第7話 使命と支配-③

 ダージーンは空から降ってくる隕石と化した酒場を視認すると、肩に積んだ、ミー二から借りた改造義手を崖上に撃ち込み、手首の仕掛けを動かして内臓のワイヤーを巻き取ると、壁を垂直に走っていく。


 ダージーンは壁を登りきると、突如体中に痛みが走った。


(これが、作戦会議で言っていた命を蝕む霧。 鎧が恋しくなるな、剣が使えたら…… いいや、目の前の標的から意識を逸らすな。 この機会を逃すことは出来ない。 達成する姿を考えろ。 その後にロワロが笑う姿を考えろ)


 ダージーンは竜に向かって一直線で走りだした。剣を抜くと胸の中心に突き出すように構えた。



(よし! このままホンスーンをぶち当てる。 行ける。 ダージーンも見えたこのまま…… )


 ミー二が竜とダージーンを捉え、両者がちょうど相対するであろう場所を計算して星を動かしたその時だった。竜は口から何かを吐き出した。それは宙に浮かぶ、白い羽の塊。昨日、見た白い影。


(天使!)


 ミー二とダージーンは同時に気が付いた。そして同時に彼女の名を呼んだ。


「エーレさん!」


 承知しました。


 聞こえない筈の彼女の声が、二人の心に届いた。エーレは潜んでいた森の木の上から、長銃を脱力した形でうずくまるように構えていた。


 天使はエーレを見るが、その瞬間、天使は喉を貫かれた。天使はまだ、何もしていない。その隙をミー二とダージーンは見逃さなかった。


(いっけぇぇぇぇぇッ!)


 ミー二はホンスーンを天使にぶつけたまま、黒い竜の羽を潰すように押し当てた。竜はひるみ、四本の腕で抵抗しようとするが、一本は折れて力が入らない。


(今、ここで全てを断つ!)


 ダージーンは竜の正面から右へ回り込み、竜の首に向けて飛び掛かると、思い切りよく振り落とした。そしてそのまま上へと切り返し、押し当てて、突っ込み両断する。


(斬った、これで…… どうなる?)


「任せて!」


 ミー二はホンスーンとの魔術の糸を切って、地面に着地した。そのまま両手を合わせて、大きな泡を作り出すと、両断された竜の首に押し当てて、詠唱を始めた。


(秘術カンサリア・リッポウ。 ……奪うことを許し、裁くことを赦し、つなぎ止めるこの思いを受け入れてください)


 ミー二が作り出した大きな泡の中に小さな泡が無数にあふれ出す。その数はどんどんと増え、大きな泡の一部となっていく。


「ダージーン。 これで、もう大丈夫。 竜狩りは成功」

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