第6話 顎蹴られアナスタシアちゃん泣いちゃった

「アナスタシアちゃん、エレナちゃんの左足を持ち上げて」

と馬先生が言います。

今日も馬先生のカンフー道場はへんてこな稽古をやります。

型の中の技を切り取って”何をやっているのか“を二人組みで稽古します。

アナスタシアちゃんは自分のお膝を曲げて太ももの上に私の足の裏をピッタリとつけました。

力いっぱいアナスタシアちゃんが私の足の甲を押さえています。

「そうそう、そこで踏ん張っててね」

と馬先生はアナスタシアちゃんに言いました。

馬先生は今日の技は教え方に気合か入っています。

「エレナちゃん、今、左足がアナスタシアちゃんの太ももに乗ってるよね」

と聞かれ

「乗ってるよ」

と答えると

「左足で踏ん張って階段登るように右足浮かせて、アナスタシアちゃんの顎を右膝でそっと蹴ってみて」

と無茶な事を馬先生が言います。

当たったら痛いと思うと勢いがつきません。

そろりそろりとやると何回やってもアナスタシアちゃんの太ももの上に乗せた足は滑って落っこっちゃいます。

まただめかぁ…と私はガッカリ。

「そうねえ、ゆっくりやるとだめねえ」

と馬先生は悩んています。

どうしようか…と馬先生は腕を組んで考えています。

「そうか!それじゃこうしよう」

と馬先生は手をたたきました。

「じゃ私がエレナちゃんの脇に手を入れて軽く持ち上げるから素早くやってみて」

と言われて私は猛スピードでやって見ました。

せ〜ので馬先生の力と私の力が合体しました。

「ガッキン」と音がしてすごい勢いでにアナスタシアちゃんの顎に私の膝が当たっちゃいました。

当然アナスタシアちゃんは泣き出します。

「ごめんねアナスタシアちゃん」

と馬先生は頭を撫でてよしよししました。

アナスタシアちゃんはヒックヒック言ってます。

大粒の涙がこぼれました。

私も駆け寄って

「ごめんね…ごめんね」

と言いました。

アナスタシアちゃんはやっと泣き止みました。

道場で怪我をさせては行けない、稽古の最後まで怪我のないようにと馬先生はいつも稽古の前に言います。

痛かったけど武術だから痛いことはあるよねとアナスタシアちゃんは大人な発言をしました。

さっき泣いてた子とは思えません。

アナスタシアちゃんは泣いちゃいましたが怪我はしませんでした。

良かったです。

無茶ぶりするけど怪我しないのが馬先生道場のいいところです。

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