第4話 リギュー シーカー
俺はリギュー シーカー。
名を聞けば誰もがひれ伏すシーカー一族だ。
シーカー一族は代々たぐいまれな美術の才能を受け継いできた。
俺も例に漏れず、絵画の才能を幼少期の英才教育のおかげで開花させることができた。
俺の描いた絵は多くの下民共を魅了させ、俺という完ぺきな存在を示す礎となった。
15歳を過ぎた頃には、プロの芸術家に一目置かれるまでに俺の存在は大きくなった。
俺を天才として見込んで育ててきた両親も、次期シーカー一族の当主として考えている。
だがいくら天才の俺様でも絵ばかり描いていては息が詰まる。
そんな俺の気晴らしは……コレクションだ。
俺は自分が持っていないものを他人が持っていると猛烈にほしくなる。
宝石や絵画といった美術品から始まり……最近では美しい女や珍しい動物にも手を出すようになった。
シーカー一族の莫大な財力と権力があれば、誰もが”品物”を俺に献上する。
まるで全てを支配した王様になった気分だぜ。
言うまでもないが……どれほどすばらしい物でも飽きは来る。
美術品や動物は売れば金になるが、女は売買することも返品することができない。
手切れ金で関係を絶とうとしても、欲深い女共は俺との関係を脅迫の材料にして俺から金を吸えるだけ吸い取ろうとする。
そう言った連中には、多少強引な手段を取ることにしている。
主な常とう手段は、俺の家にある高価な美術品を俺の息がかかった使用人たちに盗ませ、それを女の家に運んで盗人の罪を着せるというもの。
盗品という決定的な証拠がある以上、身に覚えがないと言ったところでどうにもならない。
そもそも上流貴族たる俺と下民の女共では人間としての価値が違う。
そうなったら女達は和解と引き換えに俺との関係を他言無用に絶つほかない。
無論、口約束だけでなく……きちんと契約書も書かせている。
これを破ればあいつらは莫大な慰謝料を払うことになる。
まあ……ここよりもさらに中心にある国では犯罪を犯した瞬間に死刑になるらしいから、それよりはマシだろう?
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そんな完璧な人生を送っている完璧な俺には……汚点と呼ぶべき存在がいる、
それが兄のグレイ……いや、兄なんて呼ぶのも汚らわしいゴミだ。
同じシーカー一族の血を引いているとは思えないほどの無能野郎……それがグレイだ。
あいつの描く絵はどれもこれも芸術とはかけ離れたガキの落書きレベルの産物だ。
俺と同じ英才教育を受けたにも関わらず、あいつはくだらない絵しか描けない我が家の恥さらしだ。
両親もそれにすぐ気づいて、見切りをつけている。
もうほとんど幽霊と言っても相違ない存在価値だ。
いずれ家から追い出されるのも時間の問題だろうな。
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ところがある日……俺は庭で下民の女からもらってやった犬をしつけていた。
珍しい犬でかなり利口であると聞いていたが、俺の命令に逆らうどころか威嚇してきやがる。
「おい! いい加減にしろよ! ご主人様に向かって!」
俺がどれだけ怒鳴りつけても、犬は俺を敵視してきやがる。
この俺様が時間を割いて相手したやってるんだぞ?
こんな尻尾を振るしか能のない獣と違って、俺の時間は貴重なんだ。
俺は威嚇に臆することなく、犬に触ろうとしたその時……あろうことか、俺の手を犬が噛みつきやがった!
「ふざけるなよこの駄犬! お前ら犬は人間様にただ従っていればいいんだよ!」
俺は怒りに任せて応接室に飾られていた猟銃を手に、銃口を犬に向けた。
この俺の手を……シーカー一族の希望であり、世界の宝となるべくこの俺の手を……この犬は噛んだんだ!!
生かしておけるか!!
バーン!!
俺は躊躇なく、犬に弾丸をぶち込んでやった。
弾丸が命中したのと同時に、クソ犬は死んだ……ざまあみろ!
