第3話 NPCと戦ってみた
ゴブリンナイトの剣は今使ってるやつより耐久値も攻撃力も高かった。さすがエリアボスのドロップなだけはあるな。装備を付け替えて次の街へレッツゴー。
「んん、あれはトレント?」
トレントと聞けば皆分かるだろうが、木のモンスター。前世では地面から根を生やして突然攻撃したり、長い枝で薙ぎ払ったりしてくる。そして何より木に擬態しているため、気付かず近くを通って背後からやられる事件が多発したのだ。
しかしこれはゲームの世界。相手を視認すればモンスターの名前と体力バーが表示される。これであれば引っかからない。と思っていたはずなんだけどなぁ。
「【気配察知】にモンスターが反応してから、名前が表示されるのか。【気配察知】持ってないと地獄だな、ここ」
【気配察知】は職業【盗賊】を選ぶと強化される。他の職業でも扱うことは出来るが、現在Lv.3の俺は自分を中心に半径3m。前世だと普通のトレントは大体10mくらいから奇襲してきたこともある。初心者エリアでそんなことはないと思うが、3mだと不安が残る。
「なんとなーくだけど、まだチュートリアルみたいな感じするんだよな。少しづつ強くなってるとことか、最初は人型で戦闘を慣らして、次は異形型の戦闘を学ぶ。ゲームをやっているだけなのに、知らず知らずのうちに戦闘を学んでいると。これ教育に採り入れたらすごい進歩になりそう。知ったこっちゃないけど」
とりあえずトレントの近くまで来たけど、動く様子はない。これ前世のトレントと行動パターン一緒説出てきた?
「さっさと正体見せろ!」
【スラッシュ】でトレンドを斬りつける。
「フィイイイイ」
気持ちの悪い声と共に枝が連続で襲いかかる。別方向からの多段攻撃って一気にレベル上がってないか?俺の【気配察知】の範囲にトレントいないから、予測になるけどトレント同士離れてチェインしないようにしてるのかな。
「オークとかゴブリンナイトとか強かったけどパーティ戦って程ではなかった。だけどこれはちゃんと役割決めた方がいいかもな」
枝を槍のように突いたり、薙ぎ払ったりそれが1人の意思で行われているのだ。合わせる溜めを作る必要も無いのでタイムラグなしで襲いかかる。まぁ、それでも遅い。だけども質量が質量なので攻撃は重い。
「オークの完全上位互換みたいだよなぁ。剣で斬った感じ硬いし、攻撃重いし、そこそこ速い。動けないデメリットがあっても普通に強い。でもトレントってことは火に弱いかもな。あとスキルで【斧術】とかあったしその攻撃も効きそう」
これは魔法の取得を考えるべきなのだろうか。現在俺の物理攻撃は称号効果も含めて30程となっている。それでも何十回もソードスキルを使って斬るとなると時間がかかって仕方ない。
「この感じボスはトレントの上位種かもねぇ。これ火魔法取るべきか?」
幸いにも自己回復の手段がないから斬り続けてれば倒せる。
《トレントの枝を獲得しました》
木ねぇ。杖とかに使えるのかな。いずれは挑戦してみたいけどね。俺勇者時代剣と槍と刀しか使ってないから、他の武器は使えんのよね。しかも槍と刀は軽くしか使ってない。槍は兵士時代に使って、刀は勇者として旅してた時東の諸島で使われてるの見てかっこいいと思って使ってみただけだ。
「てかトレントの数少ないな。結構歩いたけど2体しか見かけてないぞ。俺の予想割とあってた感じ?ていうかいつまで経っても森抜けないな」
【レベガ】に行く時は10分くらい歩いてたら森をぬけたはず。でも今30分くらい歩いてるぞ。
「ん?あれは街?」
そして見えてきた森の中の街自然と共生しているように見える。エルフの街だったりするのかな?
