第4話
「実夕、あのさ」
私がそう話しかけたとき、悪い予想が当たってしまった。
「高見」と高圧的な声で実夕が呼ばれたのだ。たった今し方教室にやってきた三人の女子グループだった。
全員知らない顔だ。
「あ……ごめんね、清佳ちゃん。行くね」
私の返事も待たずに、実夕は慌てるようにして彼女達の元へ走っていった。
私が何も言わず実夕を見送っていると、三人組は私のことを睨むようにしてこっちを見ていた。
特に真ん中にいるひとりは、敵対心剥き出しという感じだ。
「ふーむ」
実夕を加えた四人が教室を出て行ってから、私は頬杖をついて思案した。
あの真ん中にいた女。ああいう女王気取りの女はクラスにひとりはいるものである。実夕は自己主張をしないし、流されるタイプだから自己顕示欲の強い女にとって格好の獲物だった。
そして、私のような一匹狼気質とはまさに水と油。とてもじゃないがあのグループには入れないだろう。
いつも塾で見せていた、実夕の屈託のない笑顔と今ここで見た笑顔を比較してみる。 問題は、実夕があいつらと好きで一緒にいるかどうかのだった。
実夕の席を一瞥する。
彼女の机には無造作に置かれたままの赤毛のアンの文庫本が、置かれたままだった。
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