第四部まとめ
第五章 アクアの憤慨 508話
もうすぐレイシアが帰ってくるわ!
あの子夏に帰って来なかったから、せっかく急いで作った温泉まだ見ていないのよ! ひどくない?!
まあいいわ。今度こそ温泉に入って驚かせるから! 今までの単純泉とは違う炭酸泉よ。それぞれ効能がちがうんだから。
楽しみにしてなさい、レイシア!
◇
と思っていたら、レイシアではなく王子? なに? レイシアと婚約したい?
レイシアもそういうお年頃なのね。あの小さかったレイシアがねぇ。
って、何よそれ! レイシアが好きで婚約持ちかけたんじゃないの?! 好きな子は別にいる? ふっざけんじゃないわよ!
レイシアはねぇ、あたしの愛し子なのよ! 何好き勝手なことを抜かしとるんじゃ〜!
あ〜! むしゃくしゃする! あいつら呼んで愚痴でも言わないとやってられないわ!
明後日は飲み明かすわよ! バッカス、酒だ! 酒持ってこい!
◇
「っだっからさ〜、ひどくね〜、王子の野郎」
「そうじゃな。だが、儂らが出しゃばるわけにはいかんだろう。ほれ、飲め」
「おっさん、そういう理性的な話じゃないんだよ。なあ、アクアのねーさん」
「よく言ったバッカス! 褒めてやろう」
「別にいらないし」
「そうですわ。おねーさまの悲しみは私が一番分かってますのよ」
「ありがとう〜ボア」
ボアはクマデの領民と共にこっちに移り住んだ。仲良く温泉に入ったりするんだ。
「何やってんの、何の飲み会?」
マルスとカク・ヨームがやって来た。いいわ、飲みなさい! あ、子供はジュースね。つまみは好きに食べなさい。
「あたしのレイシアと二股野郎の王子が真実の愛を確認するとこ! 馬鹿馬鹿しい茶番が始まるのよ〜! 飲まずに見れるか!」
「そんなもの、すぐに却下すればいいだろう」
「だめじゃ。アクア、何もせず飲んでろ」
「あ〜! うるさいヘルメス! ここはあたしのテリトリーなのよ!」
「まあまあねえさん。おっさんの言うこともわかんなくねぇ。無視すりゃいいんだよ」
分かってるわよ! 神の奇跡なんか見せないほうがいいってのはね。でも言ってやりたんじゃん! 浮気者〜ってくらいわさ。
あっ、レイシア! そんな奴の手にキスなんてすることないから!
何このおっさんのなりきり演技! 代読? キモい! けどかわいいかも。ははははは。もう、笑うしかないわね。
さあ、茶番は終わりよ。飲むぞ〜!
って思った時、教会に光が差し込んだのよ!
何?
「アクア、おぬし何をやった?!」
「何もしていないわ! どういうこと?」
「これは、もしかすると」
マルスが、あの人の名を叫んだ。
「ルミエル・サン・シリウス様か?!」
「まさか」
「しかしじゃ。真実の愛の審議を下すのは光の女神ルミエル・サン・シリウス様の権限」
「待ってよ! あたしのテリトリー! あたしのレイシアの案件よ」
羊皮紙に文字が浮かび上がる。真実の愛じゃないけど結婚は許す? だと! 冗談じゃないわ! あんな二股野郎にあたしのレイシアを任せられるわけないじゃない!」
「おい、やめるんじゃ!」
「お姉様、やっちゃえ!」
「あ〜! ねーさん、やっちまった」
いいでしょ! 付け足しただけなんだから!
王子は純愛で一人の人を愛し続けたらいいのよ! レイシアは三年我慢してあとは好きに生きなさい! この王国の規定では、3年間子供ができなかったら、王妃でも離婚できるのだから!
手出すんじゃないよ、王子!
離婚してから好きにしたらいいわ、レイシア!
「それにしても。なんでこんなに騒いでいるんだ? 神の祝福なんか、しょっちゅう俺が起こしているのに」
マルスが不満げにブツブツ言ってるわね。いいから飲みなさい!
「お主の魔法を授ける儀式は、あやつら慣れすぎて神の奇跡だと思ってない様だな」
「なんだよ! 俺頑張っているのによぉ」
「そんなんだから、他の神々はあやつらを見放したんじゃ。知っとるだろう」
「ちっ、ここまでとは思わなかったぜ」
「それにしてもじゃ。なぜルミエル・サン・シリウス様が祝福を? あの王子、それほどの器か?」
「出来は良さそうだけど、そんな風に見えないよ」
そうでしょ、よくいったカク・ヨーム!
「ではルミエル・サン・シリウス様もレイシアを気に入っているのか?」
待ってよ! レイシアはあたしのよ!
いくら上位存在のルミエル・サン・シリウス様でも、人のもの取ったらだめよー!
出てこい! 理由聞かせろ〜!
わからないまま儀式は終わった。
もう、飲むよ! 飲まずにいられるか!
やけ酒だ〜! 付き合いなさい! あんたたち〜!
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