いとし子 (マルス視点)514話
アクアが飲み会を開いているらしい。俺にも飲ませろよ! 俺が遅れてアクアの所に行くと、ちょうどカクのボウズと一緒になった。
「何やってんの、何の飲み会?」
なんでもアクアのお気に入りのレイシアがプロポーズをされているらしい。しかも二股プロポーズ? 何考えてんだ、今の王子は?
ヘルメスのおっさんが荒ぶるアクアを止めながら酒のつまみにしている。さ、アクアの言う通り茶番は終わりだ。このままアクアが何も起こさなければいいだけ。ここは、アクアの教会だから。
と思ったら
なんだ! 急に大きな力と光が降り注いできた!
この光は……。
「これは、もしかすると……。ルミエル・サン・シリウス様か?!」
確かにあの人の温かさを感じた。創造神、光の女神、ルミエル・サン・シリウス様。創造神、闇の神、プルトゥ・ルナ・シリウス様の愛妻。
全ての存在の産みの親。我々神々も全ての存在が創造神二柱によって作られた。
「おい、やめるんじゃ!」
「お姉様、やっちゃえ!」
「あ〜! ねーさん、やっちまった」
やっぱりアクアはただもんじゃねえ。ルミエル様の決定に付け加えやがった。
「いいでしょ! 付け足しただけなんだから! 内容は変えてないから」
あっはっはっはっ。やっぱり最高だよアクア。やらかしにかけちゃ右に出るもんいねーや。
王家のやつらがあたふたと騒いでいる。なぜだ?
「それにしても。なんでこんなに騒いでいるんだ? 魔法なんか、しょっちゅう俺が起こしているのに」
俺だけじゃねえ。おっさんだって特許の時魔法見せているだろうが。
「お主の魔法を授ける儀式は、あやつら慣れすぎて神の奇跡だと思ってない様だな」
「なんだよ! 俺頑張っているのによぉ」
日常の慣れかよ! あ~やだやだ。やってられねえ。
俺はおっさんとねーさんを放っておいて飲みに戻った。あ、ボアの嬢ちゃん酔ってないか? バッカスと嬢ちゃんって言っているけど、ボアって見た目は嬢ちゃんだが俺より年上だけどな。
ちびちびとだけどずっと飲んでいるから。あれ? ボアって酔うとガラが悪くなった後笑い上戸になるんだっけ。待て待て待てまて! ジュース飲め! 一回酔い冷まそうか。
ボアをジュースと一緒にボウズに押し付け、俺はバッカスに話しかけた。
「あいつ大丈夫か?」
「ねーさんかい? 最近はあんな感じだよ。ま、飲みな」
ドボドボと俺のグラスに酒を注ぐ。
「レイシア絡むと暴走始まるんだよ。まあそんなねーさんもカワイイんだけどな」
「ほう」
「しっかし最近ボアの嬢ちゃんがまとわりついて離れないから。まったく」
バッカスは飲みながらグチってくる。前からアクアに気があるからな。しょうがねえか。若いな。
アクアとヘルメスのおっさんが割り込んできた。
「な~にしみじみやっているのよ」
「な、なんでもねーよ。ほら酒」
可愛いとか聞かれたくないんだろう。話を変えてやろうか。
「いや、それにしても。なんでこんなに騒いでいるんだ? 神の祝福なんか、しょっちゅう俺が起こしているのに」
「お主の魔法を授ける儀式は、あやつら慣れすぎて神の奇跡だと思ってない様だな」
「なんだよ! 俺頑張っているのによぉ」
おっさん、あんたもなんだかんだでお人好しで特許をあたえているじゃないか。
「そんなんだから、他の神々はあやつらを見放したんじゃ。知っとるだろう」
結局、俺とおっさんだけが定期的に人と絡んでいるんだよな。アクアは温泉で間接的に。バッカスは見放すと酒の味が悪くなるとか言ってさり気なくかかわっているから気付いてもらえないけど。
「それにしてもじゃ。なぜルミエル・サン・シリウス様が祝福を? あの王子、それほどの器か?」
おっさんの言うことはわかる。
「出来は良さそうだけど、そんな風に見えないよ」
おいおい! ボウズ言いすぎだろ。王子にじゃなくルミエル様の決定だぞ。
しかし王子ではないよな。
「ではルミエル・サン・シリウス様もレイシアを気に入っているのか?」
俺が疑問を投げかけたら、ヘルメスのおっさんが何か思いついたか口をはさんだ。
「それはないだろう。レイシアはどう見てもアクアのいとし子だ。ルミエル様が気にしているのは、もう一人の婚約者の方じゃないのか?」
「「「誰だっけ」」」
やけ酒満々のアクアが慌てて名前を確認した。アリア・グレイ。誰だこいつ?
「誰か知ってる?」
「「「知らないな」」」
「ふむ。我々はしばらく離れていた人間界とかかわりを持ちすぎている。不自然なほどにだ。こんなにいとし子が存在していることなど、いまだかつてない現象だ。大きな流れが起こっているのかもしれんな」
「どういうことだよ、おっさん!」
バッカス、酔っているな。おっさんもいい具合に酒が回っているのか、ペラペラと仮説を喋りまくっているよ。
「アクアはレイシアをいとし子にした」
「それはわかるが、それだけじゃねえのか?」
俺とアクアとおっさんとで祝福かけまくったからな。
「いとし子って他にいるの?」
目を輝かせながらカクが聞いた。
「おいおい、お主にもいるだろう。お主の場合はそれで神格化したんだ」
「え?」
「ラノベの祖と言われているクロウ、お前が声をかけたおかげでヤツの人生が変わっただろう。お主のいとし子だよ」
「あ、そうか! 僕のいとし子はクロウ」
「無自覚だったのか。あれだけ現れまくったではないか。おかげでヤツは教会から命を狙われたこともあっただろう」
「あの時は大変だったよ。ヘルメス様に助けるの止められて」
「表に出すぎなんじゃ! まったく」
昔話はいいから教えてくれよ。他にいるのか?
「儂もいとし子がいる。作る気はなかったんだが成り行きでな。それもレイシアのせいではあるが」
「レイシアのせい? 誰よ。あたしのレイシア悪くないはずよ!」
「ああ。儂のいとし子はマックスという神官だ」
「「「スーハー広げている神官!」」」
「特許でレイシアが来た時、思わずレイシアに声をかけたんじゃが、それを聞いていたものでな。話してから記憶を消そうと思ったんだが、何か惹かれるものがあってな。おかげで楽しんどるよ」
結局今どうなってるんだよ。
「今、数百年に一人出るかでないかのいとし子がどうなっているかというとな」
おっさんがまとめ始めた。こんな感じだ。
クロウ (作家) /カク・ヨーム
レイシア /アクア
マックス(神官)/ヘルメス
アリア (?) /ルミエル
「なぜこんなに増えたのか。ましてやルミエル様がいとし子を。なにか大きな変化が起こるのかもしれん」
真面目に話すヘルメスをつまみにして、飲み会は盛り上がった。まあ、考え過ぎだろう。
でもよ、そんなにいるなら、もう一人増えてもいいよな。
俺は気になる人間の女の子の顔を思い浮かべた。
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