第4話

「もしかして…青葉君だよね…?」


その言葉に俺は呆然とする。男とばれただけならまだしも俺が女装していることがばれるのはやばい、それがクラスメイトならなおさらだ。


「え、うん…、わたしの名字は青葉だけど…」


(ここはとにかくごまかさなくては。今ならまだ人違いで何とかなるかもしれない)


俺は生まれて初めての危機に直面している。とにかく考えるんだ、今ここでばれたら俺は学校で女装してクラスメイトの女子と遊んでいた変態というレッテルを貼られてしまう…。


「え、いや違くて、クラスメイトの青葉遥君だよね?」


「いや、人違いですよー。第一わたしは女ですしそんな男の子とは無関係でー」


「そう?でも最初にあったときあたしのことに気づいてたよね?だって目そらしてたし」


「あれはーちょっと人と話のが苦手でー…」


「ふ~んそれならあたしにも考えがあるんだけど」


神崎さんはいたずらに俺を見つめる。


「あとで春奈もつれて水着売り場に行こっか。ユナちゃんかわいいからきっとビキニとか似合うと思うんだよね~」


「すみませんでした」


「認めるんだ〜」


神崎さんはまたしてもいたずらに笑いかける。


「いや、でもぼく?わたし?はそのはるか君とは無関係なので…」


「往生際が悪いんじゃない?そんなこと言うなら頭についてるウィッグ外しちゃうよ?」


「はい、ほんとすみません。それも認めるのでこれ以上は勘弁して下さい」


俺は神崎さんに女装して街に出かけていたことやその時にたまたま長谷部さんと出会いナンパされているところに仲裁に入ったこと、その後二人でお茶したことなど全て正直に話した。


「そうだったんだ。ナンパされてるところをね…」


「はい、とは言いましても俺は何もできなかったんですけどね…」


「それもそうだよ。だって春奈は今では守ってあげたくなるくらいふわふわしててかわいいけど中学の頃までは柔道で都大会までいったことあるんだから」


「それはお強いことで…」


俺たちがそんな会話をしていると「ごめーん少し混んでて遅くなっちゃった」と言い長谷部さんが戻ってきた。


「なんだか二人とも仲良くなった?」


長谷部さんは嬉しそうな顔をしながら神崎さんに抱きつく。神崎さんはそれがさも当たり前かのように話を続ける。


「二人なら絶対相性言いて思ってたんだよね~。最初はなんだか二人ともそっけなかったのに私がいない間にどんなこと話してたの?」


「大した話はしてないよ。しいて言うならユナちゃんと秘密を共有しあってたの」


「え~いいな~、私にもユナちゃんの秘密教えてよ~」


「ダーメ。これはあたしとユナちゃんの友情の証なんだから」


長谷部さんは神崎さんに頬っぺをこすらせ、神崎さんはニヤニヤしながら俺を見つめてくる。それはまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように笑顔だ。


(こいつ何が秘密を共有だ、一方的にこっちのことを探ってきただけで、それに友情の証っとか言ってるがこれじゃあただ脅されてるだけじゃないか)


神崎さんには女装していたことがばれてっしまったが本人はあまり言いふらすつもりもなさそうだしもう終わったことだとあきらめるしかない。それに長谷部さんがあんなに喜んでくれているならなんだか悪くない気がしてきた。俺は今回のことはあきらめ未来の自分に託すことにした。





俺たちは映画館をでると今度は別のフロアにある洋服屋に来ていた。俺はつくなりかわいい服を探しそれを眺め始め、ほかの二人も自分が欲しい服を見て回り最後に自分で決めた服を試着して見せ合いっこするという流れになった。


俺がいろんな服を眺めながら考えていると肩をたたかれ後ろを振り向くとそこには神崎さんが立っていた。


「そっちのよりこっちの組み合わせのほうがいいんじゃない?」


神崎さんは俺が見ていた服の中に自分が持ってきた服をひょいとかぶせるように置いく。


「確かにこっちのほうがかわいいかも…」


そんな風に考えていると神崎さんは俺の横顔をまじまじと眺めてくる。


「えっと…なんですか?」


「うんん、なんかこう見るとすごくかわいいな~って思って。確かにこれじゃあ男の子だなんて全く思わないよ」


「ほんと!?正直俺も結構かわいい自信あるんだよね。とくにこのコーデとかけっこう自信作で、それにこの髪型も朝早起きしてセットしてきて、それでそれで…」


俺が夢中になって話していると神崎さんは子供みたいに無邪気に笑う。


「ふふふ、大丈夫?けっこう素が出ちゃってるよ?」


「あっ、今のはその、、見なかったことに…」


「青葉君ってやっぱり面白いね。学校ではあんまり話してるところ見たことないけどこっちが素だったりするの?」


「いや、そんなことないけど…この姿だと自分に自信があるから話せるだけで学校での方が本当の俺だよ」


「そうなの?でも学校での青葉君もかっこいいと思うよ。顔もそこそこ整ってるし勉強もできてスポーツもできる。クールでかっこいいって女子の間では人気もあるよ」


「え?まじで!俺モテてるの⁉ついに俺の時代が来たか!!」


俺は大きくガッツポーズをするとき天を仰ぐように上を向く。


「ねぇ、もし告白とかされたらやっぱり付き合うの?」


その質問には少し悩んだ。たしかに彼女は欲しいけどもし彼女が出来たら趣味である女装ができなくなってしまう。それにもし女装していることを打ち明けてもきもがられて降られるのがおちだ。


「そうだな…多分付き合わないと思う。やっぱり俺は女の子と付き合うよりも女装して遊んでいるほうが好きだからな」


「そっか、確かに彼氏の趣味が女装だったらさすがにひくかも…」


「なんか面と向かっていわれるのはちょっと傷つくな…」


「ごめんごめん、でもあたしはそんなこと思わないよ?青葉君の意見だってちゃんと尊重するよ?」


「というか神崎さんよく俺が女装してることに気づいたよね。男だってことはばれてるんじゃないっかて思ってたけど、まさか俺ってことまで気づいてるなんて思わなかったよ。もしかしたら長谷部さんも気づいてて黙ってるんじゃないかな?」


「そんなことないよ、春奈は気づいてないと思う。それに多分だけどあたし以外が見ても青葉君って気づかないんじゃないかな?」


「え?どうして?」


「それはねー、今は内緒」


神崎さんは人差し指を立てて口元まで持ってくる。その表情はいたずらっ子のように笑っていたがどこか優しく、そしてとてもかわいい笑顔だった。





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