「ちっ! 駄犬が庭を汚しやがって……おい無能! その汚い犬を片付けておけ!」
どういうわけか、犬のそばにいた無能にそう命じてやると……。
ボカッ!!
あろうことか……無能が俺の顔を殴りやがった!!
「きっ貴様……自分が何をしたのかわかっているのか!? 今すぐ謝罪しろ!!」
「……」
無能は俺の言葉を無視し、黙ったまま俺ににらみをきかせた視線を向けてきた。
こっこの野郎……無能のくせに!
有能な俺様を殴った挙句、謝りもしないってか!?
俺はすぐさまこのことを両親に話した。
両親は当然ブチキレて無能に謝罪を求めたが、あいつは拒否しやがった。
現在シーカー一族の当主である親父の言葉に逆らってしまえば、この家に奴の居場所はもうない。
無能はシーカー一族から追放され、その日のうちにこの家を出ていった。
ざまあみろ!! 無能なゴミが有能な人間に手を出すからこういう目に合うんだ。
せいぜい地獄を見て、一生後悔しな!!
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無能が追放されてから4年ほどの年月が流れた。
俺は変わらずイージーな人生を送っている。
当然だ……俺は将来を約束された天才画家だ。
贅沢で自由な人生を送る権利がある。
そんな毎日がこれからも続くはずだった……。
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ある日……俺はとある婚前パーティーに招待されていた。
本来であれば、他人の幸せなんてどうでもいいが……主役が俺よりも力のある上流貴族であれば話は別だ。
その名をヤスマ一族……我がシーカー一族よりも深い歴史を持ち、財力も権力も俺とは桁違いだ。
俺を含め、美術に心得のある貴族が最も敵に回したくない一族。
だからこそ、こういったイベントで友好な関係性を築いていかないといけないんだ。
「よく来てくれた……」
「これはこれはヤスマ様……このたびはご結婚、おめでとうございます」
このパーティーの主催者であり、ヤスマ一族の若き当主が俺に声をかけてきた。
あまり面識のない俺達にわざわざ声をかけてくるなんて……こりゃうまくいけば、太いパイプが作れるかもしれねぇ。
上の人間が自ら声を掛けるってのはそれだけ大きなことなんだ。
「ありがとうございます。 こちらは婚約者のモーレです」
美しいドレスに身を包んだ女が軽く俺に会釈する。
なかなかに良い女だ……じっくり味わいたい色香ではあるが、さすがにヤスマを敵に回すほど俺は馬鹿じゃない。
「……お久しぶりですね? シーカーさん」
女の口から出た言葉に俺は首を傾げた。
久しぶり?……こんな女と会ったことがあったか?
「失礼……どこかでお会いしたことがあったでしょうか?」
「えぇ……昔、お屋敷へ伺ったことがあるのですが……」
まっまさか……俺が手を出した女の1人!?
いやまさか……いくらなんでもヤスマの女を寝取るようなマヌケをこの俺がするわけがない。
「私の家族は……元気ですか?」
「かっ家族? なんのことですか?」
「私の大切な家族……あなたにとってはただの犬に過ぎないでしょうが……」
「!!!」
犬という単語が俺の記憶の中にある光景と目の前の女を合致させた。
こいつは昔、俺が殺した犬の元飼い主だ!!
あの時は貧乏な下民に過ぎなかったから記憶から薄れていたが……まさかヤスマの嫁になっていたとは……。
「思い出していただけたようですね……あの時の犬は元気ですか?」
「あの……残念なことに……犬は病死してしまって……」
「病死?……自ら手を汚しておいて……よくもそんな嘘を平然とつけますね……」
口調は冷静さを保っているみたいだが、今にも俺に飛び掛かりそうな新婦を新郎が手で制止する。
「うっ嘘なんて……何を根拠に……」
「明確な根拠を提示しろというのであれば……」
ヤスマがアイコンタクトを合図に奴の使用人共が書類の束を持って俺の前に立ちふさがった。
「なっなんなんだよお前ら!!」
俺の言葉を無視して、使用人共は持っていた書類を俺の目前に突き付けた。
そこには俺が犬を殺した際に使用した猟銃の種類……犬を埋めさせた場所と実行した使用人の名前……あの日俺がしたことが詳細に書かれていた。
「なっなんだよこれ……」
「こちらで色々調べさせていただきました……」
馬鹿な!!
