第6話 魔法使い

数日すると王都から魔法使いの先生が家にやってきた。


「魔法組合から来ました。アレスと申します。」


アレスと名乗るその人は黒髪で長髪の綺麗な先生だった。この世界に来て初めて黒髪の人を見た。


てっきり髭を伸ばした、いかにも魔法使いのおじいちゃんが来ると思っていたら、若くてイケメンな男性がきて少し驚いた。


「よろしくお願いします。ソニア・フェレツアと申します。」


私は謙虚な態度で頭を下げた。


「おや、その年でしっかりしてますね。ですがそんなかしこまらなくいいですよ。あなたに魔法を教える立場となりますが、私は平民の出ですので気軽に話しかけてもらっても構いませんよ。」


「ところで、魔法に関して何か特に学びたいことや興味があることはありますか?」


質問されると思っていなかったので、知っている魔法について言った。


「そうですね~~~。人の傷を直すような治癒魔法について学びたいと思っています。」


治癒魔法はこの小説の主人公のエリナが得意としていた魔法だ。それも人の無くなった腕や足を元通りするなど欠損部位の修復するほどの使い手と書いてあった。


私も主人公のエリナのように治癒魔法の使い手となれば、私に何かあった時に自身の体を治せる手段を確保しておきたかった。


「よく知っていますね。治癒魔法に関してですが、治癒魔法は人の体の構造を理解してないといけない難しい部類に入る魔法です。それに理解しても才能がないと使いこなすことができない魔法ですね。」


「うん~~そうですね。まずは簡単な魔法を習得してその後に治癒魔法に挑戦してみましょうか。」


「わかりました!」

主人公のエリナも治癒魔法の取得には時間が掛かったと書かれていたので、私にも治癒魔法が使える可能性があると思い自信を持って答えた。


「では魔法の授業を始めたいと思います。」


アレス先生は、カバンからいくつかの本を取り出して説明を始めた。


「魔法の種類はそれぞれ火系魔法、水系魔法、風系魔法、土系魔法、闇系魔法、光系魔法の以上が五大要素の魔法の概要です。」


「それぞれの要素にはさらに多くの派生がありますが、どれも人の才能や努力によって左右されることがあり得意な魔法と苦手の魔法があります。」


「火系魔法は主に火を操ることができ、攻撃的な要素をもっています。魔物との戦闘や燃焼や破壊に使用されることが一般ですが、火を使った料理や暖房にも応用されていますね。」


「水系魔法、風系魔法、土系魔法も火系魔法と同様にそれに属したものを操ることができます。極めれば、嵐や地震を起こせるなど環境に影響を及ぼすことのできる魔法の使い手になれます。」


アレス先生の話から魔法に関して小説通りの設定だと分かった。魔法を極めた大魔法使いが軍を滅ぼしたなど書いてあったが、嵐や地震を起こせるならそれも可能なんだと考えられる。


「アレス先生。なら治癒魔法は光魔法なのですか?」


「いい考えですが少し違いますね。治癒魔法は特殊系魔法に該当しています。先に、説明がまだだった闇系魔法と光系魔法について教えますね。」


「闇系魔法は呪いや自身の存在感を薄くするといったことができます。光系魔法は、その名の通り光を発生させたり制御したりすることができます。これらの魔法はダンジョン攻略で重宝されていますよ。」


闇系魔法に呪いがあるなんて初めて知った。小説にもなかった情報だった。


「呪いって怖いですね。」


「呪いといっても相手のお腹を下すといった効果しかありませんよ。呪いによって死ぬとかはないんで安心して下さい。」


「では治癒魔法のような特殊系魔法について説明させて頂きます。特殊系魔法とは五大要素の魔法に該当しない魔法のことです。例えば物体を変質させる魔法や相手の思念を読み取る魔法などが特殊系魔法に該当します。」


「それに特殊系魔法の魔法使いは少ないですね。五大要素の魔法と比べても高度な技術と魔力の量が多くなりますので特殊系魔法を教えるのも難しいといった感じです。」


「私自身も特殊系魔法は治癒魔法しか扱えないので治癒魔法しか教えることができませんね。」


うんーーー確かに物体を変質させる魔法や相手の思念を読み取る魔法を覚えられたら良かったけど教えられないなら仕方ないか。アレス先生から治癒魔法を沢山教えて貰えればいいと私は思った。


「では、一通り魔法について大まかに説明できたと思うので、実際に魔法を発動させてみましょうか。私が今から言う魔法の詠唱を覚えて下さい。」


アレス先生はそう言って人差し指を自身の顔の前に出して詠唱を唱え始めた。


「闇を消しさる光よ!迷える子羊に導きを!「「ライト」」 」


その言葉とともに、指先から拳サイズの光の球体が出現した。


「これが光系魔法で初歩の魔法ですね。では今と同じ詠唱を唱えて下さい。詠唱をする際にしっかり光の玉が出現することをイメージするのが大事ですよ。」


私は人差し指を自分の顔の前に出して、頭の中で光の玉のイメージをしたまま


「闇を消しさる光よ!迷える子羊に導きを!「「ライト」」 」


そう言うと私の目の前に光の玉が出現した。


「おめでとうございます。魔法を使えましたね。」


アレス先生に褒められると同時に喜びが溢れた。


こうして私が初めて魔法を使った瞬間であった。





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