第10話
俺が後ろを振り向くとそこには短パンにへそまでの長さしかないTシャツを着ていて、髪は金髪で片方をサイドテールにしている白ギャルが立っていた。
「その子嫌がっとるんやからはよ離してあげなよ」
白ギャルがそういうと男はかなり同様をはじめ、俺の手を離した。
「い、いやこれは違くてね…。そう!彼女とは知り合いなんだ、だから部外者の君に少し静かにしてもらえるかな?」
(なーに言ってんだこいつ、どうしたらこんな流れるようにすらすらとうそがつけるんだ)
俺は内心男のうそに感心しつつも少しづつ距離をとる。すると男がそれに気づいたのか又しても俺の腕をつかもうと手を伸ばしてきた。俺はその手を払いのけるとその流れで男の背後へと回る。そして男がこちらに振り返る前に上着の襟を掴んでそのまま頭を強打しないよ腕で支えながら組み倒した。男は何をされたかわからず混乱しており、白ギャルの方はそれを見て感心したように拍手をしている。俺はそのまま男を地面に寝かせると立ち上がり「もう関わってこないでください」と一言いいその場を後に歩き出す。その間も男は何をされたのか理解できておらず「え?は?え?」などと言いながら地面に寝転がっていた。
俺は少しやりすぎたかなと思ったけれどあれ以上付きまとわれたら面倒だったためこれでよかったのだと納得する。
「何今のめっちゃすごいやん!!」
俺が歩き出すとさっきまで少し離れた位置にいた白ギャルは俺の横まで来ると並んで歩きだす。
「そ、そうですか?」
俺は白ギャルのあまりにもの驚きようにやはり少しやりすぎたなと反省する。
「お姉さんほんまかっこよかったは、もしお姉さんが男やったらウチ完全に惚れてたは」
俺はその言葉には乾いた笑いをする。
「ウチいらんことしてもうたかもな」
「いやいや、そんなことないですよ。声かけてくれたのはすごいうれしかったですよ」
俺はふと長谷部さんと女装している時に初めて会った頃を思い出す。そういえばこの前こんなことあったな。なんだか今なら長谷部さんのあの時の気持ちがなんとなくわかったかもしれない。もし自分だけだったらどうにかして穏便に回避しようとしたかもしれないが他の子に手を出すなら容赦しない。そんな感じのことだ。まぁ今回は別に彼女にはなにかつもりはなかったかもしれないけど、この子があの男の人に俺のために手を出しちゃったら大変なことになってたかもしれないからね。
「それにしても東京の男にはろくなやつがおらへんな」
彼女は少し怒ったように頬を膨らませ腕を組む。
「もしかして別のとこらから来たんですか?」
「せやで、ウチは大阪の方から来たんや」
「旅行ですか?」
「ちゃうちゃう、親の都合でこっちに引っ越して来たんや」
「へー、そうなんですね。よろしければこの辺りを案内しましょうか?」
俺が先ほどのお礼も兼ねてそう尋ねると白ギャルは少し残念そうにその申し出を断った。
「ごめんな、それはありがたいんやけど今は少し忙しくてすぐ行かなきゃいけない所があるんや。だから今度会った時にでもお願いするは」
彼女はそう言葉を残して走って去ってしまった。俺はそのまま歩き続け途中で彼女の名前を聞きそびれたことを思い出したが、もう彼女の姿は見えない。まぁ、もし次ぎあうことがあればその時にでも聞けばいいかとそう思った。
今日はなんだかいろいろと面倒なことに巻き込まれて疲れたため早めに家に帰ることにした。元をたどれば面白そうだからと調子に乗った自分が悪いのだがなんだかそれもどうでもいいくらいに疲れてしまった。
俺は家に着くなりすぐに着替えてそのまま洗面所の方へ向かい化粧を落とす。そしてそれが終わると夜ご飯の用意をする。俺の両親は今二人とも海外で仕事をしているため年に数回しか家に帰ってこない。そのためうちでは朝、昼、夜と弁当の準備は俺がやり、洗濯、掃除は妹がやることになっている。ちなみにごみ捨ては交互に行い、買い出しは週に一度二人で行くようにしている。
「今日は疲れたし簡単にオムライスでも作るか」
俺はテキパキと動くと数分でオムライスを二つ作り終える。そして一つにはラップをかけキッチンに置いておき、もう一つは自分で食べる。どうやら妹はまだ外で遊んでいるらしい。うちは両親がいないということで門限などは定められておらず基本自由にしているため妹は一度出かけるとなかなか帰ってこない。本来ならば俺が注意しないといけないところだが、俺も遅くまで遊んでいることもありなかなか強く言えずそれに妹には口うるさくいって嫌われたくないという理由もある。一応遊びに行く場所と帰ってくる時間は連絡してくれているため今のところはこのままでいこうと考えている。
俺はご飯を食べ終えると食器を洗いそのままお風呂へと入る。そしてお風呂から出ると自分の部屋に向かう。そのタイミングで俺のスマホに着信が入る。俺は誰からきたのか確認すると電話に出る。
「もしもし、そっちからかけてくるなんて珍しいな」
「そうかな?それにしても今時間大丈夫だった?」
電話にでると神崎さんはどこか疲れたトーンで話し出す。
「あぁ、ちょうどお風呂からあがったところだったよ。そっちはどこにいるんだ?なんか声が反響してるけど」
「んー?あたしは今お風呂に入ってるところだったよー」
「はぁ⁉おまえなんですお風呂はい入ってるときにかけてくるんだよ!」
「別にいいじゃんこっちは部活で疲れてるんだからさー」
「そういえば今日も試合だったんだろ?結果はどうだったんだ?」
「ぼちぼちかなー、5回戦までは行けたんだけどね、そこで負けちゃったから今年もベスト4どまりかな」
「それは大変だったな。お互い今日は疲れる一日だったな」
「えーなになに、そっちも今日何かあったの?」
俺は余計なことを言ちゃったなと思いつつも今日あったことを全て話した。神崎さんは今じゃ俺の悩みをいろいろ話す程の仲になり今の俺には欠かせない存在だ。今までは女装をしていることは妹と亮しか知らなかったためなかなか相談することができず自分の中で悶々とたまってしまっていた。本当はその二人にも相談したい所だったが妹にはなんだか相談しずらく、亮に限ってはそれを面白がってまともに聞いてくれない。なので神崎さんに女装がばれたときは最悪だと思っていたが今となってはばれて良かったと思うことも多い。
「へー、そんなことがあったんだ」
「あぁ、いくら漫画みたいで面白い展開だからって調子に乗りすぎたよ。少女漫画とかならときめく場面だったかもしれないけど、いざリアルでやられると正直ちょっときつかった…」
「あははは、それは確かに少しいや、かなりいたいかも。でも、その男の人もかわいそうだよね。かわいい子を助けたと思ったらそれが男でしかも、地面に倒されちゃうなんてね」
(そういわれたらなんだか俺がかなり悪いような気がしてきたぞ?確かに俺はかなりかわいいから助けたくなっちゃう気持ちもわからなくはないな。俺って罪な男だぜ)
俺が一人反省会をしていると神崎さんは「そういえば」といい話題を変える。
「ついに明後日だね!!」
「あぁ、そうだな」
その時はもう明後日にまで近づいてきてしまっていた。俺たちは明後日海に行くことになっている。
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