バレるはずがねぇ!!
「実際に使用した猟銃は処分されたようですが……これだけの証言があれば、十分あなたを起訴できると思いますよ?」
一体どうなってんだ!?
「腑に落ちないようですが、あなたの周りに少し多めに金をバラまいたら思ったよりも簡単に口を割りましたよ。
なんとも薄い人間関係をなさっているようですね……」
何っ!?
まさかあいつら……使用人の分際で主である俺を金で裏切ったのか!?
ふざけたことをしやがって!!
「ふっふん……まさか、あのヤスマ様がたかだが犬1匹を殺した程度のことで起訴などと……ご冗談でしょう? そもそも事の発端は奥様が犯した窃盗事件です。 私は犬1匹と引き換えに、和解に同意したのですよ? 感謝はされど、恨まれるような覚えはありませんなぁ」
そうだ!
あの犬はヤスマの犬じゃなく、奴の婚約者の実家で飼っていた犬だ。
起訴なんぞされたところで痛くもかゆくも……。
「あれを見てもそんなことがことが言えるでしょうか?」
そう言ってヤスマの視線が俺の後ろへと向けられた。
俺も釣られて振り返ると……そこには鬼の形相をした大勢下民共が俺を一点ににらみつけていた。
轟く足音からも、殺したいくらいの怒りに満ちているってことはヒシヒシと伝わってくる。
「なっなんだよお前ら! ここはお前らのような薄汚い下民が入ってきて良い場所じゃあ……」
俺は思わず言葉を詰まらせてしまった……下民共の中に、俺が寝取った女達が死相に近い表情を浮かべて突っ立っていいるのが見えたからだ。
そしてその瞬間……下民共が俺をにらむ理由を悟ることができた。
「お前だな!? 俺の女房を寝取りやがったのは!! 慰謝料払いやがれ!!」
「ウチの娘を脅迫して傷物にしやがって!! ぶっ殺してやる!!」
「俺を泥棒呼ばわりして奪った大事な家宝を返しやがれ!!」
「お前に冤罪吹っ掛けられたせいで俺は全て失ったんだぞ!! どうしてくれる!?」
よく見れば、俺が冤罪に掛けた奴らもいやがる!!
「どっどうなって……」
「先ほどあなたの周りが口を割ったと言ったでしょう? 金と身の安全の保障を引き換えにしたら犬の件以外にもペラペラと色々話してくれました。
私にとっては不要な情報ばかりでしたが、必要としているであろう彼らにその情報と別ルートで手に入れた諸々の証拠と一緒に提供しました」
ちくしょう!!
裏切ったゴミ共に報復してやりたいところだが……ヤスマ一族がバックについているならうかつに出だしはできない。
だからこそ余計な情報を簡単に漏らしたんだろうが……クソッ!!!
こんなことなら奴らを永遠に黙らせておけばよかったぜ!!
「これほどの人間の怒りを買ったんです。 いかにシーカー一族の次期当主とはいえ、無事では済まないでしょう……」
ヤスマの横にいるクソ女が丁寧な口調で俺を煽ってきやがった!!
俺をこのパーティーに招いたのも、この状況を作り上げるためか!!
舐めた真似しやがって!!
「調子こいてんじゃねぇ!! ヤスマがいなければ何もできない下民女が!!」
「私の婚約者を侮辱しないでいただきたい!」
女を庇ってヤスマが俺の前に立ちふさがった。
「テメェもテメェだ!! 俺を追い詰めてヤスマ一族に何のメリットがあるんだよ!?
まさか、正義のためとか言うんじゃねぇだろうな!?
