第7話 使命と支配-②

「それじゃあ、行こう。 バハお願い!」


 ミー二の声を聞いたバハは半壊している操縦室で尻尾に直接取り付けたレバーを思いっきり引いた。尻尾の中にありったけの燃料が充満し、そこに少しの炎が入る。すると、腹の底に響く轟音がホンスーンを包んだ。


「ミー二! あと六十秒」


 バハの小さな掛け声が聞こえるとミー二は詠唱を開始した。


(苦楽の遊星・始まりの撃鉄・サンサ、ローゲル、クシュセティア……)


 ミー二は履いたブーツをコツコツと蹴り、左手に右の拳を合わせた。

 昨晩、作戦会議の後すぐに検証をしたが、ミー二が魔術で星を操ることは不可能だった。魔術を星につなぐことは可能だったが、調整のために操作をするほどの力は発揮できなかった。そこで、星全体に呪術を仕込み、その呪術に魔術をつなげることにした。事前に仕込んだ呪術は発動させるために時間はかかるが、術の配分、つまり世界の力の配分を気にする必要が無いのが強みだった。そして、発動した呪術に全開の魔術をつなげることで、ミー二は星を操った。


「行くぞ! ホンスーン第四式弐連死気体編成。 発射ぁぁッ」


 バハは大きく体を動かして身振りでミー二とマスターに合図を送った。それと同時にホンスーンは一気に動いた。マスターはミー二の体を左腕で抱えて、右手でしっかりと壁に付けた取っ手を握っていた。ミー二はぎりぎりまで呪術の詠唱を続けて、魔術とのつながりよくする。轟音が少しづつ収まていのと同じようにホンスーンの速度も低下していく。


「ミー二、燃料が切れた。 これから落下するぞ」


 バハの声を聞いたミー二は呪術の詠唱を終えて、マスターの腕から抜けて外に出た。ミー二はからだから魔術の糸を出して、星と繋がっていた。酒場の外へ出ると強風に煽られて、飛ばされそうになるが、魔術の糸を調整して、島を見下ろした。


(はっきり見えてる、あの黒色。 もう少し、右下。 ……行き過ぎた、もう少し上。 よし、このまま……)


 ホンスーンは程よい速さで落下していく。何度も雲に重なり、竜の姿を見失うたびに微調整を重ねる。


(よし、今!)


「バハ! 二本目!」


「よっしゃぁぁッ。 これで決めるぞ!」


 バハはもう一つのレバーを力強く引く。レーバーはひっこ抜けるが、問題なく加速が始まった。


(あとは、この音を合図にダージーンが竜に近づく。 行ける、このままなら)

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