アイテムボックス】持ちがいるとかなんとか……楽しい旅が出来ると期待してるよ」


「あはは…まぁ異空間に空きはまだまだありますので問題は無いですけど……寝具や家具はどうするんですか?」



 メルメスやバルトファルトにも【アイテムボックス】の空きはまだまだあると伝えていたので、事後承諾で冒険者を呼んだのはわかるが、出立当日に寝具や家具を異空間に持ち込むのはきつくないか?



「……本当に馬車の旅でベットのある睡眠を取る気だったのか……オレ達は寝れれば構わないから事前にベットだけ積み込む事になってる。…最初は冗談だと思ってたが…」



 ミントは事前に【アイテムボックス】の中で寝食をすると聞いてはいたらしいが、殆ど冗談だと思っていたらしく、『ベットさえあれば問題ない』と伝えていたらしい。



 まぁベットだけなら、人数分運び込んでも30分もかからないし、それなら大丈夫かと肩の力を抜く。



 

 …何か、ホワイトタイガーの女性陣が『ホントなんだったら洗面台とか欲しかったかも』『今からタオルとか追加の着替えも持ってきちゃダメかな?』『冗談でもベットは欲しいって言っておいてよかったー!マジグッジョブミント!』と小声で話していたが、特に問題は無さそうなので放置する。



 自己紹介もあっさりと終わり、早速メルメスが待っているらしい玄関口に向かおうと話が進み、俺達は応接室を後にする。






◆◇◆◇◆◇◆






「…本日からよろしくお願いいたしますねコナー様」



「「「よろしくお願いします」」」



 応接室を出て領主邸の玄関口に移動してきた俺を迎えたのは、旅に出る為の荷物を執事とメイド達に持たせた状態で待っていたであろうドレスを着たメルメス達。



 どうやらバルトファルトが呼びに来る少し前位に準備が終わっていたらしく、一応事前に知らせていなかった冒険者達の紹介だけ済ませられるように玄関口で待っていたらしい。



「よし、それではコナー殿、まずはメイド達と執事達の部屋を」



「はい、≪ゲート≫」



 バルトファルトの呼びかけに応じて、使用人用に準備していた≪シングル≫と名称した小さめの異空間へ繋がる≪ゲート≫を4つ開く。



 使用人達はメルメスの荷物を持ちながら男女別に2つずつの部屋に分かれて入り、入り切ったのを見て≪ゲート≫を閉じる。



「よし、次は……あれ?そういえばホワイトタイガーさん達の部屋は何個必要ですか?」



「ん?一部屋で良いぞ。ベットも準備してもらったのを見たがかなり大きいし最悪1個でも構わない」




 おぉ……ハーレムパーティー持ちは流石に言う事が男らしい……。



 他の女性陣も特に問題は無さそうにしているので『まぁ本人達がいいなら…』と≪ダブル≫の標準サイズの異空間へと繋がる≪ゲート≫を作り出し、ベットの搬入も終え、ホワイトタイガーの面々も【アイテムボックス】の中に入る。(名目上護衛だから一緒に外で移動するかと思ったら迷いなく中に入っていったな……)



「そしてメルメス用の…≪ゲート≫」



 そして最後に残ったのは雇い主でもあり、今回の旅の主役であるメルメスが【アイテムボックス】内に入る番……なのだが、当の本人であるメルメスは≪ゲート≫ではなく俺の方へ向かって歩いて来る。



「コナー様、当日に同行者を増やした事を事前にお知らせ出来ずに申し訳ありませんでした」



「え、いや、それは大丈夫ですけど……」



 元々、執事やメイドの同行者数も詳しくは聞いていなかった自分としてはそこまで気にしていない。というか寧ろ仮に100人規模で増えても『まぁぎゅうぎゅうに詰めればみんな入るし俺は問題ないですよ?ぎゅうぎゅうなのは我慢してもらいますけど』と言うくらいで許すだろう。



 と言うのも、怒らない理由……というか俺ががあるので、同行者が増えるのはこちらとしても大歓迎なのだ。



 その理由と言うのが……俺の【アイテムボックス】に経験値が入る条件に関係しているという事だったりする。



 俺のスキルが経験値を得る条件……それは『アイテムボックスに物や生き物を出来るだけ多く収納した状態でに応じて』経験値が貰えるのだ。



 そう、実はこの王都までの旅についてく依頼は俺にとってめちゃくちゃ経験値稼ぎの良い依頼なのだ。



 家具や寝具にメルメス、メイド達と執事達、それに冒険者1パーティーに以前から色々と収納していた≪自室≫や捨てずにあえて放置していた≪ゴミ箱≫を【アイテムボックス】に収納したまま馬車で王都まで移動。これはハッキリ言ってめちゃくちゃ助かる。



 なので、別にメルメスに謝られても『こっちも助かるしなぁ』くらいの気持ちなので、本当に気にしないで欲しいと思っている。




「本来なら私とコナー様との新婚旅行と言う2人旅でもよかったのですが、魔物被害は予期して対応など出来ませんでしたので」



「新婚旅行と言うのは否定しますけど、確かに魔物も人間の都合で動くわけじゃないですし、あまり気にしないでください」



「あらあら……ならここはお優しいコナー様に甘えさせていただきますわ」



 俺の特に気にしてい無さそうな表情を見たからか、メルメスもホッとした表情ではにかみながら『では』とメルメス用の部屋へ繋がる≪ゲート≫に歩みだす。



「――未来の旦那様がお優しいと私としても嬉しいですわね。冒険者ギルドでも鼻が高いですわ」



「……ん、え?…」



 冒険者ギルド?噂?どういう事だと横に立っていたバルトファルトへ目を向ける。



「ん?おぉすまんな、依頼を受注した際に使用人の一人が『メルメスお嬢様のご婚約者様と王都へ向かわれる』と口を滑らせたらしくてな。なぁに気にするな、貴様がロリコンにしろそうじゃ無いにしろ婚約の事実は無いのだから勘違いだ!と突っぱねれば問題はないだろう」



「………………」



 …なるほど、通りでミント達と初顔合わせをした時『ほほう?こいつがね』みたいな反応をされた訳だ…。



 つまり、俺はこのブルスの街に居ない間にずっと『コナーって奴が幼女領主を口説き落としたロリコン野郎』と噂にされるという事か……。





「いやああああああああああああああああああ」




(……帰って来た時、家族に知らない人認定されないといいな……)













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