インタールード
遠く、潮風はいくつもの砂山から抜け、オアシスの方まで届く。いや、オアシスのあった場所に。
「水が枯れちゃってるね」
「そうだな」
トリル・サンドラの町から更に北東に進んだ位置にオアシスがそこにあった。しかし今やその場所は大きな穴の空いたゆるい蟻地獄のような傾斜で、あんなにあった水も干上がり、そこには焼き付けられたガラスが溶けた様にコーティングされた底。
リフレシアによる炎の焼け跡だと彼女は言う。彼女とサニアの掘ったその穴も掘った当時より浅くなっているらしく、砂が徐々に崩れたり風に運ばれ埋まっていっているのだろう。
「あの・・・リフレシア。すぐ枯れちゃうかもしれないんだけどこれ」
私はカバンの中から一束の花を彼女に渡すと鼻で笑いながらそれを受け取りオアシスのあった場所の丁度真ん中に花束を置きにいく。
結局あの水はどこから湧いていたのだろう・・・。”
海が近いとはいえ距離は中々ある。一体どう言う理屈で湧いた物なのか分からない・・・。
そんな事を考える暇も与えず彼女は直ぐに戻ってきては「帰るぞ」と私に告げる。
「え・・・折角ここまで来たのにいいの?」
「俺はそもそも弔いになんか来るつもり無かったからな」
「そんな悲しい事言わなくても・・・」
「悲しくなんかない最初から。それに俺直々にあいつの敵討も出来たんだ、成仏は出来ただろ」
彼女はそう言いながらそさくさと一人歩いて帰ろうとする。あれから一月程経った、私が提案しこの地へとまた戻ってきたのだけど、そんなこと言ってわざわざこんな場所まで足を運んだのだから彼女なりに少し思う所があったのかもしれない。
これ以上何か聞くの不粋だと感じ、その事についてはこれ以上聞く事はなかった。
「そういえばあの町にまだ金目の物あるんじゃないか?少し物色して持って帰るか」
「そんな事する訳無いでしょ。それにもうとっくに調査隊が入って調べ尽くされてるって」
「つまらんな」
「一応報告によれば町には特に変わった物自体はなかったけど、砂を掘ったら干からびた死体がいくつも見つかったらしい」
「堀りに行くか?」
「やめてよ冗談でもそんな事・・・」
私の事を揶揄い笑う彼女はいつも通りで本当に彼女の中ではサニアとの告別はとうに済んでいたんだと感じた。
思い返させる事をさせてしまったのでは無いのだろうかと少し不安になっていた時彼女は私の方を見てこう言った。
「そういえばあいつに別れの言葉を告げていなかった。こんな所にでも来なければ言い忘れる所だったな、短い付き合いとは言え挨拶位せんとそんな事すら出来ない愚か者と思われる所だった」
「・・・良かったね。ちゃんと言えた?」
「ああ、嘸かし喜んだだろうな。俺がわざわざこんな場所にやってきてやっているんだ、光栄にも程があるだろう?」
「そうかもね」
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