帰り道
麗
春
柔らかな風が私の足を通り過ぎ、白いレースのマーメイドスカートを軽やかにゆらす。低めのヒールのパンプス が、石畳の上でコツリ、コツリと鳴った。
「春だなぁ」
肌で感じる空気の温かさから、冬の終わりが伝わってくる。いつのまにか、アウターは薄手になり、クリーム色の トレンチコートが役に立つ季節となった。いや、いっそトレンチコートすら暑苦しく、より涼しげなピンクのカーディガンこそふさわしいかもしれない。
冬から春に変化していく境界線ほど、華やかな季節はないだろう、と私は思う。凍えるような冬の寒さから、一枚、また一枚と重ね着していた服を脱ぐ。それと同時に、自然に生きる草花や木々たちがまた一枚、一枚と色を付け始めていく。
外に出ると、道端の花や公園の花壇、空を彩る木々達までもが鮮やかな色合いを取り戻し、冬がいかにモノクロの世界だったのかと驚く。そして、花の持つその輝くばかりの色彩に思わず目を奪われるのである。
学校からの帰り道。すでに時刻は午後五時を回っているものの、真っ青な空の端っこがほんのりとしたピンク色に染められているだけで、まだ太陽の光を感じる。
また、風が吹いてくる。
風に乗った薄ピンク色の花びらが、視界を横切った。
ふと横を見ると、駅から家までの途中にある公園の一角が、柔らかいピンク色の桜で華やかに彩られていた。
風が吹くたびに、柔らかな花吹雪が中を舞う。
その下で、小学校中学年くらいの子供たちが騒いでいる。私はそれを微笑ましく見ながら、誇らしげに咲き誇る春の花をそっと見つめた。
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