第7話 使命と支配-①

 早朝。ダージーンはエーレとミティアと共に竜のいる断層の付近に待機していた。竜の力とは違う、自然の霧が辺りを包み込んでいた。


「なんであたしが前線に出てんのよ。 契約と違くない? 情報処理が私の仕事でしょ?」


 ミティアは酒場から持ってきた自前の椅子に座りながら二人に向かって愚痴を吐いた。


「それではミティア嬢様、上に行かれたほうがよろしかったのでは? 落下の計算というお仕事があると思いますが」


「エーレさんそれ本気で言ってる? あたしはまだ、あんな馬鹿な作戦行われないと思ってるから。 絶対に死ぬよ、あれ」


 ミティアはエーレが作った朝食を食べながら、ずっと馬鹿という言葉を繰り返していた。


「ダージーン様は戦いの前に腹ごしらえはされないのですか? それともお気に召さないものがありまいたか?」


 ダージーンは細い目でこちらに問いかけるエーレに顔を左右に振って、説明をした。


「私はまだ、何も成していないのです。 ……私は今から初めて剣を使い、人を助けるための仕事をします。 それが達成できたら報酬としてありがたくいただきます」


 ダージーンはエーレに頭を下げるとエーレは頷き、互いに意識を切り替えた。


 眼の前の断層の上、そこに竜がいることをダージーンは頭の中で何度も想像した。天使に待機を命じられてから、ずっと洞窟の中で過ごしていると、 時折、自身のところへ食べ物を持ってきてくれる少年がいた。その少年はこの島に初めて来たときに救った妊婦の子だった。 その子が生まれ、顔を見せて貰った時、自身の行いがとても貴いものだと強く感じた。


 そんな子を見捨ててしまった。その家族が住む村を見捨ててしまった。自分には覚悟がないと言い、閉じこもっている間も世界は変化している。気負うな。目の前に助けられる命があるのなら剣を抜け。今なら意味を自分で見つけることができる。


 ダージーンは深く息を吐いた。昨日、ミー二がやっていたように。竜を斬る自分の姿を想像した。

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