第5話 グレイ シーカー③

 ピグンさんと協力してリズザが主人公の物語……【マジック・ミラー】の制作を進めた。

あらすじをざっと説明すれば……普通の女の子であるリズザが天使の遣いから授かったマジックミラーと言う変身アイテムで魔法少女に変身し、町で起きる様々な事件を魔法で解決するという話だ。

前世の世界でありふれたテンプレ話だが、この世界ではあまりなじみのない新鮮なストーリーになっている。

ストーリーは主にピグンさんに任せ、僕は主にキャラデザを担当することになった。

資金に関しては、ピグンさんの知り合いである女性から融資してもらっている。

仕事上何度かお会いする機会はあるけれど、近づきがたい風貌のおば様って感じだ。

ピグンさんや活動写真関係のスタッフ達からは”ママ”と呼ばれている。

血の繋がった母親って意味じゃなく、母親的な存在という意味合いらしい。

僕もその呼び名が移ってその人のことをママと呼んでいる。

まあ口は悪いし、目つきも怖いけれど……割と良い人だとは思う。

でないと、こんな成功するかわからない制作に融資なんてしないと思うから。

ちなみに僕とピグンさん以外のスタッフはみんなママが連れてきた人たちだ。



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「いろいろオーディションをやってみたけど……やっぱりリズザの声優はプレンダーちゃんしかいないわね」


「そうですね……」


 制作の合間にリズザの声優を決めるためにオーディションを開催した。

何人か良い声を持った女の子が集まってくれたけど、一番リズザのイメージに合う声を持っていたのは僕達と同じくマジックミラーの制作に携わっているプレンダー エムガスさんだった。

彼女はママの秘書的な立場だが、礼儀正しくて誰にでも平等に接する大和なでしこのような女性だ。

何よりもその透き通るような美しい声がリズザの上品さにぴったりなんだ。

プレンダーさん自身もどことなく雰囲気がリズザに似ている……まあ似ているだけでリズザの美しさには勝てないけどね。


「でっですが……小生には演技の経験など……」


「お願いします! 僕達が全面的にフォローしますから! リズザの声優を担当していただけないでしょか!?」


「私からもお願いするわ。 無理にとは言わないけれど……プレンダーちゃんほどリズザのイメージに合う声はないって思ってる。

完璧に演じろなんて言わない……プレンダーちゃんなりの演技をしてくれればそれで十分よ」


「……わかりました。 小生にどこまでやれるかわかりませんが、精一杯演じます!」


「あっありがとうございます!」


 こうしてリズザの声優も決まった。

演技の経験のない素人のアフレコは聞くに堪えないもの……まして、活動写真は生アフレコが主流だ。

舞台女優とは異なって声優は本番でも台本を持っていられるのはメリットだが、どちらも演技力が共わなければ全てが台無しだ。

真面目なプレンダーさんは練習を怠ることなく、毎日毎日アフレコの練習を続けてくれた。

僕も負けじとキャラデザや活動写真で使用するイラストに情熱を注いだ!


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 制作を始めてから2年後……ついにマジックミラーの試写会が開かれることになった。

ボロボロで古くなっていたエレナルもリニューアルオープンし、チラシ配りなどの宣伝もばっちり行ったためか……初回にしてはそこそこな人数が集まった。

「……」


「プレンダーちゃん、大丈夫?」


「大丈夫……とは言えませんね」


 舞台裏で台本を握りしめながら緊張を隠せていないプレンダーさん。

無理もない……練習を重ねてある程度の演技ができるようになったけど……プロの声優だって生アフレコなんて生半可な覚悟ではできないだろう。

その上、この試写会でアフレコする主な声優は彼女1人だけ……ちょい役のモブを担当する声優は2,3人いるが……ストーリーの8割くらいはプレンダーさんのアフレコのみで展開されるからプレッシャーもすごいだろうな。

