第10話 1階層

大人が20人横になっても満たされるほどの広い階段を私達は下りていった。少し薄暗く心配になってきた。


「・・・先生・・・・ライトの魔法を使ってもいいですか?」


「いえ、ライトの魔法を使わなくてもいいですよ。そろそろ明るくなりますので」


そうすると目の前に光が見えた。それはダンジョン内部に広がる灯りからだった。


私達は大きな広場のような所に着いた。ここから見えるだけでも色んなことが分かる。


ダンジョン内部は石畳に囲われており、人の手によって舗装された通路やいくつかの部屋などがあり、ゲームにいかにも出てきそうなダンジョンの構造になっていた。


環境に関しても地下にいるのにジメジメとした感じではなく、外と同じように空気が綺麗だと思った。


それよりも


「アレス先生、人いませんね。」


ダンジョンの入り口付近にも人は見かけなかったがダンジョン内部にも人がいなかった。


「迷宮ダンジョンは人気ありませんからね。冒険者組合に沢山の冒険者はいましたが、ほとんどは町の外にいる魔物の討伐などの依頼を受けているんですよ。」


「迷宮ダンジョンを攻略するのは危険ですから。物好きでないとわざわざ来ませんよ。」


それもそうか、小説のような物語の世界でもみんなこうして生きているんだから命は大切だもんね。


「では行きましょうか」


私達はダンジョンを進むことにした。


進んでいる内に通路が狭くなってきた。狭くなってきたといっても大人3人が横になったぐらいの幅で高さは3mあるので、魔物が突撃してきても横によけれるスペースがあるので安心した。


いくつもの曲がり角を経て歩いているうちに、ふと気になったことがあった。


「アレス先生、ダンジョンがこうも明るいのって壁が光っているからなんですね。」


最初は気付かなかったがどうやら壁自体が薄っすら光っていることに気付いた。


「そうですね。こういった迷宮ダンジョンは壁が少し発光しているのも特徴ですね。ただ、別の階層では発光していない可能性もあるので注意が必要ですよ。」


「ふん~そうなんですか・・・」


私はいい事を思いついた。


「アレス先生。常に壁が光っているなら壁を削って日常生活でライトの役割になるんじゃないでしょうか。」


アレス先生は少し立ち止まり考え込んだ。


「うん~~~~~確かにいい考えですが難しいと思いますね。私の考えでは、この壁が発光しているのは魔力によって発光しているのですよ。壁を削ったら少しは発光しますが直ぐに光は消えると思いますよ。」


アレス先生はまた考え込んだ。すると少ししてから


「そうですね。やってみないと分かりませんからね。私も少し気になるので削ってみましょうか。」


アレス先生はそういうと風系魔法で小さな渦巻きを指に纏わせた。


「うわーすごい!物凄く回転してる。」


小さな渦巻きなのに風の突風が私の顔に凄い来た。


「この魔法はウィンド・ヴォルテックスという4級魔法に属する魔法です。本来はもっと大きな風の刃の竜巻を高速で回転させ、飛ばして魔物に当てる魔法です。」


確かにあんなに高速で回転している風の刃に当たったらひとたまりもないと思う。


「殺傷力が高い魔法になりますが、こういったように指だけのサイズにすることで色んなことに応用できますよ。」


そう言いなが先生は壁に魔法を当てた。すると壁から手のひらぐらいのサイズの石が無数に落ちた。


先生はいくつかの石を持ち上げて観察し始めた。


「うん~~~やっぱり微妙に魔力が含まれているな。ソニアさんも見てみますか。」


そう言われ先生に渡されたが


「すみませんが私には魔力が含まれているのか分かりません。」


全く魔力を感じないのだ。石に魔力を注いでみても何にも変わらなかった。


「大丈夫ですよ。まだソニアさんは魔法を使い始めたばかりなので落ち込まないでください。」


そうしているうちに石の輝きは無くなって光らなくなった。


「この石に含まれている魔力が無くなったんでしょう。ダンジョンには魔力が満ちていますがそれでも限界がありますからね。」


アレス先生は納得したようにまた歩き出した。


「では先に進みましょうか。」



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