第46話 戦争
眠っていたフラウムは、ハッと起き上がった。
「シュワルツ、サルサミア王国から攻められているわ」
眠っていたシュワルツは、遠くを見るようにしているフラウムを見て、起き上がった。
「今、国境を越えたわ」
言いながら、フラウムはベッドから降りて、ガウンを着る。
シュワルツもベッドから降りる。
「レース」
「なんだ?」
ポンと姿を現したのは、猫の顔をして、尻尾がギザギザな召喚獣だ。
「皇帝陛下にサルサミア王国が攻めてきたと、お伝えください。軍隊をお連れすることはできるかしら?」
「できるぞ」
「そうしたら、国境地帯にお連れして」
「わかったぞ」
レースの姿が消えた。
「シュワルツ、着替えましょう。すぐに出発するわ」
「ああ」
フラウムは、自室に向かった。
顔を洗い、バイオレットのドレスに、コートを着ると、シュワルツの元にやってきた。
サルサミア王国はシュベルノバ帝国の西側に、位置している。
キールの村の先に、サルサミア王国がある。
大きな帝国に小さな国が、主張している状態だ。
昔から小競り合いがある国で、フラウムの父親が諜者をしている国だ。
シュワルツも命を狙われた。
サルサミア王国は、どうしてもシュベルノバ帝国が気になるようだ。
シュワルツは着替えて、従者に声をかけたようだ。
「どのようにするつもりだ?今から国境に向かっても間に合わぬ」
「ユラナスを呼ぶわ。国は潰してしまっていいかしら?」
「ああ、いいだろう」
「シュワルツは、軍隊を集めておいて」
「ああ、分かった」
背後にいる従者に、シュワルツは、準備をするように伝える。
フラウムは、外に出ると、「ユラナス」と声を上げた。
目の前に純白のドラゴンが現れた。
「フラウム、戦争か?」
「攻められているわ」
「そのようだな」
「悪いけれど、連れて行ってもらえる?」
「ああ、いいだろう」
「シュワルツも一緒にいいかしら?」
「まあ、ついでだ」
「ありがとう」
フラウムは振り向くと、シュワルツを呼んだ。
「シュワルツ、ドラゴンのユラナスよ。今から、連れて行ってくれるわ」
「乗るがいい」
ユラナスは、首を下げてくれた。
フラウムが乗って、その後にシュワルツがドラゴンに乗った。
「ユラナス殿、助かる」
「其方は、フラウムのオマケだ」
「まあ、そうだな」
「では行くぞ」
ユラナスは、一度、大きく伸びると、大きな翼を広げた。
あっという間に、キールの村に到着した。
キールの村は焼かれていた。
フラウムは怒った。
「許せないわ」
フラウムは、敵に向けて、光の矢を雨のように降らす。敵陣は、光の矢に貫かれて、倒れていく。
大群が押し寄せてくる。
「ユラナス、燃やして」
「了解」
ユラナスは火を噴き、あっという間に、大群を焼き払った。
国境は壊されていた。
ユラナスは、火を噴き続ける。
小国、サルサミア王国は、あっという間に火に包まれて、軍事の準備をしていた軍隊を焼き払った。
サルサミア王国の城も猛火に包まれた。
キールの村に戻ってもらい、生き延びた村人に傷の手当てをする。
シュワルツは、圧倒され続けていた。
そこに皇帝が、軍隊を連れて転移をしてきた。
「レースありがとう」
「なんてことないぞ」
「皇帝陛下、サルサミア王国の城を焼き払いました」
「そうか。それにしても、便利だな」
フラウムは微笑む。
「シュワルツ、スクレと軍隊を連れてきて」
「ああ」
シュワルツはスクレを呼ぶ。
「シュワルツ様、お呼びでしょうか?」
「テールの宮廷まで頼む」
「はい」
シュワルツは、スクレに跨がると、消えた。
その直後、シュワルツの軍隊を転移させて戻ってきた。
「国王が生きているか、確認ができておりません」
「では、行ってこようぞ」
皇帝陛下一行と、シュワルツの軍隊がサルサミア王国へ入っていく。
フラウムは、ユラナスに乗って、上空から見ていた。
一面、焼け野原になっている。
城は焼け落ちている。
動く物の姿は見えない。
ふと、人の気配がした。
皇帝一行と、シュワルツ一行を狙う者がいる。
「あれは、お父様」
「助けるのか?」
「見間違いだわ、焼き払って」
ユラナスが炎を吹き出した瞬間、人の姿が塵のように消えた。
父は死んだ。
清々した。
悲しみもない。
皇帝とシュワルツが上空を見たが、フラウムは微笑んだ。
+
サルサミア王国の城は墜ちて、キリマクルス国王陛下のような死体が発見された。
焼け爛れていたので、身につけていた衣服や、倒れていた部屋から推測された。
城に生きている者はいなかった。
軍隊も死滅していた。
生きていたのは、軍とは関係ない民だけだ。
民は、焼け野原で呆然としている。
皇帝は、すぐにサルサミア王国だった城跡に立った。
「本日から、この国は、シュベルノバ帝国となった。名はリーオと名付けよう」
生き残った民が、拍手をした。
サルサミア王国は海にも面していた位置にあった為に、これから、開発して貿易も発展させていける。
皇帝は、一度、シュワルツと一緒にテールの都に戻り、リーオの都の設計を始めた。
焼け野原になっているので、区画整理から始めなければならない。
フラウムは、魔力980以上ある者を集めた。さすがに少ない。
その少ない人材を集めて、雷獣と契約させた。
レースとスクレの部下になる。
おまけで、伝書を頼んだ。
皇帝も雷獣と契約して、帝国を自在に移動できるようになった。
リーオの都もシュワルツが管理することになった。
テールの都のような都市ができるのだろう。
シュワルツは、区画整理の為に雷獣と契約した部下を一人入れ、部隊を派遣した。
「ユラナス、ありがとう」
「ユラナス殿、感謝します」
ユラナスはシュワルツの顔をじっと見て、一つ頷いた。
「よい夫婦になるがいい。フラウムを裏切ったら、わしがフラウムをいただく」
「なっ」
引き攣った顔のシュワルツを見て、ユラナスは飛び立った。
「ではな、フラウム」
「ユラナス、ありがとう」
フラウムは、大きく手を振った。
「フラウム」
「なあに?」
シュワルツは、フラウムを背後から抱きしめる。
「心変わりをしたのか?」
「シュワルツ、ユラナスは警告をしただけよ」
「警告か。私は心変わりは起こしていないぞ。フラウムを愛している」
「私も愛しているわ」
口づけを交わしていると、隣で皇帝が咳払いをした。
「父上、フラウムのお陰で、数時間で制圧できました」
「ああ、素晴らしい。感謝するぞ。フラウム妃」
「いいえ、でも、キールの村が焼けてしまって、残念です」
「しかし、最小限だったではないか」
「はい」
怪我人もそれほどいなかったのは幸いだ。
フラウムは、神になり帝国を守れる力を得たことを、初めて嬉しいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます