第8話
昼休憩が終わり俺と神崎さんは別々に教室へと戻った。これはなるべく俺たちが一緒にいるところを見られたくないという俺の意見である。神崎さんも朝友達に根掘り葉掘り聞かれたらしくその意見に賛同してくれた。しかし、俺が女子と話してたのが相当気に食わなかったのか、はたまた神崎さんが男子と話してるのが珍しかったのか、俺たち二人のことはしばらく話題の中心になっていた。ところがどこかから「ただ先生に頼まれごとをされただけ」という噂が広がりみんなもそのことに納得していき、この話題は二日ほどでなくなった。
そしてその週の日曜日俺、長谷部さん、神崎さんはまたしてもデパートで買い物をすることになり俺たちは今水着売り場へと足を運んでいた。なんでも長谷部さんが「もうすぐ夏休みだし水着でも買いに行こう」と言い出し最初は渋っていた俺だが神崎さんからの後押しがあり、多数決で一緒に買いに行くことになった。
神崎さん、あなたの協力するというあの言葉はいったい何だったんですかね…。
俺たちは水着売り場につくなり長谷部さんがファッションショーのように次々といろんな水着を試着し始め俺と神崎さんは観客のようにそれを見ていた。正直いくら俺がかわいい女装をしているとはいえ、なんだか何か悪いことをしているような気分がして全然落ち着けなかった。
「いいご身分ね、こんなかわいい子の水着姿を堪能できるなんて」
神崎さんはそんな風にからかってくるがこっちはそれどころじゃない
「ばか、こっちは全然それどころじゃないっつうの。いくら女装しているとはいえ中身は男ってことが今ばれたら俺は女装しているうえに女性用売り場で女子の水着見ているど変態になっちまうんだぞ」
「大丈夫だよ、十分かわいいし誰も男だなんて思わないって。そんなにきょろきょろしてるとよけいめだっちゃうよ」
神崎さんは終始楽しそうにニヤニヤしながらこちらを見ている。この人もしかして俺のこの状況を楽しんでるんじゃないのか?この人こういうとこあるからな。
「でもこの後俺も水着きるんだよな?さすがに無理だぜ、そこまでしたらばれちゃうって。ちゃんと協力してくれるんだよな?」
「もちろん、ちゃんとかわいいの用意してるから」
俺はずっとニヤニヤしている神崎さんを見てすごく心配になる。あー、どうかばれませんようにと祈るように天を仰いだ。
二人でそんな会話をしているとどうやら長谷部さんの着替えが終わったらしく更衣室から出てくる。
「じゃーん、これなんてどうかな?私的には一番いいと思うんだけど」
それはは三角ビキニに上下ともにたくさんのフリルがついたオレンジ色の水着だった。確かにこの水着は長谷部さんのイメージにぴったり合うし、よく育った体が強調されていてとてもえro…。
「いいんじゃない。春奈の髪色にもあってるし、これなら男どもをいちころにできるんじゃない?ユナもそう思うでしょ?」
おいおいなんで俺に振るんだよこいつ絶対この状況を楽しんでるだろ。神崎さんはさっきとは比べ物にならないほど楽しそうにこちらを見ている。
「そうだね、わたしも似合ってると思うよ。春奈の明るい感じが出てて今までで一番いいと思う」
「じゃあ、これで決まりだね。次は冬雪の水着選ぼっか」
「いやいいよ、あたしは去年の水着があるからさ。それよりもユナの水着を選ぼうよ」
こいつ、さっきから俺で遊んでるんだろ。いったいどうすればいいんだ、ここは俺も水着持ってるっていてごまかすか?それとも適当に選んで試着するべきか?っていやいや、さすがに水着はばれるだろ。まじでどうすればいいんだ…。
「いや~、わたしも去年の水着があるから…」
「えー、二人とも買わないの?私だけ買うなんてつまらないよ。それに私二人の水着姿見たかったのに」
「あたしのは毎年見てるじゃない、そんなに見たいならユナに水着着てもらったら」
「え、いや、、それはちょっと…」
「いいでしょユナお願い」
長谷部さんは上目遣いをしながらこちらに接近して来る。こんなかわいくおねだりされたら断りにくい、しかしここで水着を着てしまえば男だとばれてしまういったいどうすれば…俺は助けを求めるように神崎さんのほうを見る。すると神崎さんはすでに水着を手に持っておりこちらに近づいてくる。おいおい噓だろこいつまさか…。
「これとか似合うんじゃないかな。ちょっと来てみてよ」
神崎さんは手に持っていた水着を俺へと手渡す。こいつ本当に助ける気あるのか?完全に楽しんでるだけじゃないか。くそ、考えろ俺…。
俺がこの状況をどうにかしようと考えていると神崎さんは俺の耳元まで来ると小声で話す。
「大丈夫、あたしを信じて」
神崎さんはそう言うと俺の背中を押すようにして更衣室のほうへと進んでいく。俺は流されるようにして更衣室の中へと入れられてしまった。
正直水着なんて着たくはないがこれ以上どうにもできない。それに神崎さんは協力してくれるって言ったんだもう信じてみるしかない。俺は決死の覚悟で渡された水着へと着替えた。
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