第23話

どうしてこうなった?俺は今この現状に理解が追いついていない。放課後になり俺たちは今ショッピングモールに来ている。ちなみにメンバーはというと俺の長谷部さんの二人だけである。なぜこうなったのか、俺はつい先ほどの会話を思い出す。





「だって私たちってそこまで仲良くないでしょ?だからこれを気にみんなで親睦を深めようよ!」


長谷部さんは嬉しそうにそう提案する。それに対して最初に反応したのは神崎さんだった。


「あたし今日は部活あるから買い物には行けないの」


神崎さんはやや申し訳なさそうに手を合わせて謝罪をするとそれに便乗してか亮まで「俺も今日は部活だから無理だな。だから二人で楽しんできてくれ」と悪い顔をしながら俺に言ってくる。神崎さんも亮の企に気づいたのか「そうだね〜。せっかくなら二人で行って来なよ」とニヤニヤしながらこちらを見てくる。


「いやいや、二人とも行けないなら別の日にすれば良いじゃん」


俺がそういうもの二人から「いいからいいから」と促されるようにして買い物をすることが決まってしまった。確かに普段から長谷部さんと買い物をすることはあるが女装せず青葉遥の姿でとなると少し緊張する。俺が嫌そうにするもどうやら長谷部さんもノリノリになってしまっているため俺一人ではこの三人を止めることはできない。こうして俺と長谷部さんという二人で買い物に行くことが決まった。





ショッピングモールに着くなり俺たちはすぐさま服屋へと向かう。正直俺は男ものの服にこだわりはないため適当に無地の白いTシャツで構わないのだが、長谷部さんに「それじゃあダメだよ」と言われてしまったため渋々いろんな服を見て回っている。


「んー、わからん。どれも同じに見える」


いろいろな服を眺めながら歩いているがどれもピンと来ないしどれも同じに見える。俺は服を見ながら適当に歩いていると女性用売り場のところまで来てしまった。


「お、これ良いな。かわいいし着てみたいな」


俺は一着の服を手に取ると鏡の前で自分に合わせてみる。見た目もかわいく色も好みなため正直今すぐにでも買いに行きたい。しかし、今は遥の姿であり、長谷部さんも一緒にいる。今はどこか別のところにいるとはいえこんなところを見られたら流石にまずい。俺は次の休みにこれを買おうと決意するとまたあった場所に戻す。


「あっ」


俺が服を戻しに来るとそこになぜか長谷部さんが立っており、俺が手に取った服と同じものを眺めていた。長谷部さんは俺の声に気づいたのか見ていた服から俺の方へと目を向けるとその目はやがて俺が手に持っていた服へと向けられる。


「いや、違くてこれはその…」


俺がどうにかこうにか言い訳を考えていると長谷部さんはポカンとした顔のまま俺の顔と服とを交互に見る。これは本当にまずい。いつかは女装していたことを話そうと思っていたが今ここで打ち明けるのはさすがにやばい。だってほら、長谷部さんの顔口が空いたまま塞がってないもん。目だって今まで見たことないくらい開いてるし、早く適当な言い訳を考えなくては。


「こ、これ妹にどうかなって思ってさ…。別に俺が着るわけじゃないぞ?妹が気に入りそうな服だったからさついでに取っちゃった的な?とにかくそういうのじゃないから」


俺が必死に言い訳をしていると長谷部さんの顔に徐々にいつもの表情が戻っていく。どうやら納得してくれたようだ。いや、きっと無理矢理納得したんだろうな、そりゃまさかクラスメイトの男子が女装してるなんて普通考えないもんな。


「う、うん、そんだよね。妹さんと仲良いんだね」


「そうなんだよ、俺と妹は結構仲良くてな、よく一緒に買い物とかするんだよ」


うん、嘘は言ってないよね。妹とはそこそこ仲はいいし、買い物だって良くするもん。そう、この服だって別に俺のためじゃなくて妹のために買おうかなって思ってたし。うんうん。俺が自分に言い訳をする中長谷部さんはややぎこちない笑顔をすると自分を納得させるかのように口に出す。やめてくれ、そんな顔で俺を見ないでくれ、恥ずかしさで死にそうだ。俺はすぐさま手に持っていた服をもとの場所に戻すと適当なTシャツを二、三着持ってレジへと向かう。会計を終えると長谷部さんと共に店を後にした。あーあ、あの服本当は欲しかったけどさすがに長谷部さんに見られたあとだと買いずらいよな。せっかくかわいかったのにな。





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