第20話
俺たちがメンバーが足りないことに悩んでいると声をかけてくる人物がいた。俺たちは同時にその声がした方向を向くと、そこには長谷部さんと神崎さんの姿があった。
「お、春奈ちゃんもしかして俺たちと組んでくれるの?」
「うん、私たちも二人しかいなかったし良かったらどうかなって」
正直ここで長谷部さんと組むのはリスクがある。もしかしたらこれを気にユナが俺であることに気づくかもしれない。しかし、長谷部さんと組めるのは正直嬉しい。むしろ長谷部さんが他の男子たちと組むなんてことになったら想像するだけで嫉妬でどうにかなりそうだ。あれ?俺ってこんなに嫉妬深かったっけ?人を好きになるってこういうことなのか…。俺は長谷部さんの後ろに立つ神崎さんに目を向ける。すると神崎さんも俺の視線に気づいたのかこちらを見て肩をすくめる。どうやら俺たちと組むと言い出したのは神崎さんではないらしい。ということは長谷部さんから言い出したことなのか。長谷部さんは学内でもそのかわいい見た目からかなり人気があるが男子とはあまり関わることの少ない人だった。基本周囲には女子が多く長谷部さん本人も男子を避けているような素振りをしている。そのため男子たちの中では長谷部さんとは無理に関わるのではなく遠くから見守るというスタンスが暗黙の内に決められていることだった。そのため今この状況を見ている他の生徒たちはかなり驚いているだろう。実際ほとんどの生徒が会話をやめこちらをただ眺めている。ちなみに神崎さんはというと男子生徒ともちょくちょく話すことはあるが二言三言話す程度。そのため神崎さんと喋れたものはその日一日幸運があるという意味のわからない噂まである。やはり美人というものは何というかいろいろ大変だな。俺はこの姿で目立つのはあまり好きではないためなるべく他の生徒に見られないよう亮の体で隠れるようにしているとその間も亮と長谷部さんの会話は続いている。やがて話し合いが終わったのか亮が一言「あんな美人二人と組めるなんて最高の修学旅行になりそうだな」とガッツポーズをする。俺はそれに苦笑いをしながら返す事しかできなかった。なぜ長谷部さんは俺たちと組もうとしたのか、おそらくだが亮が目的だったのではないか?亮はクラス内でも俺と違い人気があり、その容姿からは女子生徒からかなり好意を抱かれてる。そのため長谷部さんもきっと亮が狙いだったんだろう。俺は長谷部さんと組めて嬉しい気持ちと亮のことが憎たらしい気持ちでなんだかモヤモヤする。少し前の俺だったらこんな気持ちにはならなかったのかもしれない。これも多分あの時、好きであることに気づいてしまった弊害だろう。こうして俺、亮、長谷部さん、神崎さんの四人のグループが完成した。ちなみに授業が終わった後の話だが亮は他の男子生徒からかなり絡まれており長谷部さんと神崎さんも女子生徒からいろいろ質問攻めされたそうな。俺?俺はというと特に誰からも話しかけられることはなかったが物凄い形相でいろんな人から睨まれてたよ。亮は良くても俺はダメってことね。どうして俺はここまで嫌われているのかね、他人には何も迷惑をかけていないというのに。友達が少ないだけでここまで卑下されるとは世の中何とも世知辛いものだ。
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