プロローグ

初冬



雪の降る季節の寒い日の夜に決まって私は同じ夢を見る。

夏の日の少し寒い時でも、自然の環境によって引き起こされる寒さでも、恐怖に震える寒さでも見ない。


冬の雪が降る時にだけ見る夢。

その夢は良い物では無い、

私が"ドミナント・ストライク"にいた時の記憶。

呪いの様に繰り返され見る夢、私が痛手を負った仲間を治療し回復を行う。



次々に・・・次々に・・・。



治しては死んで治しては殺され、使い物にならない程にボロボロになるまで戦わされ続ける。


同族である魔獣達を殺し、拷問を見届けながら回復をしまた拷問を行う。


鉛のように重く感じる多量の血は私の手につき、いつしか足元から膝まで血の海が出来ている。


治した人も殺された人も魔獣も私に問い掛ける。


「何故?」「なんで?」「どうして?」


夢だと分かっている。早く目を覚ませ、早く目を覚ませと思いながら、長い夢を見続ける。



地獄の様な悪夢から開放された朝、私はいつも涙を流していた。



雪が、冬が、寒いのは嫌い。



私はいつしか冬にはあまり眠る事をしなくなり。

部屋に飾られていたり無造作に置かれた、色々な国で買った玩具で1人、遊びながら朝を待つようになっていた。


そんな日々も続けばいつしか私は雪が降る日が分かるようになっていた。

季節の変わり目、風は冷たく私達を通り過ぎていく。もうこの季節が来てしまった。



「あぁ・・・今日は降るね・・・」

「なんだ?お前分かるのか?」

「うん、リフレシアは雪は好き?」

「いや、寒いし別に特別思い入れも無いな」



「宿に戻ったら夜にさ、一緒にこの前立ち寄った街で買ったゲームで遊んでみない?」


「子供じゃあるまいし・・・あの木の板とガラスの小玉でどう遊ぶんだ・・・」


「せっかく2人で遊べる玩具買ったんだしさ、お願いします」

「・・・面白くなかったら燃やすからな」

「前に買ったやつは面白かったでしょ?」


「・・・いや、なんかたかだか紙の束に絵が書いた物を合わせて並べるってだけで、なんか騙された気がしてあんまりだったな」


「あんまり頭使って遊ばないからだよ」

「お前、今俺の事馬鹿にしたか?」

「なんでそうなるの!?」

「まあ良い、お前の言うそのお遊びで負けたらお前の毛剃るからな」

「ちょ・・・ちょっと!冬は寒いんだから止めてよ!!」

「冬以外なら良いのか・・・・」



寒い日の帰路は2匹だと不思議と寒さが感じずらかった。



今日は眠れます様に。



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