第8話 調子乗り“先生は弟子”と言っちゃった

洪堂成老師は寝っ転がってからの蹴りやパンチを出す地功拳と言うカンフーも得意だったそうです。

馬先生に老師の地功拳の白黒動画を見せてもらいました。

かっこいい!これができるようになるんだったら地味な稽古も張ろうと思いました。

馬先生の師匠、洪先生に会いたかったなあ。

馬先生は競争になると小学生みたいに興奮します。

「位置について…ヨーイ…スタート」

と馬先生の合図がかかりました。

私たち三人は一斉にお腹をマットにつけて肘だけで動く競争を始めました。

ちょっと肘とお腹が擦れて痛いけど競争は燃えます。

三人共必死です。

お顔が全員真剣です。

「ゴール」

と私は大きな声で言いました。

堂々の一位です。

やったやったあぁ、と飛び跳ねちゃいます。

体が小さい分有利です。

さあ二位は誰かな?と見てるとアナスタシアちゃんが馬先生をぐーんと引き離していきます。

さあ逆転はあるか!と見ていましたがアナスタシアちゃんはどんどんスピードをあげ二位で着きました。

ビリは馬先生です。

馬先生は自分が一番になると言う自信があったみたいです。

馬先生の悔しがり方がおかしくて涙が出そう。

足でウレタンマットをドンドンと左右と踏みしめて「もうやだあぁ」と言ってます。

「やったやった!馬先生に勝った!」

と私達二人は大喜びです。

大人に勝てるなんて私達すごい。

馬先生は今度は膝を落として拳でウレタンマットを叩いてます。

よっぽど悔しかったんでしょう。

「さすがは私の弟子二人ね」

と馬先生はハアハア息を切らしてます。

私はちょっと意地悪に

「師匠は弟子に負けちゃいけないんしゃないの?」と言い、続けて

「馬先生はこれからは弟子よ」

と余計な一言を言っちゃった。

するとアナスタシアちゃんは「シー」とお口に指を立ててから、また「ノンノン」と指を振りました。

私ったらすぐ思ったことを言っちゃうからだめなのよね。

アナスタシアちゃんて大人だなあ〜と思う瞬間です。

馬先生はずいぶんいつもの落ち着きを取り戻してきました。

「カンフーに勝ちも負けもないのよ」

とまだ馬先生は言い訳します。

なんだか可愛らしい馬先生。

続けて

「勝たなくてもいいの!負けなきゃいいの!」

と言いました。

「馬先生負けたよね」と私は冷ややかな視線を馬先生に向けましたがさっきの余計な一言を反省して黙っていました。

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