第9話 エレナ、カンフーの先輩になる

馬先生はやっと今日の稽古の解説に入ります。

「これはね匍匐前進と言ってね足を怪我しても死んたふりして相手にわからないよう少しづつ移動しながら帰って来られるのよ」

と馬先生は言いました。

そうか足を、やられてその場にいたらとどめ刺されちゃうもんね、死んだふり、死んたふりだ。

「えーちゃんとしたカンフーじゃん」と私は思いました。

なんだか痛いなと肘を見たら真っ赤でした。

この練習が何かの役に立ったらいいなあと思いながら、私とアナスタシアちゃんは先生からパンをもらって帰りました。

今日はサンドイッチでした次は何かなあ?


今日はさすがにカンフーらしい稽古でした。

ずっと型の稽古です。

私はこの螳螂手と言う型が一番好きです。

なぜかというと一番最初に習った型だからです。

馬先生は基本の型に始まり基本の型に戻るって言います。

本当の必殺技はどの流派でも最初に習う型に隠されているんだって。

カンフーってすごいなあ。

今日は新入門生が、入ってくるから二人も優しく教えてあげてねと馬先生は言います。

「ようし、エレナ先輩についてきなさい」と私はもう頭の中で先輩になってます。

最初っから馬先生とマンツーマンじゃ新入門生も緊張しちゃうもんね。

私は最初の日、馬先生とマンツーマンだったからとても緊張しました。

何回やっても、まだできてないと馬先生に言われると、へこみます。

でも上手に出来てるところがあると言われると嬉しいです。

馬先生はお世辞は言いません。

良いところは良い、悪いところは悪いって、はっきりしています。

そんなはっきりしたところが大好きです。

馬先生の「イッ、アル、サン、スー」の号令に合わせて二人とも一生懸命稽古します。

今日はいつもにはないファイトで頑張ります。

新しく入ってくるお友達にかっこいいと思われたいです。

こんなに稽古に集中できたのは初めてじゃないかしら?

「あの子みたいになりたい」って思われたいです。

お友達はちっちゃな女の子です。

とても可愛らしいです。

可愛いちゃんはすでにカンフー着を来てきました。

衣装から入ると長続きするよ。

まずは着るものを揃えるって大事だと思います。

今日から私達は「先輩」です。

私でも先輩になれると思うと続けてきて良かったと思います。

ずっーと馬先生に叱られてきた私なのに。

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