ちなみにリズザにアイテムを渡す天使の遣いは声優が不足していること踏まえて言葉を発さない猫のマスコットキャラという設定になった。

猫の鳴き声をリズザが翻訳して代弁してくれることで物語の設定は説明できるがその分、プレンダーさんの負担も大きい。


「私がずっと隣にいるから、何かあったらすぐに言って。

失敗してもそれはプレンダーちゃんの責任じゃないからね」


「ありがとうございます……」


 ピグンさんはプレンダーさんを勇気づけるように手を握った。

こういう時、そばにいてくれる存在ってありがたいんだよな……。


「小生なりにやってみます!」


「その意気よ! プレンダーちゃん!」


 不安な要素は残るものの……僕達のマジックミラーはこうして幕を開けた。

アフレコではプレンダーさんが若干噛んだり、セリフを飛ばしてしまったりと多少ミスはあったものの……結果的に試写会は盛況だった。

会場では祝福の拍手が鳴りやまず……中にはイラストの出来やストーリーに感動して涙を流す人までいた。

試写会後のアンケートでも、”続編が早く見たい”だの”リズザが可愛すぎた”だの好印象な声がほとんどだった。

声を当ててくれたプレンダーさんの演技も結構好評だった。

僕達のリズザが……僕達の物語がみんなに受け入れられたんだ……それだけで僕の胸は一杯だった。

収益も予想より多く……マジックミラーの続編が決定するのもあっと言う間だった。

それからグッズ販売に関連ショップの展開など……自分でもマジかと思うくらいにマジックミラーは爆発的に人気を集めていった。

制作を始めた頃は僕とピグンさんを含めて10人ちょっとしかいなかったスタッフも、いつしか100人以上に膨れ上がっていった。

収益もうなぎ登りに上がっていき……制作に当てられる費用もどんどん上がっていく分、より壮大なスケールの物語を描けるようになった。

正直……初回の試写会が最初で最後だと思っていたから……こんなにみんなから支持されるなんて思いもよらなかった。


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 マジックミラーによってエレナルは大きく成長を遂げていき……リズザの名前も徐々に認知されるようになっていった。

リズザの美しさ……可愛らしさ……そして悪に立ち向かう勇敢さ……そんな彼女の魅力を老若男女問わず知っていく様子を見ると……僕も誇らしいし、嬉しく思う。

だがある日……そんな絶好調な僕の前に、思い出したくもない連中が顔を出した。


「グレイちゃん!」


「どうしたんですか?」


 いつもの仕事場で次の活動写真に使うイラストを描いていると、慌てた様子のピグンさんが入ってきた。


「売店にグレイちゃんを出せって騒いでいる2人組がいるの。

自分達はグレイちゃんの親だって……」


「僕の親?」


 僕の親を名乗る人間はこの世界で2人しかいない。

だけどあの2人は僕を追放したんた……わざわざ足を運んでくるなんて……正直この時点では信じられなかった。

まあマジックミラーが世間から大きく注目されたから、ピグンさん同様にメインのイラストレーターである僕を見つけることは難しくはないだろう……。

でも真意がわからないな……。


「どうする? スタッフが今対応してるけど……」


「……僕が行って話をしてきます」


「大丈夫?」


「大丈夫です。 もう僕にはこの場所がありますから」


「そう……何かあったら言いなさいよ? これでもそれなりに腕っぷしには自信があるの」


「ありがとうございます」


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「だから何度も言っているだろう!! 私達はグレイの親だ!!」


「息子に会わせなさい!!」


「落ち着いてください。 お願いですから大声を出さないでください」


 売店まで行くと……聞き覚えのある声が大きく轟いていた。

数名のスタッフが今にも暴走しそうな2人を必死に抑えていた。

周囲にいるお客さん達も何事かと動揺しているみたいだ。

これ以上このままにしておくわけにはいかない。

とにかく、2人と話をするしかないな。


「2人共やめてくれ!」


 僕が2人にそう声を掛けると……。


「「グレイ!」」


 僕の姿を見た瞬間、2人は目の色を変えて僕の元に駆け寄ってきた。


「グレイ! 探したぞ!」


「グレイ! 会いたかったわ!」


 事情を知らない人が見たら、生き別れた親子の感動の再会だと誤解されそうだ……。


「僕に用があるんでしょう? ここだとお客さんに迷惑がかかるから場所を変えよう……」


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 僕はひとまず2人を応接室へ連れていき、対応してくれていたスタッフ達にはお礼を言ってそれぞれの持ち場に戻ってもらった。


