第4話 新たなるところ

「魔王様、ご報告です。」


「緊急事態かい?」


「該当の人間が現れました。」


「お!どんなやつ?」


「赤い髪、赤い目、膨大な魔力でした。」


「...OK。頭と胴があれば、あ~骸でも問題ないぞ!絶対持ってい来い!頼んだ!」


「承りました。四天王が一人エイデン・クロゲート、必ず遂行します。」


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2024年4月13日 昼(戦闘後)


「アカマ...」

 アカマ?僕か!慣れなそうだなこの名前。声のほうに向いて

「ラクネ~ってそいつ!?思いっきり剣で貫いて...」

「そう見えた?」


 貫かれたと思ったその人は糸で縛られているが出血無く転がっていた。

 ラクネの目をよく見ると不思議な模様が浮かんでいた。


「幻想の魔眼...?か」

「知ってるの?」

「まぁ。けど、今はこいつについて聞きたい。」

「......わかった。魔眼で【この人戦えなくなる】って辺りに」

「で、こいつ自体は?」

 幻想の魔眼は可能性を幻として見せる。ただし、その可能性はそれぞれの思考による。先の戦いでは【剣士が戦えなくなる】という可能性を多少なり僕と魔法使いは感じており、剣士が戦闘不能になる幻を見せられていた。だが幻つまり剣士本人は戦うことだけ考え向かってくるはず。それをどう対処したか聞いた。


「勘違いすんなよ!ただ罠にかかって縛られただけだ!」


 なぜか必死になっている声が...こいつの目、『魅了』の魔法 ―― 恐れや恐怖などといった感情を増減させる。但し、術者と対象の間でのみ有効である。〈魔法の知識〉より一部抜粋 ―― がかかっているようだ。信頼関係というのは恐れがない状態。それを強制的に作る魔法か。そして前にかかった魅了より倍ほどの魔力を使うことで上書きが可能であると...


「あ、え、い、う、え、」


...気分がよくないな。まぁでもこれで魅了を切れば、

「...?うーーん...」

「一緒にいた魔法使いについて答えられる?」

「ん?...そうだ!やつ!エイデンとか言ったな、急に俺の目の前に現れ...でもそんときは数年来の友達のように思ったけど?...手伝ってほしいっていうからここまできた!」


 はっきりしないが嘘もないだろう。でも、魔王の手下ならほかに仲間いるだろうになんで魅了で

「蜘蛛!!!!!」


 蜘蛛が苦手すぎて気絶したのか。幻想の魔眼は可能性なので齟齬が出るがその通りになることもある。つまりは本人が蜘蛛を目の前にして気絶し戦えなくなることもある。


「ラクネ、帰ろうか?」

「...うん」



2024年4月13日 夜

 剣士は「こんな飯よく飽きねえな」とか言いながら完食し「疲れたから寝るわ」と勝手にベッドで寝た。悪い言い方で、何も考えてなさそう。


「さて、ラクネ」

 ビクとし下を向いている感じがする。感じがするってのは......そう!見たら失礼だと...って、心に嘘ついてどうすんだ。それよりも

「ごめん!あの魔法使い逃がしたことで、報復が来るかもしれない!だから森から出てほしい!」

「ぇ?......あ、えっと...行く当てない...」

「んー...」

 こんな暮らしだから察していたが...でも、どうしようか。連れていきたい気持ちはあるけど

「...一緒、嫌?」


「...そんなことないよ?」


「ずっと空みてる...」

「違うよ」

「ならこたえて。」


「...えっと、ね

 ...だって...それ


  ...下半身だし

   ...見ないほうがいいかな

    ...って」


 ラクネは顔が赤くなってる気がする。気がするっていうのは...まぁ、うん






「へんたい...」






「...返す言葉がありません。申し訳ないとほんと心から思っています。」

 目隠しされたへんたいは椅子に括り付けられ、ラクネは編み物をしている。


「...ついてく」

「え?」

「旅でる...違う?」

「危ないからだめ。」

「しってる」

「今まで以上に貧しい暮らしになるかもよ。」

「アカマがいる」

「本当なにが起こるかわからないよ!」

「私嫌い?」

 そんなこと言わないでくれよ。

「...わかった、連れて行くよ」

 視界と行動が自由になる。


 今日はとてもいい日だ。

 張っていた糸が弧を描いていた。




2024年4月14日 早朝

「アカマ!人!」

「...ん、!ほんとか!」

 剣士も起こしながら素早く準備し、せかせか人のもとへ向かった。ちなみに昨日の夜ラクネが編んでいたのは蜘蛛の足ごと下半身を覆えるスカートみたいな衣服であり、今日はそれを履いていた。




「もちろん、大丈夫ですよ。」

 勇者風優しそうないけ好かない男と数人がおり、同行していいか聞いたら許可してくれた。商人の護衛を任され、ついでに通り道にあるここの聖剣を見に来たそう...持っていないのは聖剣の意志か?


