第16話 襲撃

 最後の宿場町に到着すると、素早く扉がノックされ、開けられた。


「お疲れ様でした」


「夜遅くなりましたが、すぐに食事にいたしましょう。お部屋に食事を運ばせます。まずは宿屋にお入りください」


 シュワルツの側近のエスペル・ノアとケイネス・リザルドルフが、順に話し、シュワルツは馬車を降りて、フラウムに手を差し伸べた。


 その瞬間、シュワルツを狙った矢がシュワルツとフラウムの間を引き裂いた。


「フラウム、馬車の中で背を低くしていろ」


「シュワルツ」


 シュワルツは剣を抜き、暗闇の中で矢を打ち払っている。


 エスペル・ノアとケイネス・リザルドルフもシュワルツを守るように、前に出た。


「襲撃だ!」


 一緒に行動してきた騎士達は、抜刀し、シュワルツと一緒に矢を打ち払う。


 矢に打ち抜かれた騎士が倒れる。


 暗闇で、こちらは狙い撃ちされている。

 劣勢だ。


「障壁」


 フラウムは、味方の周りにバリアを作った。


 矢はその壁に邪魔をされて、中に入れない。


 その間に、シュワルツ達は敵の位置を把握した。


 矢が通用しないと分かると、敵は宿場町に火を放った。


 そこら辺で火災が発生して、宿屋から人があふれ出てくる。


「シュワルツ皇子、すぐに馬車へ」


「怪我人は馬車に乗せてくれ」


「かしこまりました」


 エスペル・ノアが、騎士に指示を出している。


「怪我人を収容し、すぐに出発だ」


 馬車はまた走り出した。


 人でごった返しになった、そこを通り抜けるときに、また矢を放たれた。


 馬車を突き抜け、矢が馬車の中まで貫通する。


 御者が撃たれたのか、馬車が止まった。


「やられたか」


 すぐにシュワルツは馬車の扉を開けた。


「フラウム、降りるぞ」


「はい」


 フラウムは、咄嗟にブランケットを掴んだ。


 外は冷える。


 それに、フラウムは村娘のワンピースに外套を着ているが、シュワルツは美しい正装にコートを着ている。


 シュワルツの姿は目立つのだ。


 馬車の外の出ると、周りは火の海で、馬は暴れて走り出し、騎士達は、矢の襲撃に遭っていた。


「皇子、お逃げください」


 エスペル・ノアの声がした。


「フラウム、行くぞ」


「シュワルツ、毛布をかぶって」



「寒いなら、フラウムが……」


「目立つから」


 シュワルツは暗い色のブランケットを頭から被って、フラウムの手を握った。


 フラウムは外套の帽子を被ると、見えなくなる魔法をかけた。


 火花が散る中、走って行く。


 宿場町を抜けて、振り返ると、街が真っ赤に燃えていた。


 走って息が苦しげなフラウムの手を繋ぎ、シュワルツはフラウムの呼吸が整うまで待って歩き出した。


「ここからは、徒歩だ」


「ええ」


 雪がチラチラ降ってきた。


 冷えた道を二人で歩いた。

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