第8話 帰宅

「おせぇ!何してた!」

「話をしてた。」

「すぐ帰っぞ。」

「うん。」

「やけに素直だなお前。気持ち悪い。」

「……もうこのままにして帰ろうか、テイト君。」

「ごめんごめんごめんごめん!!」



暴れる大和の拘束を簡単に解いてく雨子。先程は俺が入っていったせいで、変な雰囲気にしてしまった。


「……ごめん」

「え?何が?」

「どうしてテイト君が謝るの。」


「…………蕪菁さん達が怒ってたの、俺のせいだよね?」

「あのピンクが怒ったのか?」


拘束が無くなった大和が伸びをする。





「我が心の臟よ…、この手に穿て――。」




雨子が小さな声でそう言うと、大和の体を包み込み、全ての怪我が消えた。


「サンキュー雨子。」

「……他人の言うことなんて気にしないで。遅かれ早かれ、私はテイト君と心契りをするつもりだったから。」


「え、お前ら契ったの?」




目を開いて驚く大和。そういえば、大和も心契りについて色々と文句を言っていた。また、大和の機嫌が悪くなってしまう……



「……______雨子から契ったんだろ?もう帰るぞ。他人の家は、居心地悪すぎ。」



欠伸をしながら、ドアを開けて階段を上っていく。


俺も了承して契った訳だけど、俺のせいで関係が悪くなるのは嫌だな。




「テイト君、思い詰めないで。私にまでその感情が来る。」



「え!?」



「もう私達は一心同体なんだから……感情も少なからず私にも共有される。私の一方的な契りだから、気にしないで。」



大和の後をついて行く雨子。






「うん_____」


2人の後を追って階段を駆け上がった。






「テイト君、さっきは手荒なことしてごめんね。豆矜の事は気にしないで欲しい。急に首に当てられてびっくりしたよね?豆矜は雨子の事が好きなんだ。だから……許してあげて欲しいんだ。」




靴を履く2人に追いついた俺は、陽君に話しかけられる。




「俺まだ、よく分かってなくて……これからちゃんと勉強するから……」


心器とか心契りとか、分からない事ばかりだから、事の重要性が分からない。



「ううん、テイト君は何も悪くないよ。これから、レベリオンと仲良くして欲しいんだ。ほら……雨子もあんな性格だし、大和君も人と馴れ合う気ないし……律さんと誉さん達なら話が通じるけど……ね。」



シャム猫の女の子が俺に駆け寄ってきた。



「いつでもレベリオンに遊びに来てね、同年代の私達なら気が合うと思うし!!雨子は強いから心契りして損ないと思う!」



陽君に抱きつきながら、ニコニコと話してくれた。


「僕の事は陽って呼んで、これからよろしくテイト君。」


出された手のひらに、自身の手を伸ばしてギュッと握る。



「俺の事も、テイトって呼んで!」

「ありがとう、テイト。」




「おーい、テイトー!もう行くぞ。」

「大和、もっと前座って。」

「文句ゆうな!」

「はっ倒すよ。」

「あー、怖い女___いててててっ!!!」



ドアの外では、心車に跨り、耳を引っ張られ痛そうな顔をする大和が目に入る。


「よろしく、陽!」


「うん、気をつけて帰ってね。」

「今度はゆっくりお茶でもしようねー!」




2人に見送られ、大和と雨子の真ん中に座る。




「仲良くなれた?」

「うん、いい人たちばっかりだった。」

「そんな簡単に人を信用すんなよ!」

「大和は疑いすぎ。」

「はいはい、すみませんでしたー、よし、行くぞ!」



ブォォォォオオオオオンンンン!!!



「わっ、」

「うるさっ」

「びっくりした……」



大和が心車のエンジンを入れたのか、大きな音が鳴る。



「うるさくしなくても運転できるでしょ阿呆。」

「降ろすぞ!」

「…………もう、ヘルメット創ってやんない。」

「ごめんなさい。」



2人の会話を聞いて、少しだけモヤがかかっていたような気持ちが晴れてきた。



色々なことがありすぎて、疲れたのか目が重い。



「俺、眠くなってきた。」

「私にもたれていいよ。」

「じゃあ音無くすわ。」






2人の気遣いに感謝しながら、寝た。

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