夏
「あつい。暑すぎる・・・・・・・」
夏らしい青いデニムが足に張り付く。おしゃれは我慢というが、真夏の暑い時期に長ズボンを履くのはやはり無謀だったようだ。デニム生地のざらざらした感覚が鬱陶しくてしかたがない。しかも早朝に土砂降りの雨が降ったことによって、どうしようもないほどの湿気が充満している。
今日は五限まである日だったので、すでに時計は午後七時だ。まだ真夜中ではない、かすかに明るい夜の中、ぽつりぽつりと帰宅する人たちや、ようやく少し涼しくなってきたと犬の散歩に出てきた人たちが見える。
太陽が出ている頃よりはましだが、それでも相変わらず暑い。やはり、温暖化か。温暖化のせいなのか。
相変わらずの帰宅ラッシュにもまれながら、やっとのことで駅に着いた時には、ほっとした。満員電車は夏が一番つらいと思う。ただでさえ暑くて仕方がないのに、どうして人が密集しているところに行かなければならないのやら。
昼間、あんなに煩わしいほど鳴いていたセミたちは、いったいどこに消えたのだろうか。気味が悪いような夜だ。どんよりとした空気の中、正体不明のかすかな虫の声が聞こえてくる。
けれど、今の私は無敵である。曲がり角で幽霊が脅かしてきても大丈夫。なぜなら、私はハーゲンダッツを買ったのだ。しかも、誘惑に負けてミニペットボトルのコーラまで買ってしまった。風呂上がりにでも飲もうかな。
お金持ちは、こういった無駄遣いをしないらしい。だから、私はいつまでたっても金欠なのだろう。まあ、そんなことは知らん。
アイスが溶ける前にと、私は足を早めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます