第9話

「へ~、なかなか似合ってるじゃん」


「ユナすごくかわいい‼」


俺が水着に着替え外に出る。するとそこにいた二人にはなかなか好評っだったらしくすごいほめてくれる。俺が今着ている水着はボトムはショートパンツになっておりズボンになっているため履いていて違和感などはなく、首元にはホルターネック部分が見えているものの半袖程の長さのトップスを着ることで上半身の露出がないため俺が男であることはどうやら長谷部さんにはばれていないようだ。


「ね、うまくいったでしょ?」


神崎さんは俺の近くまで来ると嬉しそうにこちらを覗き込む。


「まあね、一時はどうなることかと思たよ。でも神崎さんのおかげで何とか乗り越えられそうだよ。ありがと」


「いえいえ、礼には及びませんって。これからも遥君にはもっと楽しませてもらうんだから」


その笑顔はすごく楽しそうにしているもののその笑顔の裏では次にどんないたずらをするのか考えている顔に違いない。


俺たちはそのままの流れで水着を購入し、店の外に出る。その後、さまざまなお店を周り買い物などをしていたらいつしか日が沈みかけるほどに時間が経過していた。


「やば!私そろそろ帰らないとママに怒られちゃう!!」


長谷部さんは慌てた様子でデパートからでると俺と神崎さんはそのあとを追いかける。


「春奈の家は門限厳しいからね~。この前も五分遅れただけで晩ご飯抜きにされたんだっけ?」


「そうなの、私のママたいていのことは許してくれるのに門限にだけは厳しいんだよ」


駅近くのまで付くと俺は足を止め二人を見送るようなかたちで言葉をかける。


「それじゃあまた明日ね」


俺が手を振りながらそう言うと長谷部さんは歩く足を止め、首をかしげるようにしてこちらを見つめてきた。


「また明日ねって、ユナ私たちとは別の学校じゃない?」


しまった、俺は長谷部さんにそう指摘されぼろが出てしまったことに気づく。


(どうしようこのままだと俺が同じ学校のやつだってばれてしまう。それだけならまだしも、男だってことがばれたら…)


「ほら、また明日通話で話そうねってことだよ!最近会えない日は三人で通話してるからそれでまた明日ねってことなんだよ」


「あー、なるほど確かに。それじゃあまた明日、たくさん通話しようね」


長谷部さんは納得し、こちらに手を振り返してそのまま駅の方へと駆け足で向かった。神崎さんはそれを追いかけるように長谷部さんの後ろをついていく。


神崎さんのフォローのおかげで何とかごまかすことには成功できた。ほんとありがとう神崎さん。今までいたずらばっかりしてくる人だって思ってたけど、俺の正体を知ってるのが神崎さんでよかったって今初めて感じたよ。本当にありがとう。俺は神崎さんのほうに手を合わせ小さくてお辞儀をするとタイミング良く振り返った神崎さんと目が合い、指を一本たててウィンクをされた。それはまるで「貸し一だぞ」と言わんばかりの表情で俺はそれに頷く。


こうして今回は少しトラブルはありつつも無事終えることができた。





やがて数週間が過ぎ、学校は夏休みへと突入した。ちなみにその間も長谷部さんと神崎さんと出かけたりしていたが、夏休みに入ると同時に神崎さんの部活動が忙しくなったらしくここ最近は長谷部さんと神崎さんとは会えずROINでのやり取りのみ行っている。


そんな今日この頃だが俺はせっかくの夏休みということもあり久々に女装して一人散歩をしていた。最近はずっと二人と一緒に遊んでいたため一人で散歩する時間が取れなかので今日は一人でのんびりすることにした。


やはり一人でいるというのはなんか落ち着くな。別に二人がいる時が嫌なわけではなくむしろ楽しいのだが、いかんせん長谷部さんがいると女装がばれるんじゃないかとひやひやするし、神崎さんに対してはずっと俺のことをからかってくるため家に着く頃には疲れてしまうことが多い。それに対して一人でいるとそんな心配がないため気楽に過ごすことができるのだ。俺がそんなことを考えながら歩いていると後ろから声をかけられた。