 森の外まで行くと馬車が止めてあり馬が何か食べていた。勇者風リーダーが

「僕はトラス・トートといいます。このパーティのリーダーをしています。いずれ魔王を倒します。」

 と自己紹介をはじめ、続いて隣の魔法使いっぽい女が

「ちょっと、そんな丁寧じゃなくていいって...あたしはサスピよ」

 続いて武道着男と修道服女が

「俺はスラップ」「あいむ エンザイア!」


 自己紹介しないわけにいかないだろう。だが転生者と訳あり女子と魔王の手下に洗脳されたやつ...。そのため、あらかじめ示し合わせ

「僕はアカマ、旅人だ。魔王の手下に襲われ遭難した」

「ラクネです...アカマと旅です...」

「グレスライブンだ。長いからグレスで構わない。こいつらの護衛として雇われた」

 ラクネは僕と初めて会った時のように、幻想の魔眼で周囲に【ラクネは普通の人】と認識させている。



 同行する云々説明し、

「そしたら、出発してよろしいですかトラスさん?馬たちも嘶いています。今日の夜に到着する予定なので食料もないですし」

 商人が言った。先頭の馬車にトラス、スラップ、グレスと商人。その後ろ2台目に商品。最後尾の馬車は長旅のため食料と、水の魔法から飲む水はまずいらしく特に馬が飲まないので水が積んであった。その空いたところに僕とラクネ、サスピ、エンザイアが乗った。


 出発し森から遠ざかっていきラクネは悲しそうな目だった。手を握ると

「アカマ...うん、大丈夫」

 と握り返してくれ

「あたしの前でいちゃつくのやめてくんない?イラつくんだけど?」

「サスピさん?セリフがバッドです!バッドメーンです」

「いろいろおかしいし、バッドメーンってなによ」


 感傷に浸っていたのにそんないちゃついて...ついて...。まぁいい、不思議なやり取りの中お願いする。

「不快に思わせたのは申し訳ない。組み分けのときにも言ったけど、魔法を教えてほしい。お願いできる?」

「ほんとトラスってお人好しよね。こんな素性の知れないのを...まぁいいわよ」

「ありがとう。そしたら...まずは使える魔法とか教えたらいい?」

「まずは適性を見るわ。魔法使えるのね?独学?」

「えっとそうなるかな」

「そう、別にいいわ。両手を出して」

「はい、どうぞ」

 サスピは手のひらを合わせるようにすると、外部から体内へ魔力が流れる感じがする。

「ん?んん?んんん...?」

「どう?」

「は?あっコホン、これ魔力を送った反応から診断するのよ。帰ってくる魔力を感じ方でね。でも...んん...」

 少し心当たりがある。

「もしかして、普通魔法を使った後って体内の魔力減る?」

「は~あ?!?!?!?!?!?!?」



「サスピさん?モウマンタイですか?」

「どこの言葉よ...大声だして悪かったわね。でも......そうねもう一度手を出してくれるかしら?」

「?どぞ」

 もう一度手を合わせる。魔力が量を変えながら入ってくる...

「あんたが言ったことが本当なら、ヨシーネ族かしら」

「ヨシーネ?」

「詳しいことはわかってないらしいけど...赤髪、赤い眼、無限に思える膨大な魔力、相当昔に滅ぼされたということが教科し...資料にあるのよね」

 無限に思える膨大な魔力か。

「ほかにも特別な一族いるわ。けど、体内の魔力に関する記述はそのヨシーネ族と魔力が流れないナイヤジ族しかない。よってヨシーネ族かしらってことね」


 と会話していたら馬車が止まった。この世界の端についたとのこと。降りて実際見ると、なんていうか周囲の景色は変わらないが...心地の良い悪夢を見ている?はいて満腹になる?よくわからない。

 サスピは魔法を唱え始めた。始めに全員が入るよう足元に魔法陣 ―― 《球》状の《空間》を作り、《空気》を生み出し《運動》の力を中心から徐々に弱くする.他空間を安定させる魔法を... ―― が展開された。宇宙ステーションの中みたい。だが〈魔法の知識〉で新たなものを一気に覚え頭が痛い。

「ここより___」

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2024年4月14日

3 3.1 3.14 3.141 3.1416

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2024年4月14日

3.141 3.1415 3.14159 3.141592 3.1415926 3.14159265 3.141592653 3.1415926535 3.14159265359

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2024年4月14日

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2024年4月14日

3.141592653 3.1415926535 3.14159265358 3.141592653589 3.1415926535897 3.14159265358979 3.141592653589793 3.1415926535897932 3.14159265358979323 3.141592653589793238 3.1415926535897932384 3.14159265358979323846 3.141592653589793238462 3.1415926535897932384626 3.14159265358979323846264 3.141592653589793238462643 3.1415926535897932384626433 3.14159265358979323846264338 3.141592653589793238462643383 3.1415926535897932384626433832 3.14159265358979323846264338328

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2024年4月14日? 夕


 ......。

「!アカマ!よかった...!」

 ラクネ。

「水、飲んで」

 ...。

「はい、ごはん」

[食器が落ちる]

「力ない?...口開けて?」

 ...!味!...!?

 味覚が!?香りもする!?

「なに!?!?...?」

「アカマ?どうしたの...?」

「...ラクネか......うん。ありがとう。」

 脳に衝撃が走り意識がはっきりした。ごはんを食べることは意外と知覚を使う。の後だと結構な気付けになる。


「あかまサン?あーゆーおーけ?」

「えーーーーーーーーと、エンザイ

「エンザイですよ!」

「あぁ、申し訳ない。君が治療かなにかを?」

「ハイ!犠牲なき献身です!」

「......魔法?」

「まほーじゃなーい。ゴッドのご加護!ゴー!ごー!ー!」

 よくわからないが...だが魔法とは別の力があるのだろう。裏付けるのは世界転移にまつわる魔法が知識にあり治療に関係しそうな知識がないこと。気絶中でも経験していれば〈魔法の知識〉が作用するし経験してなければ覚えない。


 最近、思考がよく回り、出会いがあり、転生してからずっと楽しい。


「ラクネ?ここはどこでどういう状況?」

「世界転移して、端から離れて、アカマの看病」

 それは謝らなきゃいけないな。

「そして...」

「そして?」

「商人、食べられた...」

「oh....それは魔物に襲われたとか?」

「ちがう...遺体が食べられた...」

 唾をのんだ音が大きく聞こえた。


「血だらけの剣があった...」

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