第4話 馬先生の扇子の型

それから「ハッ」と気合を入れたかと思うと、次の瞬間、馬先生は閉じてた扇子を横に広げながら私の頭の上の指人形だけを落としました。

一瞬の出来事でした。

私は

「馬先生、カッコいい」

と飛び上がりました。

思わず拍手しちゃいました。

つられてアナスタシアちゃんも拍手しました。

クールな一年生、アナスタシアちゃんが興奮しています。

照れくさそうにしている馬先生です。

私にもいつかできる日が来るかもしれないって気がしてきました。

馬先生は「私にもできる」っていつも思わせてくれます。

「カンフーはね、こうやって力がない人間でも大きな人を倒せるのよ。扇子で目を狙えば大きな人は戦いたくなくなるでしょ?」

と馬先生は言いました。

目は痛いよね…私はやられたらヤダなぁと思いました。

相手が武器持ってなかったらどうするの?と聞くと「持ってなくても武器はOKよ」

と馬先生は言いました。

卑怯な気がすると思ったので続けて聞いてみました。

「持ってない人に武器を使うのはずるくない?」

と私が言うと

「大きな人がエレナちゃんを襲ってきたらそれだけで命が危険でしょ?だからズルくないのよ」

と馬先生は言いました。

「命が危険かぁ…そうだよね」と私はそのおとりだと思いました。

大きな人は子供を襲ったらだめだよね。

弱いものいじめは嫌いです。

馬先生のすごい技を体験して、早く扇子の型がやりたいって思いました。

その日、馬先生は綺麗な扇子の型を見せてくれました。

武器は難しくて危ないので初心者は触れません。

習ってない武器は触っちゃだめ…と道場には書いてあります。

基本五套と言う武器を使わない五つの型を稽古し終わったら武器を習います。

足腰がちゃんと鍛えられてないと武器に振り回されるんだって。

扇子はむづかしいのでもうちょっと先ね…と馬先生に言われています。

扇子を放り投げてキャッチする所がかっこいいんです。

でも頑張ればちょっとでも早く習えるかも。

馬先生の頭に指人形乗せて扇子で落としたい…て思います。

考えてたらワクワクしてきちゃった。

でも今だったら扇子で頭叩いちゃうだろうな。

「ごめんなさい馬先生」って言ってる私が見える。

馬先生はこういう時は叱らないんだよね。

怪我させた人に謝らなかったり、武術だから怪我させても仕方がないって言うと叱られます。

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