第15話 記憶の照らし合わせ

 シュワルツは目を覚ますと、隣でフラウムも目を覚ました。


 見つめ合って、微笑み合う。


「おはようございます、シュワルツ」


「おはよう、フラウム」


 ベッドから起き上がると、ノートがベッドサイドに置かれていた。


 互いにノートを手に取る。


 最初から読んでいく。


 どうやら、亡き母を救い出す為に、慧眼を何度も使い。何度も失敗していたようだ。


 だが、昨夜の慧眼では成功したようだ。


 巻き戻しの術は成功した。


 フラウムは、自分のブレスレットを見た。そこには、母の遺品のブレスレットではなく、シュワルツと同じブレスレットをしていた。


 このブレスレットは、皇妃様にいただいた物だ。


 水晶は5つ透明になっていたが、まだ余裕があった。


 母は生きている。


 記憶では、祖父の家に行き、父と母は離婚した。その後、妃様に母と会いに行って、お妃教育をお休みすることを伝えた。そして、母と祖父と一緒にキールの村に来たことも覚えている。



「シュワルツ、昨夜の慧眼は成功したようよ」


「そのようだ」


「わたくしの気持ちは変わってないわ」


「私の気持ちも変わってない。フラウムを愛している」


「シュワルツ、わたくしも愛しているわ」



 シュワルツの手がフラウムを抱きしめる。



「父の行方までは調べられなかったわね」


「目的の母君は生きているではないか」


「そうよね。こんなに嬉しいことはないわ。3年間の苦労が報われたのよ。早く、お母様に会いたいわ」


「ああ、私も会ってみたい」


 キスを交わし、シュワルツはフラウムをもう一度、抱きしめた。


 着替えをして、旅行鞄を開けると、宝石の上に手紙があった。


 フラウムの文字で、母の書いた手紙を写した物だ。


 フラウムが、母に書いてもらった手紙の内容が、フラウムの文字で書かれていた。


 何度も3年間、読んだので、紙はよれてしまったが、この手紙があったから、この3年間、頑張ってこられた物だ。


 それを二人で読んだ。


 母を救ったのは、昨日の事だが、フラウムは母を救ったあの後から、今度はシュワルツとの関係を守るために、3年間、頑張って生きてきた。


 記憶の照らし合わせをしても、互いに間違いはない。


 賭けのような事をしたが、どうにか、成功したのだ。


 食事を終えると、馬車に移動になった。


 テールの都まで、あと二日だ。


 馬車には二人で手を繋いで、並んで座った。


 シュワルツは、まだ疲れが残っているのか、すぐに眠ってしまった。


 今日はフラウムの膝枕で、シュワルツは眠った。シュワルツにブランケットをかけて、フラウムも眠りに落ちていく。


 連続の慧眼は、疲れを残す。


 慧眼が苦手だと言っていたシュワルツは、夜遅くまで眠っていた。


 宿場町を一つ次の場所に移動して、馬車は遅くまで走った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る