「ちょっと君かわいいね。よかったら俺たちといいことしない?」


俺が後ろを振り返るとチャラそうな男二人組が俺の肩を掴んで声をかけてきた。なんだかこんなこと久しぶりにあったな。今までは長谷部さんと神崎さんがいるせいかとうまきに見られることはあっても誰もしゃべりかけにくることはなかったためこんな風にナンパをされるのは長谷部さんと会った時以来である。まぁ、あの時は長谷部さんがナンパされててそこに後から俺が入り込んだだけなんだけど…。


「なぁお姉さん聞いてる?俺たちと遊ぼって、別に一人で暇してるんだろ?俺たちがいいことしてやるからさ」


俺が沈黙していたためかさっきまで肩をつかんでいた手に徐々に力が入っていく。正直面倒だから男だと明かしてとっとと諦めてもらうか。


「いやおr…」


「ちょっと君たちのその子僕の連れなんだけど何か用かな?」


俺が男であることを言おうとしたらその言葉を遮るように男たちの後方から声がした。男たちは振り返り俺も二人の肩の隙間から確認するとそこにはかなりイケメンの男の人がたっていた。


(おー、なんか面白くなってきたな。ここはあの人に合わせてみるか)


「ちょっと、遅かったじゃない。どこ行ってたのよ?」


俺は二人の男の手を振り払いイケメンの正面に立つ。


「ごめんごめん、少し道に迷っちゃって。待たせちゃったかな?」


「もー、あんたが遅かったせいで変なのに絡まれちゃったじゃんか」


俺とイケメンの男は二人に見せつけるようにして軽くいちゃいちゃを始める。俺はこの漫画みたいな展開になり面白くなってきたためさらに腕につかまり男たちの反応を伺う。すると男たちは「なんだよ、男連れかよ」「せっかくいい女見つけたのに」とぐちぐち言いながらもどこかへ去ってしまった。俺は内心殴り合いとかに発展すれば面白かったのにと少しもの足りなかった所もあったが、まぁ仕方ないかと諦めイケメンから手を離す。


「危ないところを助けていただきありがとうございました」


「いえいえ、気にしないで下さい。困った時はお互い様ですから」


「本当にありがとうございます。何かお礼でも出来たらいいんですけど今はなに持ち合わせていないためもしまた会う機会がありましたらその時は必ずお礼しますね」


(ほんとは別にお礼なんてするつもりないけどこれだけ言っておけば別に問題ないだろ。それに次ぎ会う機会なんてもうないだろうしここはお茶を濁してとっととずらかるか)


俺はお礼を言うとそそくさと逃げるように歩き出そうとしたがいきなり手をつかまれてしまい逃げれなくなってしまった。


「えーっと、なにか?」


「お礼は結構ですのでもしこの後何もなければ少しお話していきませんか?」


イケメンは俺の手を握りしめ俺の目を見ながらそんなことを言ってくる。正直俺にそっちの気はないため男にこんなことを言われても困る。というかこいつ最初からこれが目的だったんじゃないだろうな?いや、絶対そうだろ。こいつ何でも漫画みたいにうまくいくと思うなよ。


「すみません。この後は用事があるためそういうのはちょっと…」


「ならせめて連絡先だけでも交換しませんか?」


「わたし実は携帯持ってないんですよー」


「いやいや、そんな人いるわけないじゃないですか。そんなに僕と連絡先交換するの嫌なんですか?」


「いえ、いやというわけではー…」


いや、何なんだこいつうっとおしすぎるだろ。こんだけことはってるんだから嫌がってることに気づけよ。これなら面白がってこんな奴にのるんじゃなかった。


イケメンは俺がいくら拒んでも頑なに俺の手を離そうとしないもうどうすれば…。


「ちょっと、その子さっきから嫌がってんちゃうの?」


またしてもそんな声が俺の後ろから聞こえた。


(あーもう何なんだよさっきから次から次へと今度はどんな奴が来たんだ?)


俺はあきれながらも後ろを振り向き、声の主を確認する。





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