ハハハ……さすがは天下のヤスマ一族様だな!!」
俺は怒りに任せてヤスマを挑発しちまった……もう俺も終わりだな……。
「あなたが彼女から奪った犬……あれは私が彼女に送った犬だったんです」
「はぁ!?」
「私はボランティアで動物保護活動を行っていまして……彼女共その縁で出会いました。
その際、彼女に川で捨てられていた子犬を受け取っていただいたんです。
彼女は弟のように可愛がると笑っていました……私も彼女の元でなら、子犬もきっと幸せに暮らしていけると……そう思っていました。
そんな幸せをあなたは無慈悲な理由で奪い去ったんですよ?
私達だけじゃない……あそこにいる多くの人達の幸せや大切な物をあなたは無慈悲に奪った……これだけでも十分奮闘する理由になると思いますが?」
「わかんねぇよ!!あんたも俺と同じ上流貴族だろうが!! 上に立つ人間が下にいる人間をどうしようが自由だろうが!!」
「あなたと一緒にされるのはいささか不快です」
「こっこの野郎!!」
俺は頭に血が上ってヤスマに飛び掛かろうとするが……体格の良い奴の使用人達の手で簡単に抑えつけされちまった。
「はっ離しやがれ!! お前ら俺を誰だと思ってやがる!?」
なんとか抜け出そうともがくが……何人もの男に取り押さえられたいてはどうしようもできない。
俺は無様に床に顔を押し付ける醜態をさらす羽目になった
そんな俺を、ヤスマの婚約者がさげすむような目で見下ろしてきやがった。
「何見てんだよ!? わが身可愛さに犬を売った馬鹿女が!!」
「あの時……あの子を手放すしかなかった私の気持ち……あなたにわかりますか?
莫大な慰謝料から逃げるために大事な家族を明け渡した私にも落ち度はあります。
だけど……それでも……大事な家族の命を奪っておきながら、大勢の人を苦しめて幸せに浸るあなたを許すことはできません。 これまでの報いを……しっかりと受けてください!」
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それからは地獄の連続だった……。
俺が女を寝取った間抜け共や冤罪を吹っ掛けたゴミ共が集団訴訟を起こしやがった。
俺は裁判に掛けられ……悪質な行為な上、動機も幼稚であると有罪判決を受けた。
懲役80年の執行猶予60年なんてほとんど無期懲役と変わらない罰を受けることにあり、膨大な慰謝料はシーカー一族が全額負担することになった。
正直、なんとかなるんじゃないかと楽観的に思っていたけど……一族の財力を持ってしても慰謝料には届かなかった。
仕方なく一族が保有している屋敷や土地……美術品などを売り払い、どうにか借金を背負うことにはならなかった。
だが結果的にシーカー一族はほぼ無一文となり……この一件が世間に広く露見してしまったことで、これまで築き上げてきた信用や人脈を一気に失った……。
だがまだ俺には絵の才能がある!
面倒だが、俺が絵を描いて世に出せば、これくらいの失態はどうにでもなる!!
……そう思って渾身の力作を町の美術館に寄贈して蓄えを得ようとするも……。
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「申し訳ありませんが、この絵を展示することはできません」
「なっなぜだ!? このリギューシーカーが描いた絵画だぞ!?」
「この絵には美術館に展示するほどの価値はありません。
はっきり申し上げると……多少絵が上手い素人程度の代物です。
「しっ素人だと!? ふざけるな!!この俺が描いた絵だぞ!? さっさと展示して金よこせ!!」
「無理です! そんな邪な欲望を抱いているあなたのような方には、人の心を掴む絵など到底描けないと思いますよ?」
「もういい!! お前みたいな無能がいる美術館なんぞこっちからお断りだ!!」
それから俺は美術館を転々とし、俺の絵を展示するように要求するが……どいつもこいつも俺の絵は展示できないと断りやがる!
