第14話

俺たちはご飯を食べ終えると荷物の置いてあるところに戻り腰を下ろす。そして四人で会話に花を咲かせる。


「おいしかったね〜。ちょっと食べすぎちゃったよ〜」


「そうだね、確かに春奈は少し食べ過ぎだったんじゃない?ほらこことか少し出てきてるんじゃないの」


「ちょ、やめ、くすぐったいよぉ〜」


神崎さんは長谷部さんの横腹をつまむとくすぐったかったらしく長谷部さんがケラケラと笑っている。長谷部さんは焼きそばを食べ終わると「せっかくここまで来たんだからもっといろいろ食べてみたい!」などと言ってあの後にイカ焼きとかき氷を追加していたのだ。俺はそんな二人を見てくすくす笑っていると長谷部さんがこちらに振り向き両手の指をわしゃわしゃさせながらこちらに近づいてくる。


「なーに笑ったんじゃあー。これでもくらえ〜」


長谷部さんはその掛け声とともに俺の量の脇腹をくすぐり始めた。俺はそれをひーひーと笑いながら転がり回る。長谷部さんはそんな俺の動きにまたがるような型ちになり「こちょこちょこちょ〜」などと言いながら嬉しそうにくすぐり続ける。やがて満足したのかくすぐる手を止め何かを確認するように両手を眺める。


「ユナって以外と筋肉あるんだね〜。服の上からじゃわからなかったけど身体もがっしりしてるし何か鍛えたりしてるの?」


「「「…」」」


俺たち三人の間に沈黙が走る。長谷部さんは純粋に疑問に思ったのか首を横に傾げながらそんなことを聞いてくる。


「ん?三人ともどうしたの?」


先程までわいわい言っていた俺たち三人が同時に黙り込んでしまった為長谷部さんはまたしても首をかしげる。


「そ、そんなことよりそろそろ暑くなってきたし海の方いかない?」


「あ、良いですね!晴花もそろそろは入りたいなーって思ってたんですよ‼︎」


誤魔化すように神崎さんがそう言うとそれに乗っかるように晴花が同意する。長谷部さんもちょうど海に入りたかった気分だったのか「いきたい!いきたい!」などと言い俺の上から身体をどけると一人で海の方に小走りで走っていく。俺たち三人はそんか長谷部さんの姿を見て同時にため息が出る。


「遥くん?」

「お兄…何やってるのさ」


神崎さんと晴花はジト目で俺を見つめてくる。だって今のは仕方なかったじゃないか!完全に不可抗力であって俺何も悪くないよね⁉︎なんて言い訳したいところだったが二人のその目が俺に言い訳を許してくれない。俺は素直に「ごめんなさい。これからは気をつけます」と謝り、二人はそれに頷く。やがて、先に海の方に走っていた長谷部さんが大きな声で「三人ともはやく〜」と呼ぶ声で俺は何事もなかったかのように長谷部さんのもとに急いで向かったが、その間も俺の背中には二人の視線がとげのように刺さっていたかった。




どれだけ時間が経ったのか、先程まで上にあった太陽は今じゃ海の地平線へと沈みかけている。あの後俺たちは砂でお城を作ったり、スイカ割りをしたり、俺以外で水泳勝負をしたりとかなり海を満喫していた。俺たちは自分たちは持ってきた荷物をまとめると駐車場へと向かう。そこにはすでに直春さんは待っており俺たちは車に荷物を載せるとそのまま車に乗り込む。車が発車すると俺たちは直春さんに今日どんなことをして遊んだのか、どんなものを食べたのかなど楽しく説明した。そしてその話が終わると次はどこで遊ぶのかという話で盛り上がった。


「今日は楽しかったね!!次はどこであそぼっか?」


「遊ぶのはいいけど春奈宿題はちゃんとやってるの?」


「あ、いやー、うん、そこそこかなー」


さっきまであんなに楽しそうにしていた長谷部さんは宿題の話になったとたん目をそらし両の人差し指をつんつんとくっつける。


「だーー!せっかく楽しい話してるのに嫌なこと思い出させないでよー!」


長谷部さんは開き直ったのか座った状態で軽く暴れだす。それに対して横で運転していた直春さんが「ばか、暴れるな」と言い長谷部さんはしゅんとした顔をしてしまう。そんな長谷部さんに晴花が一つ提案をした。


「それなら次は来週ある花火大会なんてどうですか?」


それを聞いた長谷部さんは元気を取り戻したのか嬉しそうにこちらに振り向く。


「いいね!花火大会みんなで行こうよ!!」


長谷部さんは一人テンションがあがったのか花が開花したような満面の笑みで笑う。


「じゃあ来週まで宿題終わらせちゃおうね」


神崎さんもまた満面の笑みでそう応える。それを聞いた長谷部さんは嫌そうな顔をするが、「あたしも手伝ってあげるから」という神崎さんの言葉で「冬雪~」と両手を組み目をきらきらさせながら神崎さんを見つめる。この一瞬だけでも何度も一喜一憂している長谷部さんはやはりかわいいなとそう思った。





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