「それで? 一体何の用で来たの? これでも僕、忙しいんだけど……」


「そっそんな言い方ないじゃない……家出した我が子に会いにわざわざ足を運んできた親に向かって……」


「家出って……そもそも2人が僕に追放を命じたんだろう? 僕はその命令に従っただけだ」


「そっそうだったな……すまん! あれは忘れてくれ……あの時の我々はどうかしていたんだ」


「そうよ? 私達は血の繋がった親子じゃない」


 実に不気味だ……あれだけ僕を見下していた両親が手のひらを返すように僕に優しく接してくる。

はっきり言って寒気がする……。


「結局どういうこと? 簡潔に用件を述べてくれないなら話は終わりにするから」


「わっわかった……わかった」


 膝に手をついて退出の意を示すと、ようやく父が口を開いた。


「単刀直入に言う……私達の所へ……戻ってこい」


「は?」


「家族としてもう1度一緒に暮らしましょう?」


「いや意味わかんないよ……そもそもリギューはどうしたの? 2人はあいつがいれば良いんじゃないの?」


 ドンッ!


 リギューの名を口にした瞬間……父は突然応接室のテーブルを憂さ晴らしのように叩いた。

額に青筋まで浮かび上がっている。

隣にいる母も怒りを抑えるかのように……歯を食いしばっている。


「あいつのことはもういい……シーカー一族の名に泥を塗った恥さらしなぞ……」


「えぇ……あんな役立たずに期待した私達が愚かだったわ……」


「どういうこと?」


 そこから2人は愚痴をこぼすように……これまでの経緯やリギューのことを話した。

いや実際に愚痴だな、これ。


「要約すると……リギューのこれまでの行いが全部露見してしまって……一族が保有していた全財産を失ったってこと?」


「その通りだ……代々受け継いできた美術品や屋敷まで……あいつのせいで手放すはめになった」


「それからボロ小屋に身を寄せて……食べる物すらろくにないみじめな人生を送るハメになったの……全部あの疫病神のせいよ」


 なんとも身勝手な言い分だ……。

リギューのしたことは自業自得だけど……自分達の利益にならないからって、あれだけ可愛がっていたリギューをあっさり見捨て、追放した僕にすり寄ってきやがって……。

言うまでもなく、2人は僕に寄生する気だ。

世間的に見れば僕は成功者のように見えるだろうけど……実際、僕は普通に生活できる分のお金しか受け取らず、あとは全てマジックミラーの制作に回している。

僕にとってはマジックミラー……リズザを描くことが生きがいな訳だから……。

まあそうでなくても、今更僕を見限った親の面倒なんか見る気はないけどね。


「2人言いたいことはわかった……」


「そうか! じゃあもう1度私達と……」


「悪いけど僕は2人と一緒に暮らす気は毛頭ないよ? そもそも僕には2人を養うほどのお金なんてないし……一緒になった所でお互いメリットはないよ」


 頭ごなしに消えうせろと言いたい気持ちを押さえ、僕なりに言葉を選んだつもりだ。

だけど2人には僕の意図が伝わらなかったらしく……。


「どっどうしてそんなことをいうの!? 私達は家族でしょ!? 私はあなたをそんな子に育てた覚えはありません!」


 ろくに話もせず、僕の世話を使用人に押し付けていた女が何か言ってるよ。


「おっおい落ち着け。

グレイ……金のことなら気にするな。

実はお前に良い話を持ってきたんだ」


 おもむろに父は懐から1枚の写真を取りだし、テーブルの上に置いた。

そこにはモデル並みに美しいと思われる女性が写っていた。


「こちらはケップ一族のご令嬢だ……ケップ一族とは古くからシーカー一族と縁がある由緒正しい貴族だ」


「……」


「この方と見合いをしてみないか?」


「見合い?」


「そうだ。 お前がこの方と結婚すれば、シーカー一族復興の兆しが見える……それほどの力を持つ一族だ」


「……」


「悪くない話だろう? 彼女は才色兼備を絵に描いたような女性だ……浮ついた話もなく、まさに理想の女性だ」


「……」