《プレイヤーが第3の街【ノータル】に到達しました》
《【ノータル】に到達したプレイヤーはNPCに弟子入りすることが可能です。詳しくはヘルプをご覧下さい》
弟子入り?なんか面白そうだな。技とか教えてくれるのかな。【ノータル】の街並みは正しく自然と共生した街。街路樹などがあるのは勿論、木の上に家があったりする。
「弟子入りかぁ。どうせならやってみたいな。称号とか手に入りそうだし。どうせ弟子入りするなら1番強い人にしたいなー」
【レベガ】でもあったが街の真ん中には領主の屋敷があり、そこには騎士が常駐している。そこで弟子入り狙おうかな。
街の中央には世界樹をくり抜いたような形をしていた。要はファンタジー感溢れる場所なわけだ。
「ここから先は領主様の館となります。なにか御用ですか?」
屋敷に入ろうとすると前に立っている衛兵に止められる。これは【レベガ】でも同じ
「騎士様に弟子入りしたくてね」
「そうでしたか。では中庭の方にご案内致しますので、少々お待ちください」
屋敷の中に入るのは無理かぁ。敷地には入れても、中には入れないと。中庭もまるで戦うためかのように円形の形をしたフィールドがあった。
「お待たせしました。私に弟子入りしたいとの事でしたが」
「ええ、騎士様に指導して頂きたくて」
「そうですか。では本当にその実力があるか試させて頂きます」
《ルードヒヒと戦って認められましょう。ルードヒヒと戦いますか?》
YES、YES、システムもノリ悪いな。オート設定出来ないもんかね。
「では先手は譲ろう」
「あざっす!」
この騎士がどれくらい強いは分からないが、少なくとも俺よりはレベルも高くスキルも豊富だろう。最初からガンガン攻めるに限る。
「ほう!これは中々少し早いですが、こちらからも攻めましょうか」
俺の剣戟を受け止め、時に流しながらこちらに反撃を加える。やっぱり力も速さもこれまで戦ったキャラ以上だ。というかなんというか明らかに強すぎる。実はもっと後で戦う予定だったりするのかね。
「素晴らしい。最近の若者はソードスキルに頼りがちですが、それなしでも私と対等以上に渡り合うなんて」
「そりゃどーも。こっちは捌くので精一杯だけどな」
しかもこいつ少しづつ早くなってる。俺の実力を試すって本当のことかよ。ソードスキル使っても跳ね返されそうだし。
「技術は申し分ない。自分より格上の相手との戦いも手慣れている。だが致命的に技の引き出し、ステータスが足りていないな」
「そりゃそうだろ。まだLv.7やぞ」
「なぬ、そんな低いのにここまで渡り合うか。素晴らしい!君になら私の技を授けられるだろう」
《ルードヒヒに認められました》
《ルードヒヒに弟子入りしました》
「ふむ、では早速だ。私の技のひとつを伝授しよう。私のことは師匠と呼ぶように」
「分かりました師匠。私の名前はヤタです」
「ヤタか、いい名前だ。では早速稽古を始めよう。ヤタは異邦人だな?」
「はい」
「であればこの周囲のトレントとも戦ったと思う。ヤタは剣を使うのだろうが、剣だと奴らと戦うのは辛かろう」
「はい、攻撃を避けるのは簡単なのですが、何十回も攻撃しないと倒せません」
「うむ、奴らは剣などの物理攻撃に強い。だが火属性の攻撃には滅法弱いのだ。今回教える技は【
おお、これで火属性の属性付与をすればあのトレントも楽に倒せるというわけか。めっちゃ助かるな。
「【属性付与】の利点は魔法を使わずとも属性攻撃ができる点、魔法が苦手でも属性攻撃は剣の技術やスキルの熟練度でカバーできることだ」
プレイヤーの言い方に直すと、魔法に関連したステータスに関わらず、【剣術】や【属性付与】のスキルレベルに依存するってことか?
