第9話 町
まだ日が昇り始めた頃、私は屋敷の門の前に立っていた。
「ソニアさんおはようございます。早い時間でしたので起きれて安心しましたよ。」
「いえ余り寝付けることができませんでしたので、目が覚めてしまったんです。」
私は魔物との戦闘に不安ではあるが、それよりもこの世界に転生してからまだ屋敷の外に出たことがなかった。
フェレツア家は辺境であるが、屋敷にかんしては前世の家とも比較して物凄く広大な敷地の広さがあった。東京ドームは4個分の敷地があるような感じだ。
敷地が広いから、わざわざ外に魔法の練習をしなくて済むので良かったんだけどフェレツア家が収めている領地を見たことが一度もなかった。
「アレス先生、どうやって迷宮ダンジョンまで行くんですか。」
「迷宮ダンジョンはここから少し遠いので馬車を使用して行きますよ。」
屋敷を出発してから、領地を進んでいく馬車の揺れる音が心地よかった。辺境であっても道が整備されていて馬車の揺れはほとんどなかった。
馬車の中から見た町は活気的であった。朝早くから人々が行き交い、商店や屋台が立ち並ぶ市場が賑わっていた。笑顔で挨拶を交わす人々の姿がこの領地の雰囲気を感じさせた。
すると、剣や弓を持った人達が出入している大きな建物が目に入った。
「アレス先生、あそこを見てください!武器を持った人達がいます!」
「あれは冒険者の人達ですね。町の外にいる魔物やダンジョンの魔物を倒して肉などの素材を売って生計を立てている人ですね。」
「冒険者ですかロマンがありますね。」
小説にも出てた未知を探求する冒険者達はロマンに溢れていると思っていた。でも私は貴族だから好きなように生きる冒険者にはなれないんだけどね。
「ソニアさんは冒険者になりたいんですか?」
「え? アレス先生、貴族でも冒険者になる人はいるんですか。」
「貴族はダンジョンに潜って魔法の練習を行いますが冒険者になる人は余りいませんね。でも今からダンジョンに潜るんですからソニアさんも冒険者みたいなものですよ。」
「えへへ。そうですね。」
少し冒険者に憧れた。でも、私は貴族なのだからわざわざ危ない目をしてまで冒険者になろとは思わなかった。
アレス先生とそんな話をしている内に迷宮ダンジョンに到着した。迷宮ダンジョンは左右にそびえ立つ絶壁は、まるで天空へと続くような壮大な姿を誇っていた。
「・・・・・凄いですね。」
「ソニアさん。目の前に見えるのが迷宮ダンジョンの入り口ですよ。」
「あれが迷宮ダンジョンですか。なんかもっと怖いイメージをしていたんですが。なんか凄いですね。」
その入口は古代のギリシャ神話に出てくるような神殿のようであった。左右にそびえ立つ絶壁とその間にある神殿は神秘的な雰囲気を漂っていた。
アレス先生は微笑みながら、馬車を操縦していた従者の人を置いて神殿の方へと向かって歩き出した。私は彼に続き神殿の柱に書かれた文字を見つけた。
「アレス先生、あの柱に書かれている沢山の文字は何ですか。」
「あ~あれですか。あれはまだ何の文字や意味なのか分からないのですよ。学者達の間でも意見が分かれていまして神々の文字やただの模様といった意見があるんですが誰も分からないんですよ。」
「まず迷宮ダンジョンもそうですが、ダンジョンについても分かっていないことだらけなんです。」
「ダンジョンとはなんなのか。いつからあるのか。神々が作りだしたのか。そういった感じで学者達が日々、論争を繰り広げているのですよ。」
「へ~ そうなんですね。」
小説にもダンジョンがどうやってできているのか書かれていなかった。確かに気になるところだけど、小説の世界なのだからそういうものだと私自身に言い聞かせた。
「そろそろダンジョンに入りますので準備は大丈夫ですか。」
「・・・はい大丈夫です。」
一応何の革で作られた分からない防具を身につけて私はダンジョンの中に足を踏み入れた。
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