「お前も男だ、美しい女性を妻に持ちたい願望くらいあるだろう? 彼女と一緒になれば、これから先の人生も安泰だぞ?」


「はぁ……」


 思わず大きなため息をついてしまった……改まって何を言い出すのかと思ったら、なんともくだらない。


「せっかくのお話だけど、断らせてもらうよ」


「なっなぜだ!?」


「要は僕をパイプにしたいだけでしょう? だったらリギューでもいいじゃないか」


「あいつではだめだ! ケップ一族は清廉潔白な婿を求めている。

あれだけの騒動を起こしてしまったリギューでは相手にすらせん!」


「そう……だとしても、僕は見合いなんてしない」


「どうしてだ!? 何が気に入らない!?」


「そういう問題じゃない! 僕には……一生を捧げると誓った女性がいるんだ。

だからお見合いなんてできない……それだけだ」


「なっなんだと!? 一体どこの誰だ!?」


「彼女だよ……」


 僕は恋人を紹介するかのように、応接室に飾られていたリズザのポスターを2人に示した。

2人共意味がわからないと言わんばかりにポカンとしている……まあそうだろうな。


「なっなんの冗談だ?」


「冗談なんかじゃない。 僕はこの子を……リズザを心から愛しているんだ。

彼女のためにこの人生を捧げよう……そう思って、ここにいるんだ」


「あっあなた……一体何を言っているの?」


 僕の言葉がよほど衝撃的に聞こえたのか……先ほどまでわざとらしく目を潤せていた母が急に目を丸くした。


「理解できないだろうけど……僕はリズザを世界中の人が愛してくれる女神にしてあげたい……それが今の僕の夢だ。 だから彼女以外の女性と添い遂げることはできない」


「おっお前……気でも触れたのか!? あんな絵のために……これほどの見合いを蹴ると言うつもりか!?」


「そうだよ……僕にはリズザ以外の女性はあり得ない」


「ばっ馬鹿を言わないで! 絵の女のために操を立てるなんて……あなた正気なの!?」


「なんとでも言えばいいさ……僕は二次元しか……リズザしか愛せない。

これから先、どんなに美しい女性が現実に現れたとしても……この気持ちが変わることは絶対にない」


 僕がそうはっきりと言った瞬間……2人は椅子から立ち上がり、僕の腕を掴んで叫んだ。


「グレイ、病院に行くんだ! お前はきっと精神的な病にかかっている。 きちんとした所で診てもらうんだ!」


「そうよグレイ! きちんとした治療を受けたら、きっと目が覚めるわ!」


 いくら年齢的に有利だとしても、2人がかりで両腕をがっしりと掴まれてしまうと、元々非力な僕では引きはがすのは難しい。


「やっやめてよ! 放してくれ!」


 強制的に椅子から立たされたその時!!


「そこまでにしておきなさい」


 そう言って応接室に入ってきたのはなぜかリズザの衣装に身を包んだピグンさんだった。


「なっなんだ貴様!」


「それ以上のおイタは私が許さないわよ?」


 そう言って魔法のステッキをバトンのように回すピグンさん……完全にリズザになりきってる……。


「これは親子の問題よ! 部外者は口を出さないでちょうだい!!」


「部外者とは聞き捨てならないわね! グレイちゃんは私の最高のパートナーよ?

たとえ実の親であっても、勝手な真似はさせないわ!」


「だっ黙れ黙れ! グレイは私達の子だ! 私達がどうしようと……」


「そいつはちょっと違うんじゃないかい?」


 スタッフ数名と共に応接室に入ってきたのは……高級なコートに身を包み、キラキラしたアクセサリーをちらつかせる50代後半から60代前半の女性……この人こそが、エレナルの責任者であるママだ。


「ママ!」


「あんたらはグレイの親じゃない……グレイの親はあたしだ」


「はぁ!? 何を言って……」


「こいつを見な」


 ママが2人に突き付けたのは1枚の書類……それは僕の戸籍に関するものだ。

そこははっきりと、僕の親権はママにあることが示されている。


「そっそんな……どうして……」


「どうしてって……あんたらグレイを追放してんだろ? 