「習うより慣れろだ。まずは俺にその技を使ってみろ」
《スキル【属性付与】を取得しました》
《【
《【火属性付与】でルードヒヒを攻撃してみましょう》
これは、何度も通いつめて技を何個も教えてもらうタイプか。【魔法付与】してる間は魔力の消費はないみたいだな。その代わり使った時間分だけクールタイムがあり、一度に使える最大時間もある。ルードヒヒと戦いながら教わったことだ。
「うむ、ヤタは筋がいい。順調に行けば直ぐに次の技を教えることになるだろう」
ん?その言い方をするってことは、ある程度レベルを上げないと次の技は教えてくれないのかな?まぁ、とりあえず進めるところまではソロで進めたいし。仕事とかしてる間にいずれ抜かれるだろ。
「ご指導ありがとうございました」
「うむ、【火魔法付与】を扱えるようになったらまた来るといい。完璧に扱えるようになる頃には次の技を教えられるレベルになるだろうから」
「はい、また来ます。ありがとうございました師匠」
そう言って一礼。師弟関係は教える側も教わる側も礼儀が大事。普段はちゃらんぽらんな俺だけどそういうところはちゃんとしているのだ。
「【ポイント】使わずにスキル覚えられることもあるんだなぁ。他にもそういうのありそうだな。いずれはそういうのも探してみるのも楽しそうだ。今はちゃっちゃと先進みますか」
【ノータル】を出て、次の街に向かう。出てくる敵もトレントのみ······かと思わせて木の上から投石をしてくるフォレストモンキーがいる。投石は厄介だが、防御力がとても低いので近づいてひっかき攻撃する時に攻撃すれば楽に倒せる。フォレストモンキーでレベル上げするのも悪くないかもな。
「ちょっとしばらくレベル上げしようかな。トレントとか【攻撃強化】のレベルが上がるまでやっておくか」
《種族【人間Lv.2】になりました》
《職業【剣士見習いLv.10】になりました》
《職業レベルが最大値になりました》
《職業のレベルアップができます。神殿で行ってください》
《スキル【剣術Lv.10】になりました》
《【剣術】の派生スキルが取得可能になりました》
《スキル【気配察知Lv.5】になりました》
《スキル【剣戟強化Lv.3】になりました》
《スキル【攻撃強化Lv.2】になりました》
名前:ヤタ
種族:人間Lv.2
職業:剣士見習いLv.10
《ステータス》
体力:25/25
魔力:25/25
物理攻撃:26
魔法攻撃:11
物理防御:11
魔法防御:11
敏捷:22
器用:11
ポイント:17
《スキル》
【剣術Lv.10】【気配察知Lv.5】【攻撃強化Lv.2】【剣戟強化Lv.3】【属性付与Lv.1】
《称号》
【エリア解放の先駆者】【ソロスレイヤー】【剣狂】
ようやく種族レベルが上がった······1レベル上がるだけで全ステータス+1は破格すぎる性能。上がりにくいのも納得。それで転職?は神殿じゃないと無理なのか。新しく取得できるスキルを見ると【上級剣術】【大剣術】【短剣術】【長剣術】など割と予想していたものばかり。刀のスキルとかあると思ったが、まだ先なだけか?とりあえず【上級剣術】と【長剣術】を3ずつ使って取得。
分かりきっていたことだけど、同じスキルでも上がりやすいスキルとか上がりにくいスキルがあるな。【剣戟強化】も【攻撃強化】もどっちも攻撃した時に経験値が溜まるものだと思う。それにも関わらずレベルに差があるのは、【攻撃強化】の方が汎用性が高く、どの武器であっても使えるからだと思う。
「まぁ、さっさと次の街行きましょうか」
余ったポイントは物理攻撃と敏捷に振っておく
名前:ヤタ
種族:人間Lv.2
職業:剣士見習いLv.10
《ステータス》
体力:25/25
魔力:25/25
物理攻撃:32
魔法攻撃:11
物理防御:11
魔法防御:11
