第5話 騎士ダージーンー③

 名前を呼ばれたダージーンの体の震えはさらに激しくなった。ただ、剣はしっかりと握り放さない。


「ロ……ウロ。 彼を…… 救える、のか?」


 ダージーンは光が戻りつつある片目でミー二に訴えかけた。


「あなたが力を貸してくれるなら、なんとかできるかもしれない。 私を信じてくれるなら、私の仲間と必ず取り戻してみせる」


 ミー二はダージーンの体を支えて訴えかけた。彼の体がとても冷たいことに驚いた。あの時の竜と同じ、生きているのかどうか、分からなくなるくらい体温を感じなかった。

 ミー二はダージーンの体に触れながら彼の世界へと魔術の糸をつなげた。



 暗い。暗い水の底。うずくまる男が一人。

 その男を背後から包む白い影。白い羽。白い光輪。


「あんたの名前を聞いておこうか。 天使」


 ミー二は意識を水に沈みながら、その白い影に問いかけた。


「私の魔術であんたに干渉できているんだ。 心の世界が必要無いなんて言っておきながらこの結果についてどう考えているんだ? うん?」


「貴様…… 貴様が姉様が言っていた、片腕の反逆者か。 なぜ、この島に来た。 どうやって、ここまで辿りついた?」


「ただの事故だよ。 運命ってやつに聞いてみればいいんじゃないか? 知り合いなんだろ? ……どっちにしろ、私はあの子を助ける。 邪魔をするなら容赦しない」


 ミー二は水底に沈んでいる男の腕を掴むと引っ張り上げて、そのまま浮上していく。


「貴様は命という物が何なのか理解していない。命を救うということを何もわかっていない。 貴様は何も救っていない。 命とは我々が管理するものだ。 世界の崩壊以降、ばらけた世界をまとめているのは誰だと思っている。」


 ミー二は白い影の言葉を無視して、浮上を続けた。





 ミー二は閉じた目を開けて、魔術の糸を切ると、大きく深呼吸をした。


「おっと、ごめん」


 ミー二はぎゅっと掴んでいたダージーンの肩から両手をそっと放すと、汗だくのダージーンに鞄からハンカチを出して差し出した。


「私の名前はミー二。 ホンスーンっていう酒場で働いてる。 店はずっと移転してるから、連絡をくれたら駆け付けるよ。 ……後、副業務で天使の支配と戦ってる」


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