第45話 婚約発表のはずが

 誕生日パーティーの一週間前から、皇帝や王妃様、シュワルツの兄弟達が集まってきた。


 第二皇子は、幽閉されることになったので、3人の皇子がやってきた。


 3人とも綺麗な青い瞳をしていた。皇妃様の血を強く受け継いだのだろう。


 瑠璃色の瞳は、皇帝とシュワルツだけだ。


 瑠璃色の一族の血は薄くなってきている。


 シュワルツと結婚しても、もしかしたら、緋色の瞳の子ばかりかもしれない。それでも、望んでもらえた。


 フラウムは、瑠璃色の一族も強くしたいと思いだした。


 子を成すのは、女の仕事なので、シュワルツとの伽は拒んでいない。10人でも50人でも100人でもシュワルツと子を産もうと決心した。



「美しい姫だ」


「父君、母君、兄さん達、シュベルノバ帝国は繁栄するだろう。フラウムが子を100人でも産んでくれると約束してくれたのだ」



 5人はポカンとした。



「フラウム嬢、夢見がちな息子だが、よろしく頼むよ」



 皇帝は、優しくフラウムに微笑んだ。



「はい」


「それで、フラウム、魔力検査はしたのですか?」


「はい」


「ほう、それで?」



 皇妃様と皇帝は身を乗り出した。



「父君、母君、見てみますか?私も見てみたい」



 シュワルツは水晶を従者に運ばせると、フラウムに手を翳すように言った。


 フラウムは、手を翳した。


 全体に白く輝く中に、黒色、赤色、青色、黄色、緑色が綺麗なグラデーションで映っていた。その後に∞の印が出た。


 皆さん、硬直している。



「フラウムはしかも神様になったんだ」



 シュワルツは秘密を暴露してしまった。



「それは本当なのか?」


「ええ、まあ」



 ドレスの下で、踵でシュワルツの足を踏んで、瞳で叱る。



「シュベルノバ帝国は永遠に守っていくから」


「それは素晴らしいね」


 第四皇子が拍手をした。


「と、言うことは、シュワルツは永遠に皇帝でいるんだね?」と、第一皇子に言われて、すぐに、否定する。


「後継者はフラウムが生んでくれるよ」



 シュワルツは、のろけている。


 フラウムは、今度は頭を抱えた。



「シュワルツ、もしかして、もう手を出してしまったのか?」


「ははは」



 シュワルツは鼻の下を伸ばしている。


 まったく秘密という言葉の意味を理解しているのだろうか?


 皇帝と皇妃は、フラウムに頭を下げた。




「すぐに式を挙げよう」


「でも、教会の予約もできていないし、わたくしの家族も許してくれていません」


「この際、式だけでも挙げよう。万が一、子供ができてしまったら、大変だ」




 皇帝と皇妃の動きは速かった。


 すぐに教会を決めて、シュワルツとフラウムを連れて、フラウムの家族に挨拶に行った。


 婚約式は、結婚式に変わった。


 結婚式の一週間前にドレスを皇妃様と母と一緒に見に行って、手直ししてもらい、ウエディングドレスは、式の前日に届けられた。


 ウエディングケーキは宮廷の料理人が作り、晩餐会の支度に追われた。


 お祖父様は、緋色の瞳の子が生まれたら緋色の一族として育てるという言葉で、気持ちを改めてくれた。子供を親から引き離してはならないと言って許してくれた。



「フラウム、おめでとう」


「ありがとう。お母様」


「フラウム、幸せになりなさい」


「ありがとう。お祖母様」


「フラウム、追い詰めてすまなかった」


「いいえ、お祖父様」



 白いウエディングドレスを着たフラウムに、家族は祝福してくれた。



「シュワルツ皇太子殿下、フラウムを頼むよ」


「はい」



 白い燕尾服を着たシュワルツは、フラウムと並んで、頭を下げた。


 シュワルツの誕生日パーティーは、挙式が行われ、祝いのダンスパーティーが行われた。


 練習をしていたダンスを披露して、フラウムのお披露目をした。


 招待していた貴族達が集まり、大々的な披露宴が行われた。


 側仕えが付けられていなかったフラウムに、プラネット家の子爵令嬢が側人として二人推薦されて、フラウムの元にやってきた。年上の令嬢に、申し訳なさを感じる。



「無理強いではないので、結婚を考えているのなら、断ってもらっても構いません」



 フラウムは、まだ若い令嬢に、丁寧に言葉を発した。



「いいえ、私どもは、政略結婚の相手もおりません。魔力はありませんので、平民に下るしかなかったのです。ここでお世話になれれば、幸いです」



 二人は、頭を下げた。


 シュワルツと相談して、二人をフラウムの侍女にした。


 フラウムは何でも一人でできるが、これから、子供が生まれたら助けてもらえた方が助かるので、祖父の心遣いに感謝した。


 シュワルツの兄弟達は、シュワルツを大切にしていた。


 兄弟達も近いうちに結婚をするのだと言っていた。


「やっとシュワルツが落ち着いたから、結婚ができる」と喜んでいた。

 

 男ばかりの仲の良い兄弟で、2週間ほど滞在して、領地に戻っていった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る