敏捷:27
器用:11
ポイント:0
《スキル》
【剣術Lv.10】【気配察知Lv.5】【攻撃強化Lv.2】【剣戟強化Lv.3】【属性付与Lv.1】【長剣術Lv.1】
【上級剣術Lv.1】
《称号》
【エリア解放の先駆者】【ソロスレイヤー】【剣狂】
しばらくトレントなどをしばきつつ進んでいると、いつも通りエリアボスのアナウンス。
「こっからでも見えるな。あの大木絶対トレントの上位種だろ。名前はエルダートレントとか?」
YESを押して中に踏み込む。すると目の前の大木が突然揺れ出し、それに共鳴するように地面が揺れる。
「名前は予想通りエルダートレントか。それにしてもでけぇ、これ5mくらいあるだろ。これまで戦っていたのが小さかったから、めっちゃでかく感じるわ」
「フィイイイァアアアア」
「うわ、なんか降ってきた」
エルダートレントが頭を揺らすと、上から巨大な果実が降ってくる。どうみても回復なわけがないので回避。いきなり全体攻撃か。
「うーん、なんとも言えんな」
現在【火属性付与】でぼこぼこ斬ってるところ。攻撃力のおかげもあってかなり減るな。全ての攻撃の中心がエルダートレントなので、攻撃範囲などは一定でこれまでの敵と比べて避けやすい。枝のなぎ払いや果物攻撃、そして地面から根を生やして串刺しにする。
串刺し攻撃は事前行動が見抜けないと初見だと厳しいかもしれない。事前に叫ぶ動作がありそのあと、大きく地面が揺れる。ターゲットは俺1人なので狙いが定まった後に良ければ避けられる。複数で戦っていると誰がターゲットが分からず混乱しそうだな。
「そして安定のバーサーカーモードね。攻撃範囲が広くなってるな。そして攻撃の感覚が狭くなってる。それに果物攻撃を多用してる。パーティー戦だとヒーラーがしっかりしないと厳しいな」
その後も【火属性付与】で削っていき、無事に倒し切る。これ【属性付与】なかったらめっちゃ時間かかってたな。
《エリアボス【エルダートレント】が討伐されました》
《第4の街【ネルシー】が解放されました》
《これらの情報はワールドアナウンスとして流れます。名前は公開しますか?》
NONO、NO!
《【エルダートレントの枝】を獲得しました》
《【エルダートレントの幹】を獲得しました》
《【エルダートレントの杖】を獲得しました》
《初討伐報酬【2ポイント】獲得しました》
「今回はレベルアップも称号もなしか。まぁ、次の街で転職できるから、そっちで獲得って感じかな。今の所第2の街で市場、第3の街で弟子入りができるようになってるし、第4の街で何かしら開放される可能性が高いな」
名前:ヤタ
種族:人間Lv.2
職業:剣士見習いLv.10
《ステータス》
体力:25/25
魔力:25/25
物理攻撃:32
魔法攻撃:11
物理防御:11
魔法防御:11
敏捷:27
器用:11
ポイント:2
《スキル》
【剣術Lv.10】【気配察知Lv.5】【攻撃強化Lv.2】【剣戟強化Lv.3】【属性付与Lv.1】【長剣術Lv.1】
【上級剣術Lv.1】
《称号》
【エリア解放の先駆者】【ソロスレイヤー】【剣狂】
ステータスは大きく変化なし、次の街までレッツゴー。
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気分で投稿するって言ってたのに、以外の毎日投稿出来てるのすごいな。
まぁ、これから色々やることあるんで、週1投稿とかになりそうです。
ちなみに1話の目安5000〜1万とだいぶアバウトにやってます。
頭の中で設定が完結して、作品内で書いてないのに勝手に適応されてるところとかあったら教えて欲しいです。
今後ともよろしくお願いします
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