その際、自分達で国に申請したのを忘れたのかい?」


「「!!!」」


 ママに言われるまで知らなかったんだけど……どうやら2人は僕を追放したその日に、戸籍からも僕を抹消したらしい……金持ちのやることは本当に恐ろしいな。

理由はシーカー一族の遺産を全てリギュー1人に相続させるためだろう。

血が繋がっているとはいえ、戸籍から僕の名が抜かれていたら、万が一行きわたる遺産なんて微々たるものだ。

まあ皮肉なことに……今のシーカー一族に遺産なんて何もないけど……。


「あんたらが捨てたグレイをあたしが拾った……つまりこいつはあたしの所有物ってこと。

理解できたかい?」


「おっ横暴よ! グレイを生んだのは私よ!? あんたみたいな赤の他人にそんな権利は……」


「うるさい女だねぇ……おいグレイ、あんたが決めな。 この馬鹿親共と一緒に優雅な生活に戻るか……あたしの元で一生奴隷として働くか……」


 言葉は乱暴だけど……ママなりに気を遣っているのはわかる。

奴隷と言うのは気になるけど……。


「僕はママの元で働く。 だから2人とは一緒に行けない」


「そっそんな……」


「本人がこう言ってる以上……どうにもならないねぇ……」


 ママの勝ち誇ったような嫌味な笑みは気になるけど……これで僕の意思ははっきりと伝わったかな?


「たっ頼むグレイ! 私達の元に帰ってきておくれ!!」


「お願いグレイ! 血を分けた親子じゃない!!」


 恥も何も捨てて、僕の膝に縋り付いて泣き落としにかかる2人……もうここまできたら憐れみさえ感じてきた。

もう何を言っても無駄みたいだ。


「面倒くさ……ピグン。 片付けな」


「任せて……魔法の力を見せてあげるわ」


 ピグンさんはどこで習って来たのか……2人に当て身を喰らわせて意識を奪い……その腕力で2人担いでしまった。

どこが魔法なんだ?


「グレイ。 こいつらに言いたいことはあるかい?」


「いや……とくには……」


「そう……」


 ママがアイコンタクトでピグンさんに指示を出すと、ピグンさんは両親を担いだまま応接室を後にした。


「あの……どこに連れて行ったんですか?」


「信用できる働き口さ……あいつらさっきまで売店で派手に暴れていただろ? その際、商品や備品をいくつか壊しやがったのさ……だからその分を弁償してもらう。

あの身なりじゃどうせ金なんてないだろうしね……」


「はぁ……」


「まああたしだって鬼じゃない……そこで真面目に10年くらい働けば済ましてやる」


 十分鬼じゃないか!!

そもそも10年って……一体何を壊したらそこまでなるんだよ……。

まあこれで、しばらくあの2人におびえずに済みそうだ。


「ありがとうございます」


「礼を言う暇があるなら描きな! それがあんたの仕事だ!」


「はっはい!!」


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 こうしてなんとかシーカー一族の魔の手から逃げることができた。

あれから両親は僕の前に現れなくなったし、リギューはどうなったかは知らない。

まあもうどうでもいい……今の僕にとって大事なのはリズザのことだけだ。


「よしっ! やるか!」


 今日も僕はリズザの物語を描いている……それが僕の人生そのものだからだ。

仕事場にはピグンさんが最初に描いたリズザの等身大イラストが飾られている。


「リズザ……愛してるよ」


 彼女の愛をささやくのが僕の毎日のルーティンだ。

どことなく、彼女が微笑んでくれるように見える。

気のせいかもしれないけど……僕にはそう思える。

そして……彼女の笑顔が僕に力をくれる。

そのたびに僕は思う。


 僕は二次元(リズザ)しか愛せない。


【これで完結することにします。

というよりこの先が思いつかないので打ち切りと言い換えるべきかも……。

とにかく最後まで読んで頂いてありがとうございました。 by panpan】

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僕は二次元しか愛せない ~前世でキモオタだった僕は異世界でイケメン貴族として転生するもリアルの女に興味がない変人と家から追放されるがどうでもいい! 僕はこの世界に二次元の素晴らしさを広める~ panpan @027

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