第6話 作戦会議-③
ダージーンとミー二は酒場に入ると中にはマスターの他にエーレ、カウンターにはバハが座り、長机には一人の少女が本や紙を広げて、何か作業をしていた。
「ミー二、黒い竜は四本腕と言っていたわね。 つまり、手足が六本。 竜の形を逸脱しているわ。 天使由来で無く、自然発生したのだとしたら、膿が形を成した初めての事例かもね。 ……となると原型は必要ないのか」
「あの竜の正体が世界の歪みから生まれた膿ってこと? また、王様に報告することが増えたね…… 私があった天使はそこまで力を感じなかった。
ミティアと呼ばれた少女は茶色の髪を耳にかけると眼鏡をなおして、紙に絵を描き始めた。
「ミー二は竜の心臓を打ち抜くために、ちょうど首と胸の中心にブルクアントを撃ち込んだ。 でも、骨に阻まれた。 そして、出血は少なかったと。 骨は同じように作られて、内臓は違うのか? そもそも竜と同じように食事はしないのか。 辺り一帯の世界を侵食していたのは天使の力の影響の可能性…… 天使のほうが膿に対して情知識がある…… 情報が少ないわね」
「ミー二、すまないが君に質問がある。 膿というのはなんだ? 魔物とはまたちがうのか?」
ダージーンは少し話についていけなくなったので、となりのミー二に小さな声で話しかけた。
「最近、いろいろな所で断層ができることが多発しているの。 それが小規模だけど、階層世界ができた時と同じように世界が割れているかもしれないって話があるの。 その現象を世界の歪みって呼んでる。 そして、そこから黒い何かが出てくることがあって、それを膿って呼んでるんだ」
ミー二はダージーンに説明をすると、店に帰ってきてから立ったままだったので、椅子を引っ張り並べて、座った。
「ただ、世界を侵食できるなら、侵食する世界、心の世界を他の生き物と同じで持っている。 そこから、喰われたものを取り返すという話は問題なさそうね。 あとはあいつを足止めする方法。 ミー二、貴女のブルクアントは何本まで携帯できるの? 今のところ有効な攻撃はそれだけなのだけど」
「背負って、動くことを考えると二本までかな。 魔術で繋いでいないとただの鉄の塊だし、重すぎるから。 それに今使えるのはこれと、 調整してあるのが一本だけだから、戦闘で使えるのは二本までかな」
「竜を狩るだけなら、それで十分だけれど…… 貴方はどうなの、どのくらいの隙があれば竜の世界を斬ることができる?」
ミティアはダージーンの方を向いて尋ねた。ダージーンは少し迷った。まだ、世界を斬るということのイメージが出来ていなかったからだ。ダージーンはミー二に助けを求めるように質問をした。
「世界を斬る。 そのことについては了承済みだ。 ただ、どのように行うのかがまったく想像できない。 首を刎ねることと同じ。そう捉えて大丈夫か? それなら、首をできる限り地面に近づけて、私の目線の下まで持ってくることが出来れば、すぐにでも可能だ」
「首を斬るかぁ。 それで行こう。ただ、そうなると押さえつけないといけないな。私の義手で押さえつけることはできないなぁ。 何か考えがある人はいる?」
ミー二は周りの様子を伺った。するとカウンターに居座る彼が、飛び上がると堂々と作戦を言い放った。
「竜という巨体を抑えるには、それ以上の重さと大きさが必要だ。 我々は大きさの問題に対して初めから答えを持っている。 そして、私がこの二日の間、一人で! 必死に! 改造をした尻尾を使えばその両方の問題を解決することができる! ……つまり、この星、ホンスーンを竜にぶつける」
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