他にも何枚か絵を描いてみたが、結果は同じだ。
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あの露見からわずか1年後……シーカー一族は事実的に没落した。
「全部貴様のせいだ!! 貴様のせいで長年続いてきたシーカー一族は終わりだ!!」
「そうよ!! こんなのが我が子だなんて……恥ずかしい!!」
何もかもを失い、わずかに残った金でせまいボロ小屋に身を寄せる俺達3人。
使用人共も全員俺達を見限り……俺達は孤立していた。
そんな受け入れ難い現実に憤りを感じた両親は俺を毎日のように罵り続けた。
「なっなんだよ! 俺は上流貴族だぞ!? 好き勝手して何が悪いんだよ!?」
「その結果、こんな無様な醜態をさらすことになったんだろうが!!
しかもなんだ!? あの不細工な絵は!? あれを力作と呼ぶ貴様の美的感覚は狂っているとしか思えん!!」
「てっテメェ!? この才能あふれる俺様が描いた絵画を不細工だぁ!? 脳みそ腐ってんじゃねぇのか!?」
「だったらどうして展示を断られるのよ!? この間は素人が集まるコンテストに応募したというのに……入賞すらしなかったじゃない!!」
「うるせぇうるせぇ!! あんな下民共に俺様の絵のすばらしさがわかってたまるかよ!!」
「黙れ!! 女だの収集だのに現を抜かしてろくに筆を握らなかった貴様の描く絵に、なんの価値を見出すと言うんだ!? せっかくの才能をどぶに捨てよって……一族の恥さらしめが!!」
「はぁ!? 次期当主って俺を散々担ぎ上げてきたくせに、恥さらしだぁ!?
ふざけんな! この死にぞこない!!」
「もういや!! こんな疫病神なんか生むんじゃなかったわ!!
これまであなたにどれだけの金と時間を費やしたと思ってるの!?
こんなことになるくらいなら、グレイじゃなくてあんたを追放しておけばよかったわ!!」
「なんだと!?
「そうだ……グレイだ! グレイをもう1度迎え入れよう……追放したとはいえ、奴は我らシーカー一族の血を受け継ぐ男だ。 家族が路頭に迷っていると聞けば、あいつも無視はできないだろう!」
「そっそうね……あの子はなんだかんだで優しいから、謝れば許してくれるわよね?」
「はぁ!? 俺様を殴りやがったあんな無能に助けを求めるとか、あり得ねぇだろうが!」
「あんたよりグレイの方がずっとマシよ!」
「貴様のようなクズなど、殴られて当然だ!!」
「あぁそうかよ!! だったら無能野郎に媚びを売って無様な人生を送れよ!!」
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翌朝、両親は小屋から姿を消していた。
”親子の縁を切る”という置手紙だけを残して……。
もうあいつらのことなんぞどうでもいい……俺は才能あふれる男だ。
才能が枯渇しているのなら、もう1度開花させてやればいいだけだ。
「こんなところで腐ってたまるか!! 俺はもう1度……上流貴族に戻るんだ!!」
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それから半年後……。
あれから俺は何枚も絵を描いては美術館に展示を依頼したり、美術コンテストに応募したりと活動を続けてきたが、結果は皆無。
仕事もいくつかやってみたけど、どれもこれも貴族である俺の肌に合わなかった。
毎日ロクな飯にありつけず、河原の草を煎じて食べて飢えを癒すことも多々あった。
服もほとんどなく、風呂すら満足に入れていない俺はもはや腐ったゾンビそのものだ。
癪だがグレイの野郎に助けを求めに行こうと考えたこともあったが……奴がどこにいるのかわからず断念した両親ともあれから会ってはいない。
どいつもこいつも役に立たねぇな!!
「なんで……こんなことになったんだよ……」
俺は未だにあのボロ小屋に住んでいる。
周りにあるのは使い振りされた筆と絵具……そして、何の価値もない俺の絵だけ。
貴族として毎日自由に暮らしていた頃に戻りたい……。
あれほど輝かしい暮らしをしていた俺の人生……それがなんでこんなざまになったんだ?
もう貴族としての誇りなんてない。
もう貴族として生きることに疲れた……いっそ死にたいとすら思うけど……怖くて死ねない。
これから先……一生こんなみじめな人生を送るのか?
もう誰でもいい……誰でもいいからさ……俺を助けてくれよ。
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